第182話 ピンクマン2
「いやぁ、ラルフ史上一番深い祈りでしたね。
いえね?
別に怒っていませんよ。
ただ有名になったんだからもう少し愛想を振り撒いたって良いんじゃないかと思っただけで。」
おい!
…そう言う神様は生きていた頃、有名になった後にそんなことしたの?
「…したくなかったけど、しましたよ。
象に乗せられてシャランシャラン鳴る服を着せられて、でっかい団扇で仰がれながら町中を練り歩かされましたとも。」
オリエンタル!
なら、なんで僕にも同じ目に遭いかねないことをするのさ。
静かに、丁寧に生きていきたいのに。
朝起きたらまずコーヒーを直火でその日の分だけ焙煎するようなさ!
「いや、なんか龍神に乗せられちゃって。」
あんた神だろ!
自分を持たないと大変なことになるんだから!
「少し意味はありましたよ。
龍神戦に備えて神気を高めておかなくてはね。
予備ですが、必要でしょう。」
信仰にも高め方ってもんがあるでしょうよ。
困っている人を助けたり、自然と増えていくもので、あんな不自然にファンを増やさなくても良いじゃない。
「そうですけどね。
しかし、時に数は強いですよ。」
こんな時で無ければ家族に愛されるくらいでちょうど良いのに…。
そういえば神様の子孫はいないの?
この辺りの出身でしょ?
「それは良いじゃないですか。
どうせ神になった際に縁は切れているのですからね。
そういえば龍神から、この街の龍教会へと顔を出してほしいと伝言を受けていますよ。
寄ってってくださいね。」
どこにあるの?
それ。
「ああ、山の上ですね。
4000m峰の頂上近くです。」
はー!
なるほどね!
隠れ宗教になる訳だ。
教会の立地が悪すぎるもの。
最寄駅まで徒歩何時間だ、それ。
「普通の人が何の準備もなく行ったら死ぬでしょうが、ラルフなら大丈夫でしょ。
今回の能力は登山にしておきましょうね。」
…はい。
良かった。
珍妙能力じゃなくて。
祈っていたところに戻り、神父さんにお礼を言って、旅の準備をする事にした。
いくら強いからって尾根が白みきった山を手ぶらで登ろうとは思えない。
…ピリルルがいたらひとっ飛びなのに、人間のなんて不自由なものか。
有名な山なのか登山道具屋もあり、滑り止めのついた靴や、片手用のピッケル、防寒服を買って店を出ると、やっと追いついたリンキーがいた。
「あのタイミングで置いていくのは人手なしっすよ…。
ジジイとちょっとジジイとすごくジジイに囲まれてめちゃめちゃ怖かったんすから。
俺のこと編纂員って知ってるやつもいて逃げられねーし。
ん…?
なんすかその大荷物。」
有名な山だから登ろうと思って。
「…ふっざ…いや、こんなジジイの森にいるよりは良いっすね。
俺のも買ってくれました?
服とか、寒いんでしょ?」
え、ないけど。
「えー!
うっそでしょ?
あんなサバトに置き去りにして?
悪魔召喚するかと思ったんすから!」
わかったよ、ほら、僕の分けてあげるから。
「…カイロ一個?
これで耐えられる場所なんすか?」
わかんない。
リンキーならイケると思うよ。
熱い血潮が流れているから。
バーニング!
「え、あ、バーニング!
…いや、無理よ。
見てあの上の方、真っ白っすわ。
なんで白いかわかる?
雪降ってんのよ、あれ。」
知ってるよ!
失礼な奴だな。
解ったよ、ほら、これもあげるから。
「手袋…。
もう一声!
一応何処にでもついていけるように防寒具はあるんすけど、凍った道の靴とかは持ってないんすよ。」
仕方ないなぁ。
ほら、店主がまとめてくれた荷物の片方はリンキーのだから、これ使ってよ。
「あんのかい。
いや、サンキュー。
ありが…。
なにこの色。
全部どっピンクじゃないっすか。」
え?
流行りの色だよ。
なんでも隣街の偉い人なんか、一時期影まで真っピンクだったんだから。
「いや、それ…。
知ってるんすよ、編纂してたから。
あぁ、避けたかったなぁ。
俺もカルロス様枠になるなんて。」
嫌だなぁ、おもちゃだなんて。
カルさんをそんな風に扱ったなんて書は焚書にしてしまおうね。
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