第187話 龍贄とは
「えぇ?
なんだそれ。
なんでリリーディアに勝って、ピリルルに負けてんだよ。
いや、ピリルルもそりゃ龍だからつえーけど、リリーディアはその比じゃないだろ。
戦慄したぜ、ピリルルが2秒で首だけになった時はよ。
あれ、避けられるもんなの?
ゆらっとしたら身体に穴あいてんだけど。」
偶然仕組みが想像ついたのと、あの時はキルカメラ観たからなぁ。
「決まり手は何だったのよ。
アイツが負けを認める場面が想像つかないんだけど。
マジで。」
いや、とても言いにくいんだけど、ピリルルの声を偽造して、心安らかに負けを認めて貰ったのよ。
タックルはちゃんと攻略しましたよ?
けど、本来プラズマ化なんてとんでもない高熱に耐える防御力を貫く方法なんて持ち合わせていないもの。
無理無理。
「お前…見かけによらず最低だな。
リリーはな、ピリルルをそれはもう溺愛してんだ。
それを利用するなんて、もう、ああ、可哀想なリリー。」
あ、コイツもリリーディア寄りか…。
でもさ、ピリルルを首だけにして愛でてたんでしょ?
ヤバくない?
「え?
ヤバいかな。
俺だってリリーとピリルルを部屋に持ち込みたい気持ちはあるよ。
兄貴だから、ちょっとも傷つける気がしないからやってないけどよ。
ここで修行してんのだって、龍王としての力をつける為だしな。
アイツらに負担がいかないように。」
あら、意外とちゃんと兄貴じゃん。
ところで、パーシェローは強いの?
リリーディアもピリルルも強かったけど。
「うーん。
人間からみたら信じられないくらい強いのは間違いないけど、龍としてはどうかな。
戦ったことはないけれど、リリーにはギリ勝てなくて、ピリルルには勝てんじゃねーかってところだな。
ほら、リリーって天才だし、可憐だから、勝てる気がしないんだよなぁ。
ピリルルは殴り合いなら勝てると思うんだけどよ、アイツのいいところは、頭の良さだろ?
そっちの勝負なら負けるな。」
謙虚ね。
もっとオラオラ、俺様が最強だ!
みたいなタイプかと思ったのに。
「あ?
あー、長男だからよ。
親父を超える責任があんだろ?
その為にきちんと戦い方を学んで来てるから、なんとなくの強さとかを測るのが得意になったんだよ。
親父にも、まだ勝てないだろうなぁ。
野心はあんだけどさ、ほら、親父は元人間だろ?
人間ってよえーから、技術の進化がえげつねぇのよ。
だからそれを覚えて龍としての技にフィードバックしてんだけど、親父は生まれつき人にしては異常なほど強かったらしくてさ。
なかなか小手先だなんだって認めてもらえねーつーか。
ま、そのうち超えてやるさ。」
まとも過ぎてイジる気も起きない。
登場のアホさは何だったんだ…。
「主人は、その、気分が盛り上がると…著しく、アレになるのです。」
あぁ、アレに…。
「お前、ラルフ、龍贄教えろって龍神から言伝があるって事は、今第二候補の戦士なんだろ?
さっきの見た感じ、そんな強く感じねぇんだけど、搦手とはいえリリーに勝ってっからなぁ。
どうなんだ?
実際のところ、自分でどう思う?」
苦手な相手と、得意な相手がはっきりしてるかな。
まず技術で上回れるとキツい。
身体能力をカバーする材料は色々あるけど、なんだかんだで剣で受けられないと成す術ないね。
逆に、リリーディアみたいな脳筋必殺連打タイプにはそこそこ強い。
龍って戦い方を尖らせまくってるから、対龍の戦績がいいんだと思うよ。
「そっかそっか、ラルフはまだ20年も生きてないんだもんな。
修める技術にも限界あるって話か。
それを工夫でどうにかこうにか誤魔化すから、効率を突き詰めた技術体系を極めた相手だとジリ貧なわけね。
なら、俺には勝てないかもなぁ。
どっちかというと、そういうタイプだし。」
そうかもね。
まぁ、正直戦いが好きな訳ではないのよ。
便利な手段ってだけでさ。
反復練習が趣味なだけで、試合は二の次って感じ。
「それは何となく同感だわ。
ほんじゃま、龍贄のやり方だけ教えておくわ。
龍の額に剣を突き刺すと、身体から核が出てくる。
前提として、龍が納得してないといけないけどな。
んで、その核を食え。
美味いか不味いかはしらん。
たったそれだけで、お前は有象無象の戦闘力を軽く超えられる。
ま、龍に受け入れさせる時点で大分強いけどな。」
予備扱いされてるし、今のところやる気が無いから、一応聞くけど、核を食われた龍はどうなるの?
「そりゃ死ぬ。
つってもお前ら人間の想像する死とはまた違う。
龍王一家は特殊で分かんねーけど、普通の龍は生まれた溜まりでまた同じく生まれるから、普通の生物的な死はそんなに重く受け止めない。
多分俺ら龍王一家も、多分溜まりがあると思う。
城とかにあんのかな。
知らねーけど、多分ある。
でも他者に核を食われちゃったら、そいつは消滅する。
正確に言うと、食べられたんだから消化されちゃうんだろうな。
そのものとしての龍は、この世から完全に消えるって訳。
龍神様もよく選択肢にいれたよ。
言ってる意味分かるか?」
分かるよ。
龍贄を選択肢に入れるって事は、もう僕と関係のある龍を、いざとなったら殺せって言ってるのと同じだ。
ピリルルは、龍王の予備として遠ざけられた。
そしてそれをリリーディアが容認しているのを考えると、その案を出したのは、間違いなく…。
「あー。
多分リリーの発案だろうな。
流石に見過ごせねぇ。
お前に嫁ぐ気満々の年頃の娘だぞ?
…お前、世界を滅ぼすような狂い方をしてる龍に確実に勝てるようになるとして、リリーを殺せるか?」
…嫌だね。
恐らくリリーディアが受け入れているのは分かっていたけど、僕も納得はしてないよ。
「…心配すんな。
俺が、絶対倒してやるから。」
それにしても、その可能性があるって分かって、考えた中で一番贄になりそうなのって王妃様だと思ってたよ。
少ししか会ってないけど、自分をさておいて子供を犠牲にするような人には見えなかったんだけど。
「あー!
お袋は厳密には龍じゃねぇのよ。
親父の子を産む為にな。
なんて名前の生物とかはないけど、胎生の龍なんていないだろ?
だから、お袋にも苦渋だろうよ。」
あ、なるほどね。
龍王が人間から龍になったように、王妃様も龍から人に近づいたのね。
なんか、ロマンチックだね。
「そうだろ?
いまだにイチャイチャしてるからな。
謁見の時はそんな事なかったか?
よく客前でも尻尾絡ませたままだったりすんだけどなぁ。」
どうだったっけ…。
流石になかったと思うよ。
そもそもリリーディアの結婚をどうするかってのが初対面だったから、親父さんキレかけてたし。
「あっはっは。
まぁ、そうか!
俺も居たかったわ、それ。」
いや、アンタも混じってキレてるだろ、どうせ。
「違いないね。」
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