第166話 カルロスさん
その日から何日間か街の入り口を見張り続け4日目にカルさんは現れた。
普段の兵装と、訓練に来る時の動きやすい服とは違う外套姿は新鮮だったが、変装をしている様子はなかったので、そのまま声をかける事にした。
「おぉ?
ラルフじゃねぇか。
今はこの街に居たのか。
闘技場を通りがかった時に聞いたぜ?
今年の優勝はお前だったらしいな。
俺もいつか、なんて思っていたけど、弟弟子が優勝したのを聞いて、なんか悔しいより嬉しかったよ。」
あ、バレちゃった?
そうなんだよ、色々あってさ。
知ってる?勇者ぺリン。
その人と戦って勝ったんだよ。
「あ?
ぺリンさんが相手だったのか?
…よく勝てたなお前。
最多優勝のチャンピオンだぜ?
あ、これ見ろよ。
つい勝っちまったよ。
優勝記念のメダル。
後でサイン書いてくれよ。」
うやー!
恥ずかしいな…。
…ところでさ、マジな話だから宿の部屋まで来て欲しいんだけど。
いい?
「…なんだよ。
俺も実家に行こうとしてたんだけど…。
まぁ、いいよ。
先に聞くわ。」
とりあえず宿に向かおうか。
ところで、サンドラさんは一緒じゃないの?
「あ?
いつでも一緒な訳じゃねぇよ。
仲が良いから、そう言う印象なのかもしれないけどよ。」
じゃあ…カサンドラさんは、一緒に来てないの?
「…。
ラルフ。
…とりあえず宿の部屋入ってからだ。」
僕らは宿へ向かう。
この待っている何日かで宿の場所を変えた。
奥まっている、少し高級な機密性の高い宿にしたのだ。
「こんなところ借りてるって事は、ある程度察しがついてるんだな?
どこで知った?
俺が貴族だって。」
初めて会った時にカルさんはカルロスって名乗った。
でもそれ以降一度も、誰もカルロスなんて呼んでないから不思議に思ってたんだ。
それでこの街に来た後に、カルロス君行方不明事件を聞いて、年齢が合ってたからもしかしてと思って。
それで結婚の話を薄らと聞いてたからスロウディ家を訪ねたら今週のどこかに来るって聞いたから待っていたんだ。
「あ、俺自分で名乗っちゃってたっけ。
があー。
まぁお前らなら良いけどよ。
それで、サンドラとカサンドラは?
どこで知った?
バレようがないと思っていたんだが。」
スロウディ家に行った時に、カルさんとスロウディ家に婚約者がいると知ってさ。
スロウディの妹さんね。
んで、その妹さんが王国にいるのも聞いた。
そうは言って無かったけど、状況的にカルさんを追ったに決まってるじゃない。
でも僕らは知らない。
見た事がない人だ。
割と親しいのにそんな訳ないと思ったんだよ。
それで、仮説を立てた。
カルさんの近くに居たけど、僕らが婚約者として認識していなかっただけなんじゃないかって。
「あー。
まぁそんな感じで大体合ってるよ。
俺も最近だけどな。
気がついたのは。
マジにサンドラっていう男友達として接してたから。」
あの、髭を剥がした時だね?
「そう。
聞くと呪われてたらしいな。
なんか、男の中の男になる呪いだって。
なんじゃそりゃって話だが、それでカサンドラはサンドラとして過ごす事にしていたらしい。
スロウディ家のカサンドラが北部の村で拾ったって設定でな。
実家にもそんな手紙を送ってたらしいぜ。
だからスロウディでは俺とカサンドラの仲は問題なく育まれていると思っているそうだ。」
女の子らしく育てるから北部の村だったのかな。
「いや、なんかその近くで呪われて空を飛んで行った童話があるからって話だ。
信憑性の問題だってよ。
女みたいな喋り方もお嬢様だから何が変で何が男らしいとか全然わかんねぇから諦めたらしいぜ。
そしたら丁度北部に偶然そんな風習があるってんで、噛み合って誰も気にしないからそのままだったんだって。」
あ、その人知ってるわ。
初代リナリーンだ。
じゃああの喋り方は普通に女の人だったからなんだ。
「え?生きてんの?
大昔の話だろ?
そうそう、そうらしい。
まぁ、そんで、ジェマさんが奇跡を授かったときにサンドラの呪いも解けたんだって。
でも、俺との結婚秒読み、くらいの手紙を実家に送って居たらしいから、急に正体表す訳にもいかねぇってんで、しこしこ手紙を俺に送っていたってわけ。
それがピンクの影の頃だな。
白々しく、目立ったからやっと見つけられたなんて書きやがってよ。
でも…サンドラとは長年相棒だったし、あいつの字の癖なんかもずっと見てきてる訳だろ?
わかるんだよ。
手紙を誰が書いたかも。
そんでお前を巻き込んで髭を取って確認したかったんだ。
特注の魔道具とかだと、俺には外せないからさ、つけ髭。
いや、まさか顔ごと剥がして回復するっていう力技で外すとは思って無かったけど。」
ガチ髭だと思ったから…。
男の中の男ってその呪いのせいで最初会った時はひげもじゃだったのか。
「そんで剥がしたあと、お前が俺を捕獲して連れ去られたろ?
その時に全部聞いたわけだ。
っていうかよ。
実はなんとなく察してたんだよ。
幼馴染の女だろ?
なんか知らないけど男になってても…なんとなくわかるもんだろ。」
おぉ、かっこいいじゃない。
「やめろよ…。
そんで、アイツの話を聞いて結婚すんならするで別に良いかなって。
長い事一緒にやってきて、良いやつなのは知ってるしよ。
いや、すぐに女に見れるかどうかは大分心配だったんだが…。」
美人だったもんね。
少し背が高いけど、カルさんもデカいから気にならないでしょ。
「いや、それを言われたらめちゃくちゃ現金なヤツみたいで恥ずかしいんだけど、まぁ、そうだな。
それで、そうするなら片付けなきゃいけない事がこっちにあるからな。
とりあえず1人で来たんだ。
アイツと来たら結婚が確定しちまうからよ。
片付けたあと、正式にしねぇと悪いだろ。」
なるほどねぇ。
それで、僕らが待ってた理由もわかる?
「…ロブ家のゴタゴタの片付けを手伝ってくれるって話かよ。」
そゆこと。
神の子の権力と闘技大会チャンピオンの名声、役に立ててよ。
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