第144話 暗殺者
さ、ランク表をもらいに行っちゃお。
「ラルフ様、凄いですね。
まだ6勝なのに凄い人気ですよ。」
受付の人に言われて、俺は苦笑いしか返せなかった。
この棟のランキング1位。
それは何となく分かっていた。
しかし、全体1位は予想してなかったな。
今シーズン遅れて期限ギリギリで参戦した為、他より2戦戦績が遅れているので、勝ち星はトップじゃない。
他が圧倒的にトップだった。
例えば賭けられた金額。
2位は1億円くらい。
これは例年通りなら当たり前にトップらしい。
俺?10億。
ティナだけで9億。
地味にティナ居なくてもトップクラスなのか、ピリルルやリリーディアが戯れに賭けたのか分からないけど、どちらにせよ反則だよこんなの。
2位からランク内の4棟各10人の40選手合わせて丁度10億くらいなんだよね。
そしてグッズ売上も案の定ランクに関係しており、それもトップ。
多分これもティナ。
あとは来客の投票ランキングもトップ。
まあ、ルーキーで目立ってるしこう言っちゃなんだけど圧勝してるからね。
期待のニューカマー票でしょ。
それかティナがなんかしたか。
「いやぁ、流石ですなぁ。
参戦してすぐに全体一位なんて考えられませんよ。
過去にチャンピオン大会を3連覇した伝説の王者もスタートにはそこまで人気が無かったらしいですからな。」
へぇ、そうなんだね。
でも、俺の場合姉がはっちゃけただけだよ。
個室へ戻ると、部屋の前にランドが居た。
なんでも噂を聞いたから話に来てくれたらしかった。
「ほう、姉君がいらしているんですね。
それで…あの…言いにくいんですが、例の子供達を従者にしていることで、悪い噂が立っているそうなのです。
この国の恥部といいますか…平民は分かりませんが、貴族が良い顔をしていないそうなのです。」
それは想定内だよ。
それで?
「そぐわない、それだけの理由で子供を害そうとする動きが有ります。
剣闘士の棟の警備なんてあってないようなものなので、一度返されては如何か。
外にお仲間が居ますか?
彼らに守って頂いた方が安全かと。」
そうだね。
分かったよ。
今夜からは俺の仲間に預ける事にする。
「そうですか。
それは安心ですね。」
ありがとな、ランド。
そういえば、ランドはランキングどうだったんだ?
「う…。
あまり良い順位ではありませんでした。
勝ったり負けたりですし、華もないですからね。」
そっか。
…強そうなんだけどな。
「いえいえ!とんでもない!
でも良い剣を頂いたので、これから頑張りますよ!」
うん。
じゃあ、俺はあいつら預けて休もうかな。
ごめんな、今日バタバタして疲れてるんだよ。
すっごい眠たい。
「いえ、それを伝えたかっただけなので。
では失礼しますね。」
…。
ふむ。
今夜かな?
襲撃は。
もうバレバレだよ、ランド君。
君が暗殺者か何か知らないけど脇が甘過ぎ。
そもそも神子だって気づいた時点でおかしいんだから。
暗い宿舎の更に暗い沢山のベッド。
そこ布団から少しだけ出ていた頭を見て誰か分かるもんじゃないよね。
そもそもなんで寝てるやつを見続けてたのかって話。
毒で死んだか確認したかったんだろ?
そしてその後の身の上話。
おおかた王国の件で俺の性格を分析した奴がいたんだろう。
懐に入る為につく嘘として出来すぎていたよ。
俺の薬と病気の子供。
噂で流れる神子様が同情しそうな要素が入ってるやね。
そして今だ。
なんでランドは仲間を彼らと表現した。
なぜ男でしかも複数いると考えたのか。
普通今の会話の流れだと、姉に任せては?
となるだろう。
だって直前に姉の話をしているのだから。
元々練った設定に添えなくなったんだ。
焦ったな?
貴重な情報が、弱みとなりそうな話を聞いて。
ティナを人質に取る気なんだろう。
ベッドでウトウトしていると、人の気配がする。
もうフレクサトーンはならないが、ほんの少しだけ敏感になっている。
お、ランドがこっちに来てくれて助かるよ。
他のヤツだと仕込みがないけど、お前にはあるんだよ。
さ、俺があげた剣で刺してこいよ。
最高の剣なんだぜ?
普段は腕輪だから、暗殺者向けだろ?
切れ味もばつぐん、ギコギコはしません。
そして何より、ヤイシャが言ってたんだ。
「その剣は懐く」ってな。
ランドが剣を振り下ろした瞬間、剣が1人でに曲がり、ランドの腕を斬り飛ばした。
「なんだと…。
なんだ、この剣は…。」
これ?
名前をつけてあるんだよ。
獣剣リオン。
厳密にいえば、こいつは剣じゃ無いみたいなんだ。
神様に聞いたんだよ。
これは神獣の卵、幼体の様な物らしくてな。
ヤイシャって神獣の一部だ。
次代の神獣で、現神獣から株分されたような存在らしいよ。
俺もよく分かってないけど。
俺によく懐いている可愛いやつさ。
だから、頼んだんだよ。
元々疑ってたから、お前についている様にって。
その内殺しにくるからってさ。
「くそ!
…しかしお前の姉は今頃我らの仲間に捕まっているぞ!
ははは!」
無理だと思うなぁ。
龍が2体にクソ強ショタコンドラゴンが側にいるんだぜ?
この世の誰がその中の1人を拐えるって言うんだ。
ティナも弱くないどころか、夜のティナに勝てる奴の想像がつかない。
昼は普通の女の子だけどさ、死魔法の天才で、死霊のアイドルなんだよ。
誰にも気づかれて無さそうだけど、常時200体程度を慰撫し続けているのだ。
成仏させたらまた次を連れてきてさ。
ずっとね。
俺とかアンヌよりよっぽど聖女だよ。
龍と龍と竜と200体のアンデッド。
生きるラストダンジョンを連れ去る事が出来る相手なら俺が出来ることはなーんもない。
素直に殺されてやるよ。
「あ、やっぱり大丈夫だった?
念の為見に来たけど。」
お、ピリルル。
まぁね。
元々疑ってたから。
「何だと!
我が部隊は…!」
さあ?
「とりあえず捕まえたよ。
何人かは生きていると思う。
ねーちゃん手加減下手だからなぁ。
って言うかラルフ!
ティナさん信じらんないくらい強いんだけど。
なにあれ。
黒い竜巻みたいなやつで、連絡係みたいな離れた人まで全員捕らえちゃってたよ。」
そうなんだよね。
あれヤバいんだよ。
気力を削がれるし、単純に威力もすんごいし。
「バカな…。
クソ!
クソ!
…。
起動しない?
何故だ!」
あ、爆弾?
真空で包んであるよ。
後でリオンに食べさせようと思ってさ。
コイツ武器を食べるらしくて、爆弾も武器でしょ?
おやつにいいと思ってさ。
さ、吐いて貰うよ。
誰が主犯なのか。
暗殺者は口が固いかな?
関係ないけどね。
最悪死霊になって貰えば、うちのマドンナが何とかしてくれるし。
死霊にして、捜査資料にしちゃうぞ!
なんちゃって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます