第151話 優勝

結局ペリンが一番強かったな。

決勝戦は不戦勝だったけど。

相手の反則負けだ。


あまりにも僕と戦いたいがために、決勝の相手を仮面を付けて襲撃し見事撃破。

そのまま顔を隠して決勝に出ようとした妖怪が捕らえられただけだ。


やられた相手も実直な騎士だった為、負けは負け、自分は出る資格がない、と辞退してしまったのだ。


いや僕も不完全燃焼感でちゃうわ。


捕らえられた妖怪?

シャシャシャシャって言いながら逃げていったよ。

正体はちょっと分かんない。

あんなお爺さんは知り合いには居ないですね…。


何やってくれてんだよ…。

そんなモヤモヤしたまま優勝が決定した。


しかし…。

決勝に残った騎士がただ実直な普通の実力者だったって事は、もう僕を害す気は無かったんだろうか。

もし運営側がその気なら、シャルルさんとの戦いはやらされていた気がする。

ペリン並みに強いし乱入してくる狂人なんだから、僕らの関係を知らなければ使えると思うだろう。


と、いう事はもう終わり?

諦めたのかな。


その理由は表彰式で明らかになった。


表彰を行うのは、この国の国王でも、教会の偉い人でもなかったのだ。


教皇が舞台に上がったのである。

そのせいでこの国のお偉いさんは後ろで置物になっている。


教会最高権力者の教皇。

いくら何でもピリルルは招待していないはずでしょ?


「おめでとうございます、神の子様。

いやぁ、偉くなっちゃってからこういう催しからの招待が逆に来なくなっちゃって、久々だったので、ウキウキで来ちゃいました。

大声で応援してたので声がガサガサで、申し訳ない。

ははは。」


いや、招待してた。

何やってんだ、あの龍の王子様。

しかし、すっごい偉いお爺ちゃんなのになんかノリが軽いな。

いやいや、威厳は感じるよ?


でもどっかの誰かに似た軽薄さだ。

見てる?神様?

人の振り見て我が振り直した方がいいよ?


この人じゃないな。

僕に暗殺者を送ったりしたのはこの人じゃない。


「ケチをつけたシャルルはヒゲでもむしっておきますから、安心して下さい。


さ、表彰しますよ。

えー、どれどれ。

おぉ!

途轍もない戦績ですな!


おほん。」


あ、妖怪とお知り合いでしたか。

貴方もやられたクチですね?


教皇が咳払いをすると、顔の前に魔力が集まり始めた。

なんかの魔法かな?

初めて見るやつだ。


「第76回

世界剣術大会、優勝者は…神の子ラルフ!」


声でっか!

拡声する魔法か!


それすらかき消す大歓声が起きる。

観客はどう思っているか知らないが、大会を荒らした自覚はある。

なら最後まで責任を取らないとね。


僕はリオンをギンギラギンの絢爛な剣にして、上へ掲げた。


もう一度大歓声が起こる。


徐々に落ち着いて来た歓声の終わりに合わせて、教皇が続ける。


「おめでとう、ラルフ。

賞金と賞品の授与を致しますね。


まずこれ、金貨5万枚です。

意外と少ないですよね。

もっと儲けてそうなのに。」


いや…今期に関しては全然だと思うよ。

剣闘士として、戯れに賭けて良いよって言った最後の数試合も、ティナはヤバい額を賭けていたらしい。


絶対に勝つのに賭けないのは商人失格、との事だ。


「金庫もスカスカでしたよ。

何に使ってたんでしょうかね。

ははは。


それで、賞品です。

これが闘技場で用意していた剣ですね、

豪華な装飾はされていますがなまくらです。

トロフィーだと思ってくれたらいいと思いますよ。


それで、こっちは教会からあげちゃいます。

聖剣ですね。」


うわ…欲しくない。

なんか面倒そうな剣だ。


そう思っていると教皇が小さな声で話しかけて来た。


「これね、製法とか素材はラルフィード様が使ってたやつを再現したやつなんですよ。

ほら、絵本とかに出てくる聖剣ホワイト、あれですあれ。


超かっこいい聖剣なんですよ。

素材も貴重な金属だしね。


でもいつのまにか、剣が何処にあるかを追う魔法がかけられちゃっていたので、早めにその剣に食べさせちゃってくださいね。

ラルフくん、危ないよ。

お爺ちゃんが守りきれなくてごめんね。


出来るだけ頑張ったんだけど、全部は無理でした。」


あ、この人、神様とかお父さんみたいな神格もった人たちのゆるさがあって、勘の良さもにてる。

バレてたか、剣が剣を食べる事。


教皇様。

僕はね、守って貰っていると思っていますよ。

じゃないと、こんなにフラフラ旅も出来ていないし、とっくに教会に監禁されてるでしょ。


「分かってくれて嬉しいよ。


あとは奏上の権利だね。

君は何を望むのですか?


普段の大会よりデカいことを言っても通っちゃうかもよ。

ワシ、超偉いから!」


ははは。

ありがとね教皇様。

後ろで王様がえっ?って顔してるよ。


でも最初から決まっていだ。

ありがとね、教皇様。

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