第189話 そういうとこだぞ


「龍讃も3回目か!

イカれた戦闘狂だな!

ラルフは。

ほれ、願いを言え。」


はぁ、気が抜けたよ。


どうせ龍神が狂うのを止めてって言っても無理なんでしょ。


「あぁ、叶えてやりたいが無理だ。

龍讃は読んで字の如く、龍からの賞賛、お祝いだからな。


願われた事を龍族のプライドに賭けて全力で頑張るだけだ。


分かっていただろう?

最高の嫁を望んでリリーディアが出てきたんだから。」


いや、あの…その。


「リリーは最高だろうが!

チビドラゴンが!


パクッと齧るぞこの野郎!」


落ち着いて、あんたのところの神様だからそれ。


なら、龍神の弱点を教えてよ。


「うーむ。

ないと言っていいな。


我神ぞ。」


そっすね。

性格的に完璧かと言われるともちろんノーだけど、いつ会ってもなんと言うか雰囲気が凄い。


神様慣れしてなかったり、シスコンで頭のネジ飛んでないと、周りで見ているハゲマッチョ達みたいに立ってもいられない。


…そうか。

この時点でそもそも対峙できる人が限られるから、僕が選ばれたのか。


目下の問題は、龍神の寿命が近い事。

僕の教会ゴタゴタさせない問題はそれに比べれば本当に大した事ない。


だからなるべくそっちに役立つ事を強化したいな。


もし、龍神に僕とかパーシェローが攻撃したとして、傷を付けられるの?


「その剣は中々だが…。

パーシェローを斬ったあの技なら傷くらいは付けられると思うぞ。」


えぇ…アレ現状最高の攻撃なのに、傷程度か。


「工夫をせんと当たらんだろうがな。」


そうだなぁ…。


「なら龍神様の爪とか牙とかツノとか、武器になりそうな所をありったけ貰えばいいんじゃねーすか?」


おお!

やるじゃんリンキー。

っていうか、それしか現状ないんだから龍神からも提案してよ。


「お前は幸せになりそうな気がするから、爪を剥がしてくれと言われて受け入れるのか?

丸坊主にするのか?」


いや、そう言われると困るけど、世界の命運がかかってるんじゃないの?


「それとこれとは別だ!

龍だって、神だって痛いのは嫌だ。」


えぇ…。

龍のエアリスだって、神獣のヤイシャだってそんなそぶりなくくれたのに?


「ぐ…。

なんだ。

関わりすぎだ、神や龍と。


それだと我が弱虫みたいだろう。」


パーシェロー、牙とか鱗が欲しいって龍讃で言われて断る?


「いやー、俺ぁ断らねぇな。

光栄なことだろ?

認められたってのと同じだし、なにより龍讃だ。

ゴネねぇってダセーから。」


だよねだよね。

ダセーよね。


「…分かった。

待っていろ。

…はぁ。


自分でやるのか…。」


ぶつぶつ言いながら龍神は空間に消えていった。

あそこまで不満そうだとなんか、罪悪感が湧いてくるかと言われると、そうでもない。


龍神のあんな感じでなんだかんだ結局嬉しそうに持ってくるのが、慣れると好きになってきた。


「分かるわー。

最初は子供に絡む親戚のおっさんみたいな感じだったんだけど、年一回くらい会わないと寂しくなんだよ。」


年一回ね!

ベストだね。


「なー。

お前は今年何回か会ってるんだろ?


…それはちょっとな。

ちょっとだよな。」


そうなんだよね。

嫌じゃないんだけどね、お腹いっぱいって感じ。


「あはは。

そうな。


あの人、城に来た時も、食って騒いではしゃいで帰っていくんだけど、なんか憎めないよな。


城に飾ってある親父のお気に入りとかもベロベロに酔って壊したり齧ったりしてるもん。


でもなんか、毎年ちゃんと迎えるんだよ、家族で。

多分龍神って立場じゃなくてもそんな感じだったんだと思う。

親父と仲良く見えるんだよ。


…だからさ、出来れば俺がやってあげたいんだよなぁ…。

弱いんだけどさ、なんか嫌だろ。

友達が殺し合うことになるなんて。


なんかあって恨み合うとかじゃなくて、力試しとかですらなくて、仲良いまま、龍の特性のせいで訳わかんなくなってっては、悲しいだろ。」


…兄貴だなぁ。

この人に沢山弟子のような人がいるのが分かる気がするよ。

才能に溢れて、絶対この人に任せたら大丈夫っていう強さを持って居るわけではないけど、いざとなったら、パーシェローが何とかしてくれるのが素敵だ。


僕やピリルルが大人になったら、ご飯とお酒に連れてってよ。


「あー?

そうなぁ。

楽しそうだな。


じゃあ、俺もお前もピリルルも生きねぇとな。

あと、あれだ。

理解ある嫁さんにしないとな。」


大丈夫だよ。

年一回で丁度いいし。

そのくらいなら許してくれるでしょ。


「おい。


はは。

俺も龍神みてぇな碌でもないおっさんになって、迷惑かけるから、狂ったらお前かピリルルになんとかしてもらうよ。」


「なんか我の悪口言ってなかったか?」


ずるっと空間から現れた龍神は薄っすら話を聞いていたようだ。

そんな事ないのに、尻尾を丸めてじっとこっちを見て居る。


…直接褒めたくない。

絶対に。

チラッとパーシェローを見ると同じ気持ちみたいで、無の顔をしている。


もう少し話していたかったのに、変なタイミングで戻ってきやがって。


あのさぁ、龍神さぁ…。

そういうとこよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る