第190話 あるじゃん!


空気の読めない龍こと龍神から受け取った鱗と牙は大きく、存在感もあって、オーラが見えるようだ。

どうやらエアリスの時の様なツノはそもそもデカすぎて持ってこれなかったらしい。


この空間にズルッと入るやつに収まらなかったんだって。


…っていうか、あるじゃん!

ワープホールみたいなやつ!

前に神様にねだったら訳の分からない謎の穴を召喚するだけの能力だったのに!


これだよ!

これが欲しかったのに。


龍神さぁ、これのやり方教えてよ。


「これか?

まずこの、アレ、世界をグッとするだろ?

それでな、元々自分の魔力でポイントをつけておいたところと、ムギュッとして、それで身体をズルッとするとこうなるわけだ。」


…え?

わかった?

誰か今の説明でわかったかな?


挙手して下さい。

周りマッチョでもいいから、今のを人語に治せる人、挙手!


「いや、わかる訳ねぇだろ。

俺が覚えたとしても使えないのだけは分かるけどな。

あんな魔力の塊に身体を突っ込んだら死ぬって。」


あぁ、そうね。

それはそうかも。

ちょっと龍神さん、もっかい出してみて。


「ん?分かりにくかったか?

高度な魔法だからな。


ほれ、よく見て学べよ。」


ズルッと何もないところが破けた様に穴が開く。

試しにそこにその辺に落ちてた枝を入れて見ると、一瞬で蒸発したかの様に消えた。


…は?


「だめだめ、魔力を込めんと耐えられんぞ。

ほら、やってみろ。」


枝に軽く魔力を込めるが龍神がもっとというアクションをしてくる。

どんどん注ぐ魔力を増やしていくが、今度は枝が耐えられず弾けてしまった。


「お?

脆いんだなぁ…。


ラルフよ、身体に込めてみろ。

必要量に達した辺りで止めてやるから、ドンドンやれよ。」


ラルフは自分の魔力をガンガン活性化させていくが、龍神は止めない。


周りがビリビリいって震えるほどだが、まだ足りない様だ。


「操作が雑だな。

ほれ、あとそれの8倍ほどだぞ。

頑張れ頑張れ。」


8倍…?

無理じゃない?


とりあえず全力を出してみよう。

フルパワーで魔力を纏っているが、さっきの8倍なんてとても届かない。


「んー?

それが全開に近いのか?

…まぁ、大丈夫だろ。

ほれ、入ってみろ。

ラルフのおおきさなら問題なく入れるだろ。」


えぇ…超不安だけど、まぁ、大丈夫だって言うなら入るけどさ。


跨ぐ様に足を入れると、踏み込んだ先がなにもなく、転げ落ちる様に穴に飛び込みそうになった。


…足ある?

これ、結局あの謎の穴と同じじゃない?


そう思った僕はリオンに外にいる様に命令して、床に落ちた腕輪を見守った所で意識を失った。



「だから高エネルギー体だって言ったじゃないですか。

耐えられる訳ないでしょう。」


だってぇ、龍神がぁ、大丈夫ってぇ


「あんな理不尽生物参考にしたらダメですよ。

リリーディアの時に分かったでしょ。

龍は生物とはまた違うんですから。

自分の形態が不安定な存在に変わるのに強いんですよ、多分ね。


エネルギーの塊が、偶然龍の形になってるだけなんですって。

いやー不思議。」


ねぇ。


神様と話していると、空間からズルッと龍神が出てきた。

そういえばコイツここ自由に出入り出来るんだよな。


「ダメだったか?

そうかぁ。

ま、次は出来るようになるかもしれんぞ。」


なんか生物としての仕組みが違いすぎて無理なんだって。


「ふーん。」


こいつ…!


「あ、こやつは連れてきてやったぞ。

腕輪…リオンだったか。

これだけ魔力が込められているならば、とっくに生まれていてもおかしくないのに、まだ鉱物の形態なのだな。」


あぁ、神獣の卵というか、蛹みたいなものなんだっけ。

仲良くやってるし、困っては居ないけどさ。

普通はもう生まれてるの?


「んー、どうでしょうね。

やっぱりある程度自分で決めるんでしょうから、個体差あるんじゃないですか。


ラルフが気に入って、まだいいかって思ってる可能性もありますし、単純に才能に対しての魔力が足りてないのかもしれないし、分からないですね。」


「獣はわからんな。

あと、これだ。

我の素材な。」


やっぱりすごい存在感だな…。

あれ?

土魔法で形が変わらない。

なんで?


「そんな弱々しい魔力で影響がある訳ないだろう。」


えぇ…。

じゃあ全力で…!


「全然ダメですね。

あ、牙の方は若干伸びてます?

…鱗はちょっと預かっていいですかね。

どちらにせよ地上じゃ無用の長物でしょうし、鍛冶の神様にでも見せてみますよ。」


それが良いかもね。

何人も集まったらなんとかなるのかな。

出力が足りな過ぎるんでしょ?


「そうだ。

確かに、ラルフが今込めたくらいの量が5人くらい居たら出来るかもな。」


いやぁ、やっぱとんでもないね。


これを倒す予備にされてるとか、しんじらんない。

知れば知るほど倒せる気がしなくなっていくよ。


「狂ってしまえばただの獣よ。

今ほど、偉大で、強大で、賢く、荘厳で、華美な存在ではなくなってしまうからな。


残念だろう?」


…そうね。


これまだ正気なんでしょ?

狂ったらどうなんのよ。


「だから、偉大で、強大で、賢く…」


いや、もういいって。

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