第146話 質の悪い宿
チャンピオン大会までは6勝0敗、つまり11戦全勝で決めた。
数が合わないって?
一つの不戦勝があったんだよ。
よって戦績は12勝だ。
ランドを捕まえたあとの試合が前大会ランキング2位の超強豪だったのだが、不戦勝となったのだ。
俺がチャンピオン大会に出てくれないと困るからな。
恐らく手紙でも届き始めたのだろう。
各国にいる、神職のお偉いさん達からさ。
暗殺でもして不審がられても困るし、その2位の選手は闘技場側の人間だったのか、何かする予定だったのか、どちらにせよ今戦わせるのはまずいという事になったんだろうね。
そこからの5戦は無難に戦って勝った。
これまでの強豪ラッシュは何だったんってくらい下位の相手ばっかりだった。
目下の不安事は、チャンピオン大会に出てくるであろうすっごい強い人だが、正直考えても仕方ないな。
「強い人って言っても、人間でしょ?
あ、でもシャルルさんみたいな人も居るのか。
対人最強みたいな。」
そうなんだよ。
ピリルルもやられたでしょ?
人体を知り尽くしているというか、上手く戦われてさ。
何回も模擬戦やっているけど今だに納得のいく1本取れた事ないもの。
「あらぁ。
ラルフでもそういう事あるのね。
私に勝ったのに。」
いや、あるよ。
相性って馬鹿になんないよね。
リリーディアだって夜のティナには勝てないでしょ?
「そうねぇ。
でもピリルルなら勝てるんじゃないかしら。
あの子一対一より沢山相手の方が強いから。」
そうなんだ。
そういえばピリルルとちゃんとやった事ないな。
どうしても敵わないねーちゃんがいて、それに勝った俺に、戦闘面での劣等感があるらしい。
正面からガチンコでぶつかったら俺に勝ち目は無いのに。
「そんな事ないよ。
僕にできることなんて風を止めることくらいだから、相手が船なら勝てるかもね。」
いや、それすっごい嫌なんだよ。
空気の粘度が上がるみたいで、上手く動けなくなるし、息苦しいんだから。
「はは。
ありがとう。
でも、本当に腕力に自信が無いというよりは、腕力じゃ無い解決法を考えるのが好きなんだよ。
いよいよとなったら使うよ。」
好みもあるよね。
俺も血の気は薄い方だと思ってたけど、スポーツ的に殴り合うのは大好きだもの。
「血の気が薄い?
私の最初の死霊たちを無理やり従えてたじゃない。」
「私も殴られたましたしねぇ。」
いや、両方避けようとはしたって。
どうにもならなかっただけで。
「そうなのラルフくん。
私は叩かれてないわね。
そういうタイプ?
まず殴ってから愛するタイプ?」
やめろ馬鹿、違うよ。
「あら、言ってくれたらそうしますのに。」
やめろって。
「そういえば今のリナリーンさんをどうやって大人しくしたか聞いた時、弱点を叩いたって言ってたわよね。」
いや、あれは、何が悲しくて家族に相手の性癖を巧みに突いたって言わなきゃいけないんだ。
はぁ、もう。
本題に戻すよ。
リナ、子供達はどう?
「あの子達?
可愛いわよ。
食べちゃいたいくらい。」
違うよ、そういう事を聞いているんじゃ無いよ。
…食べちゃってないよね?
「馬鹿なこと言わないで。
私はね、男の子同士だとヤンチャなのに、2人になると可愛いく甘えて来て、いずれ大人になったらそっけなくなって、でも本当は私のことが好きで…みたいな奴が好きなの!」
おう!
口にしないで欲しかったな。
「わかる〜。」
辞めてよお姉ちゃん。
家族には隠すものでしょ。
そういうのは。
「あの子達はみんな真面目よ。
生きるのが大変だって事を理解してるからね。
必死に学んでる。
そして、血なのかしらね。
みんな武術に才能を見せるわよ。
強い剣闘士の子供達なんでしょ?」
そっか。
才能があって興味があるなら楽しいと思うよ。
良かった。
やっぱリナに任せて良かったよ。
よく見てくれてる。
ありがとな。
「どういたしまして。
私も可愛くなって来ちゃったから、ラルフくんが失敗したら、私がこの国燃やし尽くしちゃおうかな。」
善処しますよ。
アンタがやると子供達以外無差別だろ。
じゃあ俺は戻るかな。
後一息だ。
みんな手伝ってくれてありがとな。
みんなが宿のロビーまで見送ってくれて外に出ようとすると、声をかけられた。
「お?ボンか?
なんでデカくなってんだ?
久しぶりだな。」
ん?
誰だ…?
あ、若返ってるからすぐに出てこなかったわ。
ペリンじゃん。
何やってんのこんな所で。
「いや、なんか悪い奴が大会を荒らしてるから助けてくれって手紙が来てな。
チャンピオン大会に出る事にしたんだ。
昔修行で3年間だけ戦ってたからな。
3連覇したって事で年金みたいな貰ってて恩があるんだよ。」
3連覇ってアンタか。
なら納得だわ。
…その悪い奴って多分俺だよ。
「ばっはっは。
お前が?
何やらかしたんだ、ボン。
俺の部屋に来いよ、話を聞かせろ。
リナリーンとエアリスも居るんだ。
連れて行かないと俺が殺される。」
ややこしい…。
何だこの宿。
龍が3人にリナリーンが2人。
絶対に滞在したく無い。
この宿のレビューは星一つの評価です。
客の質が悪すぎます。
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