第165話 推測

「なるほどねぇ。

スロウディ家が認識してるカルロスがサンドラさんっぽいから、入れ替わっているんじゃないかって考えたわけね。


僕は顔ごと髭を剥がされた時しか見てないけど、自然な感じだったけどねぇ。」


そうなんだよね。

入れ替わるとしたらなんでそんなこと必要だったのかって話だよ。

僕らが入れ替わった時は、誤解と僕の怠惰だったけど、人生ごと入れ替えるなんて相当な理由があるよね。


「それに、そうしたと仮定して、本来救われたはずのスロウディに内緒でそうしてるのも気になる。

そうでしょ?

カルさんは内紛状態で命を狙われてたのを逃してもらった。

サンドラさんは呪いで迫害されていたのを拾ってもらった。

話がその通りなら、カルさんは素直に結婚していると思うし、サンドラさんは入れ替わりを受け入れていないと思う。

少なくとも僕ならそう。」


叡智の龍頼りだったのに、やっぱり情報が足りないか。

実際入れ替わっているのかは分からないけど、待つしかないね。


あ、いや。

入れ替わっていたらおかしい事がもう一つある。


僕の鑑定でカルさんは貴族だと出たからだ。

別に話で聞いた訳じゃない。


全然わからない。


「それにしても、なんでつけ髭をしていたんだろう。」


は?つけ髭?

誰が?


「え?

いや、ラルフがサンドラさんに貼り付けた石ごと剥がしたあれ、つけ髭だよ。」


いや、顔ごと行ってたよ?


「いや、取れた面倒点々にになってたじゃん。

ラルフと言っていたでしょ。

点々になってるって。

本物のヒゲって結構埋まってるからそうはならないんだよ。

表面をしっかり掴んで全部剥がしても、中にある毛が長いから、表面がもじゃもじゃで点々にはならないんだよ。」


あぁ、たしかに。

今世で髭生えてないから忘れてた。


「…本当にスロウディ家はサンドラさんを見たのだろうか。

口ぶりは伝聞だ。


呪われたサンドラさんは存在するんだろうか。」


は?

サンドラさん居たじゃん。


「僕らが知ってるサンドラさんが架空の存在だとすると、辻褄があっちゃうんだよ。


カルさんを追って行った婚約者のスロウディ妹。

僕はまだしも、君が一度も見かけてないなんて有り得なくない?


でも家には報告している。


君が見ていたとすると、カルさんの近くに居たはずだよね。


サンドラさんの呪いは本当に髭の呪いだったの?」


目視できるほど伸びる髭は呪いでしょうよ。


「それ、聞いた事ないんだよ。

呪いってさ、何かに成るってものばっかりなんだ。

リナが竜になったり、ある意味呪われたパパも龍になったり、エアリスも人になったり。

過去の記録の呪いもそうなんだ。


だから髭が伸びるだけって不思議だったんだ。

でも、こう考えたら分からない?


髭は男の象徴だって。」


…つまり、あれは髭もじゃの呪いじゃ無くて。


「男になる呪いじゃないかな。」


それを僕が解いてしまった。


そして今回婚約者を連れて帰ってくる。

それがカルさん。


じゃああの時カルさんが髭を剃りたがっていたのは、その呪いの確認だね。

ふざけたノリだったけど、本気で必要な情報だったのか。


カルさんはもしかして、自分の婚約者がサンドラさんだって知らなかったのか?


「それっぽいね。

悪目立ちした時と同じくらいの時に、サンドラさんの呪いが完全に解けたんだろうね。


ほら、リナの竜の呪いだって残滓のようなものが残っていて、変身出来るんだから。」


じゃあ、それが分かって、弟と妹のために働いていた高額な賃金を捨てて帰ってくると言うことは?


「ロブ家の内紛に決着をつけるくらいしか浮かばないなぁ。」


僕もそう思うよ。

ま、推測が合ってたらだけどね。


んじゃやる事は一つだ。

揉めるより先にカルさん達と合流して手伝う。


お世話になってるしね。


「そもそもラルフが変な感じで呪いを解いたのが問題っぽいしね。」


うっ。

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