第143話 ティナは今
ところで、うちの姉は?
「あぁ、金策もいい感じだからって土地を確保しに行ったよ。
ラルフが使わなくても商会に使えるからってさ。」
いやいや、まだ大金とはいえ1200万くらいでしょ?
手付金でギリギリじゃない。
種銭も必要なのに先走り過ぎだってば。
「え?
言ってなかったね、そう言えば。
ティナを連れて戻ってくる時に商会のお金を引っこ抜いて来たらしくてさ、最初に掛けたのが金貨300枚なんだよ。」
3億円…?
それでそのまま倍々になってんの?
12億…?
張り過ぎだってティナ。
その額聞いてたらキャオに負けてたかもしれないよ。
プレッシャーでさ。
「それで200枚くらい使って土地決めてくるってさ。
どのくらいの広さなんだろうねー。
ラルフが負けるわけないから、全財産張りたかったらしいんだけど、流石にすぐには引きだせなかったんだって。」
土地だけで2億…。
工場でも作るの?
…いや、上手くいっているなら良いんだよ。
しかし、僕の闘技場ランキングがスルスル上がっていった理由がわかった。
馬鹿みたいな太客が付いているからだ。
10万を1000人に賭けられても追いつかないんだから。
お父さんにお金送ってもらう理由も無くなったな…。
しっかしこの闘技場はそんな大金吐き出せるなんて凄いな。
…俺が神子を隠して参加して、直訴されたら困る事があるから、暗殺されそうだと思ってた。
でも、もしかしたら単にお金を稼ぎすぎてるのが問題なのかもしれない。
勝ち過ぎだって姉上。
考察がブレる。
でもまぁ、犯人は分かってるし手は打ってある。
そっちはなーんの問題もない。
どうせ死なないしね。
元気があれば何でも出来る。
「お金はまだ稼ぐ?
正直やり過ぎたよね。」
どうしようかな…。
金稼ぎにティナを呼んだのはこんなとんでも金策をする訳じゃなかった。
少なくとも考えた時は金貨1枚を倍々に増やして1024枚くらいにして、子供達で何をするにしてもお金の運用が必要なので、ティナにはそれを考えて欲しかったのだ。
剣闘士になってからは、賭けられる金額がデカいとイコール人気選手という運営のシステムが分かって更にメリットがあるのだが、それももういらない気がする。
多分本当に稼ぎ過ぎた。
次戦は4棟のうちの一つのランキング1位。
全体2位の超強豪なのだ。
まだルーキー6戦目なのにだ。
ランドに聞いてみても前例がない速さだそうだ。
完全に目をつけられている。
今日で5戦終わったので途中ランキング発表がある。
細かいポイントや、入金額など細かく出るもので、はっきりその選手が何位にいて人気がどの程度かわかるのだ。
それ次第だが、もう闘技場では無難に戦えばチャンピオン大会に出られる気がする。
なのであとは趣味程度に賭けてくれればいい。
子供達の受け入れ準備を整えて欲しい。
「学園か、私塾みたいなの作るとして、トップが必要だけど心当たりある?
僕らも探ってはいるんだけど、殆どの人はあの子達に興味がないか嫌ってるんだ。」
んー。
何人かいるけど、市井の人では1人しか居ないなぁ。
ほら、ピリルルも見たでしょ?
僕らを警備してた兵士のあんちゃん。
「あー!
確かにね。
分かったよ。
彼はこっちで探しておく。」
うん。
ありがとう、ピリルル。
じゃあ俺はもう戻るわ。
ティナによろしくな。
こっからも闘技場で試合に出るけど、無理な金賭けんなよって言っといて。
あと、何するかわからないけど、くれぐれも!
くれぐれも俺を宣伝しないでって。
頼んだよ!
帰り道に剣闘士のグッズショップのようなところがあった。
この国では前世で言う野球選手とかサッカー選手のような感じらしく、姿絵とかが売っているようだ。
もしかしたらこういうのの売り上げもランクに関係あるのかもな。
…あれ、ティナか?
めっちゃ買ってる…。
いや、違う…。
逆だ!納入してる…!
もしかしたら両方か?
「あっ!ラルフ選手だ!」
やべ。
ファンか?
はい、こんにちは、ラルフ選手ですよ。
あ、ティナと目が合った…。
「ラルフ!
久しぶり!
会いたかったよ。
いきなりで悪いんだけどさ。
これにサイン書いてよ。
あそこに飾って貰うから。
あとこれ、次着て戦ってね。
ごめんね!
忙しいから行くけど、応援してるからね!」
えぇ…。
ピリルルにお願いした事が無駄になったな。
応援どころか、運営し始めてる…。
「ラルフ選手、僕にもサイン書いてよ。」
ん?
おー、いいよ。
君が今日話した人の中で一番心が安らぐよ。
悲しいことに。
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