第183話 登山
雪山は過酷だったと言いたいところだけど、3000mくらいまでは観光整備されているし、そこから先のSASUKEのような道は、土魔法でスキップしたりで、思った程では無かった。
リンキーもさすがで、僕の補助なんて全く要らないほど余裕で着いてきていた。
「いや、はあ、よゆ、う、ではない。」
余裕で着いてきていた。
恐らくあの先に見えている岸壁を削って作られた建物が龍教会だろう。
カッコいい建物だね!
「え?
はぁ、はぁ、そうですね。」
なんだよー早く行きたいのにさ。
僕はリンキーを土魔法で作った足場に乗せて、それごと移動することにした。
「いや、もっとはやくやれってんすよ」
早く登ったら高山病になってたかもよ?
「なんなんそれ。
まぁ、理由があるなら、ギリ許すけど。」
さて、もう一つ問題が。
もしかしてあの上の方にちっちゃく見えるのが入り口かな?
やっぱりSASUKEじゃないか。
「うげぇ。
やっばい高さじゃん。
神子様いなかったらやばかったなぁ。」
ねぇ。
僕は突起に手をかけてジリジリと登り出した。
リッキーは土魔法で並走するように自動で上がっていく。
「え?
うそうそ!
登るの?
自分で?
コレはマズイって。
大人が楽して子供が頑張るなんてさ!
見てよあの登山道の人の目!
クソ野郎だと思われてるって!
俺も自力で登るよ。
えぇ!
うそでしょ?
無視?」
ぐあーキツい!
指とかちぎれそう!
「辞めて!
俺もやるって!
酷い!
罪悪感が酷いよ!」
僕は必死で登っていく。
リンキーの声を力にして、少しでも上へと。
「なんで意地悪すんのよ!
俺なんか、悪いことした?」
したよ。
勝手に人のこと盛って本にしやがって。
片手で突起にぶら下がり一瞬腕を下げる。
ちょっとだけ疲れを回復させるテクニックだ。
あと2割くらいだ、頑張れ!
あと少しというところだったが、腕に限界が来て落下してしまった。
幸い咄嗟の風魔法で打ち付けられる事はなかったが、肝を冷やした。
「きゃー!
こっわい!
見てる方が怖い!
え?
なんで身体強化切ってるの?
おかしいよ、ヤバみがすぎるって!」
身体に治療を施し、乳酸を分解させてまた登って行く。
一度行った道のりからか、今度は楽に感じるぜ!
「うわぁ、笑ってるよ。」
はは!
2度目で登りきり、入り口のある段に腰掛けながら達成感に満ち溢れた僕は、土魔法を駆使してリッキーを一番下に下ろした。
「なんで?」
なんでって、あんなにやりたがってたじゃない。
かわりばんこ。
「違うって!
うそーん。
…いや、やるよ!
やるけどさぁ…。」
流石は能力の高い旅するエリート編纂員。
スルスルと登っていき、途中僕のヨダレを垂らすフリ攻撃も、逆に口を開けて受け入れ体勢を作るというカウンターで攻撃する気を無くさせ、無事一回で上まで辿り着いた。
凄いねリッキー。
これ、飲んでいいよ。
「がはー、がはー。
やるときは、はぁ、やるって。」
うん。
カッコよかったよ。
じゃあ下に戻って、わかりづらいところにあった入り口からお訪ねしましょうか。
「は?
嘘でしょ?
うわ、マジだ。
これ絵じゃん…。」
ね、上がるまで気が付かなかったし、上から見たらわかりやすいけど、下から見たらあんな岩陰に門があるなんて分からないよね。
「はあー。
こーれも、試練ってやつなんすかねぇ。
…え?
じゃあラルフが上についた時点で気がついたってこと?
登り損じゃん。」
そうだよ。
でも思い返してよ。
僕は登って来いなんて言ってないし、そんなに登りたいならかわりばんこって言っただけだよ。
ほら、回復もしてあげるから。
「…まぁ、いいよ。
気持ちいいっすね、やり遂げたし、高くて風は涼しいし。」
そうだね。
降りることを考えなければね。
「魔法で降ろしてよ。」
いや、それがさ、ここってなんか魔法上手くいかないんだよ。
登ってびっくりしたけど、山の上の方に遺跡があるっぽくて、ここら辺を境に魔法禁止エリアに入るみたい。
「そっか。
もう俺ここに住むわ。」
うん。
気持ちは分かるけど降りよう。
ある程度降りたら魔法で降ろすからさ。
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