第153話 親と子の間に降る雨
結果的に、教会長は罷免され、闘技場の運営には、監査がつくこととなった。
本格的に調べると、しっかり残って居た証拠に、犯罪が関わりすぎていたからだ。
教会の介入だけだとまた何か起きると対応が偏る可能性があるので、何ヶ国かで運営していく事になる方向で話が進んでいる。
他国からしても、犯罪の温床で誘拐の拠点となって居た場所を潰せるのにはメリットがあるし、運営していく中で金銭も獲得できる。
もしかしたら闘技場で一騎当千な兵も獲得出来るかもしれないしね。
王族にはお咎めがないこととなった。
真実はどうあれ、関わった記録もないのだ。
しかしほぼ闘技場からのアガリで賄っていた公費が分散しても、やっていけるのかは知らないが、それは僕にはもう関係がないことだ。
「入国するとき、騒ぎを起こさないし、大人しくしてるって言ってなかった?」
はて、人間は忘れる生き物なので…。
「それで、これからどうするの、子沢山のラルフさんは。」
旅を続けるよ。
今回の事でまた僕の立場が面倒になったんだから、本山まで自分の足で行かないと、すっごい面倒な事になるよ。
「いいけどさ、僕は付き合うだけだから。
裏方も楽しかったしね。
こういう、調べて裏をつくみたいな事好きなのかもしれない。」
それは良かったよ。
次に行く予定の大きな街は学術都市だからね、きっとピリルルに合うと思うよ。
「あ、そこ行ってみたかったんだよね。
世界最大の図書館があるでしょ。
昔中央砂漠にあった都市の跡地に図書館があったっていう伝説があるんだけど、そこの蔵書とか残ってないかな。」
そうなんだ。
楽しみだね。
じゃあ、僕は残ったことをやってくるよ。
丁度2人とも来たみたいだから。
いらっしゃい。
「うん。
私、ラルフの娘になったのね。」
書類上はね。
それが一番早かったし、あんまり気にしなくていいよ。
庇護できる立場だっただけだからさ。
「ううん。
嬉しいんだと思う。
あんまり誰かに何かしてもらったことないから、あんまりわからないけど。」
そっか。
これから分かるといいね。
自分と向き合って。
「ラルフ、それで、あの、この子が俺の子なのか?」
そうだと思う。
自分たちでは分からないと思うけど、凄く似てるし。
違うかもしれないけどね。
「これ、捨てられた私と一緒に置いてあった手紙。
黒い髪で部屋に沢山剣が飾ってあった男って書いてあるけど、心当たりある?」
「ある。」
そんな感じの部屋だったね。
刀剣コレクターだから。
「なら、私はあなたの子供です。」
「おお、そうか…。」
…。
どうする?アメ。
ぶっ飛ばすか?
「まだ、全然無理。
この人の…あの、キャオさんの戦いをあの後見た。
ラルフが控室に入れてくれて見られたの。
それで、すっごい強いと思った。
始めたばかりで、何が凄くて強いのかはわからないけど、とにかく。
だから、まだ無理だから。
私が強くなったらぶっ飛ばす。
新しい家で鍛えてもらえるんでしょ?」
うん。
指導大好き大人が2人もいるし、兄貴分もいるし、強くなれると思うよ。
「なら頑張る。
頑張って、剣闘士になってぶっ飛ばす。」
それは無理かもなぁ。
「なんで!
なれる!」
なれるとは思うけど、キャオに別のことを頼みに来たからさ、その返答次第なんだよね。
「…なんだ。
その子を引き取れと言うなら喜んで引き取るぞ。」
それだとさ、アメは仲間と離れ離れなんだよ。
この子らにとって仲間ってのは人生の全部だった。
僕には出来ないかな。
それは。
だからさ、今度は親のあんたが全部捨てて、この子らを教えてくれないかな。
うちの姉が、この子ら用の私塾を建設してる。
そこで働いでくれよ。
何ヶ月か先になると思うけどね。
「わかった。
そうするよ。
所で、この子の名前はアメと言うのか。
見ろ、アメ、お前と同じ名前の剣だぞ。」
「知ってる。
名付けているところを、レッドと一緒に影から見てたから。
それを見て、ラルフがキャオ、さんが気に入った刀に付けた名前だからってとりあえずつけてくれたの。
気に入らなかったら、ぶっ飛ばして名前を変えて貰えって。」
「おお!
見て居たか!
美しい刀だったからな。
見ろ、ほら、夜露に濡れているようだろう?
ほらほら、この角度の輝きなんてもう!」
「ラルフ、名前はこのままでいい。
大切なものと同じ名前で、剣の方がこの人は大切そうだから、ぶっ飛ばしてこの剣を貰うことにする。」
あぁ、いいんじゃないか。
キャオ、大切にしてくれよ。
両方のアメを。
「あぁ。
もちろんだ。」
「アメ!
あ、兄貴、こんにちは。
お客さんだったか?
今日から住む場所決まってさ、アメにも教えてやりに来たんだ。」
よう、レッド。
いいよ、もう連れてって。
あ、この人明日からお前らを教えてくれるコーチだから、頑張れよ。
この人ぶっ飛ばしたら、アメと結婚出来るかもよ。
「なっ、ばっ、ちげぇ!から!
俺は、そんな!
行くぞ!アメ!」
「…自分も鍛え続ける理由が出来たな。」
はっ、頑張ってね。
こっち来いよ。
もう1人講師がいるからさ。
リナリーンって言うんだけど、めちゃくちゃ強いから、気をつけてな。
「ははは。
強い女か!
手合わせ願おうかな!」
…おー。
頑張れよ。
マジで頑張れよ。
もしキャオが勇者なら僕は嬉しいし、僕の親友はもっと喜ぶよ。
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