第169話 龍教会

結局選挙戦ってなにやるのさ。


「まだ言ってなかったな。

要は学長と理事を選ぶんだが、まず学長からだ。


今まではロブ家本家が独占して来たと言ってもいい。

戦争で子供を失った時のみ分家から本家に移籍してなっているが、傀儡だったからな。


ま、俺らの親父の事なんだが、分家が3年一期のみなっている。


そんで、学長が選ばれてから理事の4人を選ぶ。

学問、教養、魔法、兵法、それぞれのトップをって訳だ。


学問…はわかるよな。

歴史研究とか、計算とか、古文書の解読とか、そういうやつのまとめ役。

物によっては全部必要になるしな。


魔法は魔法だ。

効率化したり、魔道具を作ったり、そんな感じだな。

魔法は個人差がデカいからあんまり固まらないが、魔道具は魔法を万人に落とし込むのが目的だから、こいつらはチームプレイだ。


兵法は武術と戦術。

これはそのままだ。

人の殺し方と助け方ってやつだ。

個人か国家かしらねぇけどな。


そんで…教養なんだが。」


貴族を囲むために無理やり作られた学部だね。


「そういうこと。

貴族には魔法も武力も知識もいらねぇからな。


箔をつけたいし、有力な頭と暴力と繋がるための学部だな。」


んで、学校は寄付金で潤うと。

それで?

カルさんは何を目指して学長選に出る体にするの?


「やりたかったことを真っ直ぐいく。

別に負けても良いんだからな。


教養学部を潰すのを宣言する。」


あら、大丈夫なのそれ。

別に悪い事ばかりじゃないでしょ。


「元々はな。

でも今は害の方がデカい。


貴族に召し抱えられるのがゴールになってて本来の教育研究機関としての働きが疎かになってるからな。


先進的な研究や民の役に立つけど、貴族の役に立たない研究への評価が低い。」


どの国だって最終的にそうなるだろうね。

そんで、本音は?


「貴族が偉そうでムカつく。

分家の苦しみパンチだ。」


おっけー。

じゃあそれで行こう。

名目は真っ当な耳触りだし、こんなチンピラみたいなカルさんでも一応貴族側だしね。


貴族対平民にしちゃったら勝てるかもね。

でも寄付金とか大丈夫なの?


「さあ。

なんとかなるだろ。」


えぇ…!


「大丈夫だよ。

調べたら寄付金で賄ってる運営費は2割もない。

貴族だけに限っては1割もないよ。


運営費はほとんど学校でちゃんと稼いでる。

と言ってもほとんど過去の研究の使用料とかだけどね。」


なら運営も問題なし。


現理事って続投が濃厚なの?


「いや、学長が基本的に決めるな。

けど、優遇票があって結構でかい。


だから本音を言えば引き込みたいが、確定しているだけでも教養部長は敵になるし、兵法部長は味方になるはずだ。


サンドラの実家のスロウディ家だからな。

あそこ実はロブ本家嫌いなんだよ。

俺とサンドラの婚約もそれをなんとかしようとしただけでさ。


だから中立な学問と魔法を引っ張ればまず負けない。」


はいはい。

なるほどね。


じゃあ僕が魔法学科に訪問するから、ピリルルは学問学科に行ってよ。

龍の王子様としてさ。


「おっけー。

…学問学科に龍教会の人がいた気がするな。」


そういえばその龍教会ってなんなの?


「えっ?

ラルフも所属してると思うし、上の方の地位なんじゃない?


龍讃2回もやってる人でしょ?」


えっ、知らない。

龍讃ってなに?


「龍を倒して願いを叶えること。


龍贄はやってないよね?」


えっ、また新単語だ。

龍贄はなに?


「龍を殺して核を取り込むこと。」


やってないやってない!

殺すために戦ったことなんてないよ!


「すげぇ風習だな。

龍贄ってなんか意味あるのか?


龍讃は聞いたことあるというか、御伽噺の定番だから聞いたことあるけどよ。」


「核を取り込むと、人の身体で龍の力が得られるんだって。

要するにすっごく強くなる。


龍讃でも願いの副産物ですっごく強くなるのは変わらないんだけど、比じゃないらしいよ。


龍贄が行われた記録がないから、どんな風になるのかは分からないけどね。


あ、それでね、龍教会っていうのはその龍讃と龍贄を目指す集団なんだよ。

だからラルフは龍讃経験者って事で上の方って訳。


…というか今この世界に龍の願いを叶えた人間ってパパとラルフ、ペリンさんくらいしか居ないんじゃないかな。


いるのかもしれないけど、すごく長生きしているはず。

なんとなくどこかで龍が倒されると、龍には分かるから。」


龍殺しってそんなやばい団体ほっといていいの?


「いい、というか、むしろ僕らは好んでるよ。

龍にとって挑戦されるのは大好きだし、そんな相手に勝ったら誇りにする。

負けても龍は名誉ととる。

どうせまた発生するしね。」


おぉ…。

やっぱ価値観が違うところは全然違うんだねり


「だから挑戦だけでも英雄なのさ、龍にとっては。

ラルフは今まで2回勝って一回負けてるでしょ?

だからもう龍からしても神の子だよ、こんなの。」


…あ、そう。

ん?一回負けたっけ。


龍に?


「こないだ、僕に。」


えー!

あれは公式じゃないでしょ。

ハンデ戦だよ。


武器と魔法を自由に使えるならもっと手があったね。


「僕だってそうだよ。」


ん?あれ、もしかしてあれに勝ってたらまた龍神様来てた?


「…どうだろう。

来てたかもしれないね。

お互いルールに則った上だけど本気でやってたでしょ。」


うん。

そうだね。


…もしかして戦わなくても龍讃って成功するのか?


「…誰も試したことないから分からないけど、そうかも知れない…。

龍とコミュニケーション取ろうとした人間自体少ないし。」


龍王様が脳筋だから戦いが基本になっちゃったのかな。


…じゃんけんでもしてみる?

来るかもよ。

暇そうだし。

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