旅 龍教会と兄龍

第178話 出発

「そろそろ行くのか?」


うん。

学内で2人が大暴れしてるのを見たら最後まで見たくなっちゃうからね。


「やっと会えたっていうのに、もう少しゆっくりしていけばいいのに。」


ねぇ。

いや、驚いたよ。

サンドラさん、やっぱり女の人の姿の方がしっくり来るね。


「そう?

呪いを受けた時からかなり気をつけて男らしくしていたんだけど。」


無理があるよ。

歩く時ドレスの幻が見えたもの。

美しいキャットウォークだったよ。


それにしても…。

貴族の格好をした2人が並んでいるのは、なんか似合うね。


「そう?

婚約者だからかしらね。」


どうかな。

でも、似合うっていうのは大事な事だと思うよ。


どうぞお幸せに。


「はは、神の子から言って貰えたなら心強いな。

ま、俺はこれからさ。

ピリルルに協力してもらわなきゃならんような大した事ない貴族だが、今回は勝つ。


実家の親父と兄貴には悪いがな。」


そう言えば下の兄弟は大丈夫なの?


「あぁ。

カサンドラが帰って来たらどうとでもなるさ。


はぁ、なぁ、家格で負けて、腕っぷしは互角。

そんで美人な嫁だろ?

そんで兵士時代の情けない話も隅から隅まで知られてるって、ここから尻に敷かれない方法はないかな。」


ないねぇ。

いいんじゃない?


あ、この国では子供の名付けは誰がするの?


「あ?

仲人か家の長かな。」


じゃあ僕がしてもいいね。

一年後くらいに寄るから。


「ははっ。

確かにな。

いいぜ、お前に頼む。


…一年後?」


お腹の中に居るのは10ヶ月くらいでしょ?


「あはは、わかったわよラルフちゃん。

学長業に支障を出させておくから、また一年後いらっしゃいな。


早まったらピリルルちゃんに伝えて呼び出すかもよ?」


あはは。

楽しみだね。

今から考えておくよ。


「おう。


…世話んなったな。」


こちらこそ。

じゃあ、またね。




街を出る前に次のシグネチャーモデルGS2とやらを受け取り、絵師の人にラフスケッチをしたもらい、これで本当にこの街でやることを済ませた。


お待たせしたかな?


「へ?

いや、なんだ。

気がついてたんですか。」


当たり前でしょ。

ずっと僕のこと見てたじゃない。


「私は護衛なんでそりゃ見てますよ。

カッコいいですね、その木剣。

ラルフ様モデルらしいじゃないですか。」


そうでしょ。

普段使いに良さそうだよね。

テールの花の意匠はそのままに、フラーに青を入れてもらったんだよね。


細身に見えるけど、しなりを重視した設計だから丈夫なんだよ。


「うわぁ、男の子っすね!

全然興味湧かないですよ。

私素手派だし!」


そうね。

それで?

もう隠れないでついてくる事にしたの?


「そうですね!

バッチリ顔も見られてるし隠れたり紛れる意味無くなっちゃったんで!


いいですよね?」


いいよ。

じゃあ、好きな食べ物教えてよ、アン。


「へ?

なんすかそのナンパみたいなの。」


いや、普通に一緒に旅するから食べ物買って行かないといけないでしょ。


「あ!そうですね!

シチューが好きですね!

茶色いやつ!」


ははん?

さては料理はからっきしだな?


「そんな事ないっす。

じゃあ私が買ってくるんで次の野営の時にほっぺたが落ちてどこか行かない様に抑えておくバンダナでも買って来て下さい。」


あはは。

楽しみにしておくよ。

じゃ、これお金ね。


…今のうちに出発しちゃおうかな。

ほっぺた大事だし。


置いて行っちゃお。

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