第148話 神の子対勇者

うわ。

一回戦がペリンじゃねぇか。


教会のやつだか、王族のやつだか知らないけど、やるならもっと悪どくやれっての。


ペリンをシードにして当たらせるとかさ。


あ、逆か。

保険がペリンなのか。

あいつは多分人を殺すような戦い方しないもんな。

消耗させてトドメを刺して、怪我の後遺症で死んだ事にしたらいいんだね。


やるじゃん。


「兄貴よー、危ないってわかってるなら辞めとけばいいじゃねぇか。


もう俺らが国を出ればいいんだぜ?

なんかは出来るだろ。

教えてもらったからさ。」


レッド達だけならそれでいいよ。

でも、また起きるぞ?

それを毎回助けるのもいいけどさ、絶対こぼれ落ちる時が来る。


嫌だろ。

それは。


「あー。

そうか。

今だけ見てもダメなんだな。」


そうそう。

今のうちに沢山考えておけよ。

忙しくなるんだからさ。


さ、行きますかね。

勇者狩りだ。

相手もドラゴンスレイヤーだ。

ちょっと楽しみになって来たな。


「あ、兄貴、頑張れよ。」


おー。

もう少し言い慣れてくれよ。

呼ばれる方も恥ずかしくなっから。


死魔法は解除して行こうかね。

その方が盛り上がるだろ。


僕の名前で呼んだ皆さんがね。


「お待たせ致しました。

チャンピオン大会一回戦を開始いたします。

青門からは、過去3連覇を果たした伝説の勇者。

ペリン!


そして赤門から、今季のトップ剣闘士、金髪の青年…え?」


僕が子供の姿で出ていくと、会場がざわつく。


ところどころで僕のことを神の子ラルフだと認識した人が居るみたいだ。


司会のお姉さん。

僕の本当の二つ名はね、神の子だ。

神の子ラルフ。

きちんと紹介してよ。


「失礼致しました。


今季トップ剣闘士、神の子ラルフ!」


会場が盛り上がってんな。

客に大勢神職者がいるし、僕のことを応援していただけの人も、自分が応援していた奴の正体が有名人だ。

もっと盛り上がれ。


これからバカがちゃぶ台返しが出来ないほどにな。


「おーおー。

沸きに沸いてるな。

これもボンの仕込みか?」


そうだよ。

勇者冥利に尽きるだろ?

あ、あそこ見てみろよ。

知ってる顔が悔しがってるぞ?


「だっはっは!

シャルルじゃないか!

そうか!

あいつ強い奴と派手な所で戦うのが大好きだもんな!


おい肩組んでピースしてやろう。

ししし。

あ、乱入しようとして若い奴に取り押さえられた。

…ん?

あれサシュマジュクか!

だはは。


始まる前から楽しいな。



…対戦も楽しくなるんだろうな。」


あ?

誰にもの言ってんだヘタレ勇者。


俺は死魔法を発動して大人の姿になった。


10何年も女にウダウダやってた奴に、10歳から婚約者がいた俺様が負けるわけないだろ。


俺とペリンは背を向け距離を取り合って、お互い武器を構えた。


「はじめ!」


しかし両者動かず。


このヘタレ勇者ってカウンター系なんだよなぁ、多分。

長ーいこと龍と戦ってたからだろうけど、受けが馬鹿みたいに長けてる。


そんな奴に正面からはいかないよね。


俺はペリンの足元に土魔法を発動し、空に射出させようとしたが、発動前に踏み抜かれてしまい発動せずだ。


その踏んだ勢いを使ってペリンが斬りかかってくる。


袈裟斬りは剣で受けた。

でもマズイな。

恐らく同じ素材の剣だが、あっちは愛する嫁さんの素材でこっちはただの友人って所だ。


そりゃ負けるって話だよな。


力任せに弾き距離を取るが、やばい。

プランが浮かばないのだ。

とてつもなく相性が悪い。


ここまで剣闘士として戦って来れたのは俺の実力だけじゃない。

武器のアドバンテージがあったのがデカいのだ。


それが無くなったのは大分マズい。

受けて壊れないだけでも良しとしなきゃいけないが、俺の剣術なんて大したことない。

死ぬ気で3年やったのと、ここに来てから対人を学んだ、それだけだ。


そして、攻撃用に主に使って来たのは土魔法。

それはリナリーンから教わった物をアレンジしたヤツだ。

本家本元厄災の魔女を想定してきたペリンには通じない。


くそー。

良い顔で笑いやがって。


正直剣士タイプとは相性が良いと思っていた。

妖怪を想定していたからな。

でもそれは技量が同等な場合で、そこでは圧倒的に負けている。


アドバンテージはなんだ。

考えろ…!


がっ!


再び突っ込んで来たペリンを受け止める。

厄介な事に舐めた連撃もしてこない。

うわっ!

インファイトのせいで沢山ある死角の何処かから、小さな火の玉が顔に向かってくる。

魔力は俺の方がある様で、大したダメージにはならないが、追撃が出来ない。


確実に削られていく。

単純な攻撃だが、効率化されている。


一撃を確実なタイミングで全力で当てて、隙を作り距離を取る。


ダメだこんなの受け続けられない。

自分から行くしかない。


今度は俺が突っ込むが、剣を簡単にいなされた。

ペリンから見ると隙もデカいようで、返しで脇腹を浅く斬られてしまった。


油断もない。

隙もない。


これが勇者ペリンか。


すごいな、分かるよ。

どれだけ鍛えてどれだけ効率化して来たのか。


尊敬するよ。


2つアドバンテージを見つけたな。

さて、どうやって使おうか。


…一番嫌がりそうなイタズラに使っちゃおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る