第164話 スロウディ家

でっかぁ…。

何をやってる貴族さんなの?


「スロウディ家は武家ですね。

平和な今は学校で軍略と武術の教員をやっている者や、国軍の長だったりの要職にもついています。

あとは警邏もスロウディ家ですね。」


なんだ、カルさんのやってる仕事の系統じゃない。


「そうなんですよね。

なんでそんなに婚姻を拒否していたのか。」


あぁ、なんか弟と妹が大きくなるまでは無理って言ってたよ。

お金の問題だとか。


「…もしかして失踪したと言う対外的な話と実情が違うのかも知れませんね。

家族を話に出してケムに巻くとかそんな感じではなかったのでしょう?」


違うと思う。

もしそうならサンドラさんを巻き込むような人には思えないしね。


僕らは門の所にいた兵士に話をして、許可を願った。

するとすぐに許可が降り応接間に通されるとすでに待っている人がおり、彼が現在スロウディ家の責任者とのことだ。


「初めまして神子様。

カルロスの件で参ったとききましたが…。」


そうなんです。

王国にいた時に仲良くさせて頂いて、まだ話が進んでいない状況だったのですが、こちらの家の方と結婚をするかも知れないとの事だったので伺ったのですが、失礼ではありませんでしたでしょうか。


「いえ、とんでもないですが…婚姻…?


いや、私までその話は伝わって来ていませんね。

しかし、王国には私の妹が行っておりますので、そこで話が進んでいるならもしかしたらそうなのかもしれません。


お恥ずかしい話ですが、武家なのでね、結果のみを簡潔に伝える癖が付いておりまして、家族への報告もそんな感じなのですよ。」


ははは。

なるほどなるほど。


「そうなんですってラルフくん。

ご友人に会えなくて残念ですね。」


武家だと戦争なんかでの連絡も迅速で無ければなりませんもんね。

なるほど、なら外に情報を漏らさないようにボカすのも上手ですよね。


「…?

何を言いたいのですかな?」


いや、カルロスさん、いや、僕はカルさんと呼んでたし、向こうではカルロスと言う名前を名乗っていませんしね。


こちらでは行方不明の方なんですよね。

そちらをまず驚くはずでは?


結果のみを伝える家系で何も知らないのなら尚更知らないはず。


どっちです?


元々カルさんの居場所を知っていて、知らないふりをしていたか。


もしくは、あの、僕がカルさんを、その、悪目立ちさせたから見つけたか…。


「ラルフくん何やったのさ。」


いや、無魔法で影をピンクにしたり…。


「えぇ…。

男の人なんでしょ?」


いいから、話の腰折らないでよ。

んで、どっちなんです?


「ほう。

なるほど。

口ぶりから察するに、本当にカルと親しいのだな。

どちらかと言われると両方としか言いようがないな。


彼が生きているのは知っていたし、王国へ逃したのは我が家らしい。


俺の前の領主がな。


理由は…弟と妹に送金してるという話から想像つくだろう。

没落寸前な上に、内紛状態だったのだ。

ロブ家は。


かの家は文官家系でな。

学校が発展していくに従って要職から追い出されて行ったのだ。


しかし学長の座だけは死守しており、本家と分家がその座を争っていた頃で、分家の長男がカルロスだった。


7歳の頃から武の才能が見られたので、俺の妹との婚約を決められていたのだが、よりによってそれが分家を後押しするのに影響してしまったので、カルロスの命が狙われることとなった。


それで、遠くへ逃すこととなったのだ。」


はえー…。


なら分家は政争に負けたのか。

勝っていたらカルさんが送金を続ける理由が無いもんね。

あ、それで悪目立ちして本家バレする前に保護しようとして結婚の話が出たのか。

カルさん今でも相当強いしね。


「そう言うことだな。

しかし、私たちに彼の弟と妹を保護する意思がないことが反発を招いてしまってなぁ…。


恐らく逃げ回っていた大きな理由だろう。」


…?

ならサンドラさんを身代わりにしようとした理由がわからない。


「サンドラか。

サンドラは我が家が王国へ行った際に北部の村から保護した子供でな。

呪われていて迫害されていたのを救って、カルロスの元に付けたのだ。」


髭の呪いね。

それは僕が解いたよ。


それは分かったけど、身代わりはなんでだろう。


「髭の呪いだったのか?

俺らはなんの呪いだったか知らないが…。


身代わりの理由はわからん。

娘からの連絡では見失っていたカルロスを見つけた所までだったからな。」


…?


話が全然繋がらない。

影が女らしくなったから目をつけられた、みたいなことを言っていたけど、スロウディさんの言うことを鵜呑みにしたら、それは関係なさそうだ。


「あぁ、カルロスは美しい容姿をしていたからな。

それで発見出来たのだろう。」


…?

カルさんはちょっとカッコいい方だとは思うけど、どっちかというと男らしい近所のにいちゃん感溢れる感じだ。


「そうか?

まつ毛がふさふさの美しい子供だったぞ?」


…あ、これ以上話さない方がいいかも。

多分、この人達は確信には気がついていない。


この家の思惑とは別に、カルさんとサンドラさんの思惑がある。


そして、カルさんとサンドラさんは…。

入れ替わっているのだ。

なのであのカルさんとサンドラさんのやり取りは、僕が見ていた表面上のものだけじゃ無く、2人にしか通じない別のやり取りが裏にあったのだろう…。


「ま、分からんことは分からん。

が、あと数日でカルロスとサンドラがここに来る予定がある。


娘から手紙が来ていたので、我が家のやり方通りなら、結果だ。


来ることになっている。

友人ならその頃来るといい。

恐らくあと1週間かからないくらいだと思うが。」


またの来訪を約束して僕とアンは屋敷を後にした。


「話は大丈夫だった?

私にはよく分からないけど、なんか面倒そうだね。」


そうだね。

でも大丈夫。

材料は集まったと思う。

あとは僕には知恵袋があるから、それに任せてカルさんとサンドラさん達友人の味方になれるようにしておこう。


「なぁにそれ、知恵袋って。」


あ、知らない?

叡智の龍って言うんだけど。

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