第167話 ロブ家へ
それで、カルさんはどうしようと思ってるの。
「最初は家督を捨てようかと思っていたんだ。
手っ取り早いしな。
でも弟がいるから、アイツに全部被せる事になりかねないだろ?
だからもうすぐある学長選挙で完敗して、対抗にならないことを示すかなって。」
ここの学長って選挙制なんだ。
「ちゃんと戦って負けなきゃ不気味な存在のままだからなぁ。
本気で戦うポーズを見せるなら、ラルフの存在は丁度良いかもな。
お前が支持しているって事になれば、何もしなくても良いだろ。」
肩書は立派だからね。
この兄弟と守るのにも使えそうだから良いかもね。
「そんじゃあ、俺の家族に会いに行くか。
あ、その前に選挙戦に出る紙出してからだな。
サイン貰えるか?
推薦人の所。
本当は実家で誰かに書いてもらおうかと思ったんだが、この際丁度良いな。」
はいはい、ここね。
「おし、じゃあ出してから行くか。
実家は分家だが、それでも学園の家系だから古い本がたくさんあるぞ。
ピリルルもくるか?
好きに読んでいいから。」
「うん。
はー。
カルさんは個人蔵書の貴重さを分かってないなぁ。
貴重な本が眠ってたり、その家にしかない本があったりするんだから。」
あ、読書家スイッチが入りかけてる。
こうなるとピリルルは面倒なんだ。
伝記だと伝聞先まで調べ出したり、実際行ったりしているらしいし、遺跡を調べたいのもその一環だっていうし。
書き出した人物によって句読点がズレて、印象が変わってしまった本とかは、なるべく原文を探して読みたがったり、物語とか文章だけじゃなくて、本自体が好きみたい。
「好きに読めよ。
誰も読めない本とかあるんだから。」
ふぅん。
遺跡の本とかなのかね。
この世界3周目らしいから、そういうのあってもおかしくない。
「コレクションのこと?
本当にあるの?
龍の国にも2冊だけあるんだけど…僕も読めない。
材料がすくないから、いつか集めて翻訳するのが夢なんだ。
あ、ラルフ、だから遺跡にも、史跡にも興味持っているんだよ。」
はぁー。
なるほどね。
そういうものがあるんだ。
僕も読ませて欲しいな。
前の世界のこと少し知りたいし。
「前の世界ってなに?」
え?
あぁ、神様から聞いたんだけど、この世界は2回滅んでいるらしいよ。
「えぇ…。
知らなかったよ。
この世界で知っているのはラルフだけなんじゃない?」
どうなんだろう。
意外と古い組織、例えば教会とかには話が残っているかもしれないね。
ほら、絶滅したわけではないはずでしょ?
今も人が居るんだから。
「確かにね。
目的地だし行くのが楽しみになってきたよ。」
うん。
確かに。
「おら、ついたぞ。
デケェのはデケェだろ?
分家とはいえ名家だったからな。
もう廃れかけだから寂れてるけど。」
いや、立派だよ。
建築様式も他と違う気がする。
「兄さん、実家を貶すのはよくないよ。
いらっしゃいませ、カルロスと弟のシフです。」
あ、ラルフです。
こっちはピリルル。
「存じておりますよ。
兄さんが客を連れて行くって早便を送ったと思ったら…。
どこでこんな大物を引っ掛けたんですか。」
あ、なんか丁寧な佇まいだけど、カルさんの弟って感じがするよ。
なんていうか、いい意味で気安い感じで好感が持てる。
「ばっか、お前、引っ掛けられたのはどっちかというと俺だ。
ま、弟弟子だ。
ピリルルは違うけど、2人とも友人だからさ。
よろしくしてくれよ。」
もちろん。
よろしくね、シフさん。
「よろしくお願いします。
兄さん、行方不明にならなくて良くなったということは、覚悟を決めたんだね。」
「おう。
学長選に出るよ。
負けるためにな。」
ケジメってやつだね。
「え?
そんな大物連れてきたら勝っちゃうんじゃない?
この前学園は大騒ぎだったよ。
神子様に学長が袖にされたって。
兄さんを優先したってことでしょ?
なら、教会は兄さんに付くよ、多分。
そして剣闘大会も優勝してきたんでしょ?ラルフさん。
騎士と兵士も兄さんに付くって。
貴族対それ以外になったら、流石に勝つよ。」
えっ…。
「えっ…。」
「ラルフも、カルさんも本当に頭になかったの?
僕は話し始めから分かってたけど。
あと、僕の龍教会も付くと思うよ。
そんなに数は多くないけど、古いから偉い人も割と居るし、勝つよ。」
何その組織…。
「え、ラルフさん。
こちらのピリルルさんは…。」
龍の王子様。
「勝ちますね。
それは兄さん、負けないよ。
むしろ負けたらマズイよ。
相当な無能だと思われちゃうよ。」
…だってさ。
「うっそーん!
ラルフ、ピリルル、帰ってくれない?」
いや、来る途中めちゃくちゃ見られたし、スロウディ家にも早便だしたから無理じゃない?
「だはー。
どうしよう。」
さぁ。
無能だとカサンドラさんと結婚出来ないから頑張るしかないんじゃない?
「ちょっと横になるわ。」
それはいいけど、僕らを案内してからにしてね。
現実は変わらないんだから。
「おぅ…。」
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