第177話 相談事
「おぉ、やっぱ気が合ったかあの2人。」
うん、よかったよ。
図書館で気になっていたんだよね。
異常な数の著作数だもの。
まさか現役だとは思わなかった。
「ピリルルに相談もせず押しつけに行くなんて思わなかったがな。
怒ってなかったか?」
さぁ。
でも話していたら仲良くしようと思って無かったと思うよ。
「それはなぁ…。
でもなんで急にピリルルを突き放したんだ?」
◆
話は前々日に遡る。
寝ましょかねと思って目をつぶって居ると急に視界が真っ白になった。
こんなタイミングでは初めてだが、見慣れたヤツだ。
目を開くと目の前に神様がおり、その横には龍神がいた。
「すいませんね。
しかしこのタイミングしか無かったんですよ。
ピリルルに関わる事なので、万が一にでも察される訳にはいかない、貴方とピリルルが別の寝室になるロブ家に泊まっている今しかなかったのです。」
…なんだ?
ピリルルに関わる…?
いつも一緒に居たけれど心当たりがない。
「すまんなラルフ。
我がそろそろ狂う予感があるのだ。
何十年先とかではない。
明日かも知れないし、5年後かも知れない。
そのくらいの予感だ。」
…龍が狂うって、見境なく暴れ回る様になるんだっけ。
「左様。
そうなるとな!
ピリルルの親父、つまりは龍王に退治してもらわなきゃならんのだが、ほら、我強かろ?
万が一失敗した時のために龍王候補は遺しておかなければな。」
あぁ、そういうことね。
龍王一家全滅を避ける為にピリルルは隔離しておきたいのか。
「まぁ、そういうことだな。
我がどの程度弱体化するかは正直わからん。
今世ではおそらく龍王のやつが最強ではあろう。
奴が失敗する事なんかは考えられんが…もしもがあるからな。
どうあれ、龍王の息子だ。
家族のピンチかもしれない状況を伏せるなんて、本来なら難しいのだが、自然に出来る環境が沸いて出て来た。
彼奴の家族にも話してあるが、概ね賛成しておったわ。」
つまり、龍王、王妃、リリーディアと会った事ないけど、長男龍みんなって事だね。
「左様。
手紙でやり取りをしているらしいの。
それもこの状況を隠し通すらしい。」
いや、家族で決めた事なら僕は反論とかはないよ。
万が一の為で保険なんだしね。
でも、ピリルルを離す環境ってなにさ。
「学校の学問の理事長はおそらく人類最高の天才です。
そしてピリルルも歴史に残る天才的な頭脳を持っているでしょう。
ラルフが突き放して、ここに留まらせて下さい。」
いや、それは僕が誘導する事じゃないでしょ。
僕と旅を続けていても変わらないんじゃない?
「貴方にも役割が降ってくる可能性がありますからね。」
は?
「聞いたろう?
龍教会の話を。
龍贄の方も。」
あぁ…。
なんとなくね。
龍を取り込むって。
「それだ。
龍王が失敗した場合、お前が龍贄をしろ。
それしか世界が残る方法はない。」
…本気で言ってるの?
「本気だ。
そもそもこの世界で龍賛すらお前ともう1人しかおらん。
2体も倒してるやつはお前だけだ。
龍王が死んだ場合、龍がお前の糧となる事が決まっている。
…話し合いの末にな。」
…。
「お前しかおらんのだ。
ペリンに龍を差し向ける訳にはいかないし、最悪の場合、お前はラルフィードが戦闘の補助能力を与えられる。
確率が一番高いのだ。
我を殺せる確率がな。」
…話はわかるよ。
だからピリルルを離したいのも分かった。
「問題なく龍王が我を殺してくれれば問題はない。
狂った我と龍王なら彼奴の方が強い。
龍は龍贄を出来ないからな。
龍賛は可能だが、もし我が狂ったまま龍王を龍賛して強くなったとしても、龍贄をしたお前の方が強い。
ま、その場合我が居ないから願いは叶わないがな。
はは、だから万が一なのだ。」
長男はどうしてるのさ。
ピリルルは次男でしょ?
「ああ…。
彼奴は見つからなくてな。
フラフラしておる、変わり者の龍でな。
本気で隠れた龍など見つからん。」
あ、だから概ねってことね。
ま、どちらにしろピリルルとその理事長の相性が良ければ考えるよ。
すごく嫌な爺さんに親友を押し付ける様な事はしない。
…ピリルルの頭脳に関しては確かに思う所がある。
僕なんかじゃ太刀打ち出来ない。
せっかく天才なのに、成長を妨げているんじゃないかって思いはあったから…。
「うむ。
それで構わん。
万が一の保険だからな。」
分かったよ。
それにしても、龍神も色々考えているんだね。
もっと感覚で生きているもんだと思ってたよ。
「馬鹿を言うな。
ラルフィードと違って我は色々考えておる。」
「え?
私の方が思慮深いですよ?
ねぇ、我が使徒ラルフ。」
…僕に振るなよ…。
どっちもどっち、両方ゆる神だと思っていたよ。
「強いで言うなら我だろう。」
龍神は欲望に弱いじゃん。
「ねぇ?
私の方が落ち着いた神ですよねぇ。」
神様はあんま深く考えないじゃん。
それで僕は何回も死んでるし。
「生意気な奴め。
ラルフィード、こやつの能力を変なのに変えてしまえ。」
「そうしましょう。
女の人を口説きやすい台詞が漏れちゃう様にしましょうね。
次の能力は『たらし』です。
トラブルに気をつけて下さいね!
では、お幸せに。」
なっ!
ふざけ…。
目が覚めた僕は、なるべく女の人と距離を置こうと決めた。
まさか、この後案内してくれる人が自分のファンだとも知らずに、無駄に覚悟を決めていた。
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