第142話 SAN値チェック失敗しました

「いや、いいんだよ。

ラルフが最善と思ったならさ。

確かにアレは一つ村を作り上げて、尚且つその村を強くした。


でも僕を餌にする事はなかったんじゃないかな?

とは思うよ?


いいかい?

今僕はねーちゃんとアレと一緒にいるんだよ?


代わるかい?

僕が闘技場に行っても良いんだから。

ティナとアレと一緒にいたらいいさ。」


あの、ほんとすいません。

もう合流してたんすか…。


仲良く出来てる?


「最初は殺し合いでも始まりそうだったけど…。

今は意気投合してる。


本当に辛いんだ。

ずっと僕の話をしているんだよ。

見て、この服。

ラルフは知らない服でしょ?


これ今日8着目だから。」


おぉ…。

ごめんよ。


「でもギリギリ我慢出来てるよ。

他所の弟自慢をされてるティナがなんか準備しているからね。


まだ細かいダメージの方がマシって思えるから。

どデカい一撃が来るよりはさ。」


ひえっ…!


とりあえず会いに行こうか。

しかしこの状態だと大分身長差があるね。

肩車しようか?

半ズボンだし。


「いいかい?

僕は今、ギリギリ怒ってないんだ。

今君の首元に近づいたら理性が抑えられるとは限らないよ?」


…さ、無駄話はやめてとっとと行こう。


「…ぁあ…。

おっきくなってしまっている…!


いや、しかし美しい…!?

ピーたんも美しいから…。

イケる!


イケる!


イケるわ!」


…ピーたん?


「触れないで。」


ごめん。

こんな地獄に君はいたんだね。


「ピリルル、リナりんと話していたのだけど、成龍になったら名前が変わるでしょ?」


「うん。」


「私、思ったのだけれど、ピリルルってかわいいから、かわいいって名前が良いんじゃないかって。


それで、リナりんと相談したらそれは良いねってなったの。」


…叡智の龍かわいい。

龍王かわいい。


…。

ごめんよピリルル。

僕のせいでもあるね。


「…嫌だよ。

そもそも、婚姻相手が決めたりするじゃない。

ねーちゃん達に決める権利なんてないよ。」


あ、そうなの!

良かったね。

本当にギリギリ紙一重でよかった側に天秤が傾いてるよ!


「そうよ?

だからリナりんに相談したんじゃない。

リナりんに婚姻の儀の話をしたら、やってくれるって。

龍姫になってくれるって。」


…!

あ、良かった側に傾いた天秤が…。

でも!

まだ!

勝てば!

勝てばいいんだよ!


「強いお嫁さんが来てくれると嬉しいわぁ。

リナりんと国で一戦やって来たのだけれど、私より強いんだもの。

これでかわいいかわいいピリルルを守ってくれる女の人が見つかったわ。」


…そんな強いの…?

この変態…。

絶望感がすごい…。


あぁ、ピリルルが泣きそうだ。

とりあえずギュッとしておこう。

可哀想が過ぎる。

叡智の龍かわいそうになっちゃう。


とりあえず話題を変えよう。


リナを呼んだのは頼みがあるんだよ。

聞いてくれる?


「何でも聞いちゃう。」


あの、酷い目にあってる子供達を助けたいんだけど、助けた後保護するだろ?

それで教育者も必要なんだ。


リナ、頼まれてくれない。


「…うーん。」


ちなみに男女比9:1で今仲良くしてるヤツは吊り目の生意気そうな男の子だ。


「…!

う、うーん。」


もう一声か。

何年か見てくれたら、大丈夫だと思うんだけどね。


だから婚姻の儀を延ばさせて悪いんだけどさ、お願いしたいんだよ。


俺は初代リナリーンの腰を抱き寄せた。

顔が近い…。

頑張れ!

リナリーン一族はこれに弱いんだ。


頼むよ。

俺が頼んでるんだぜ?


「…なんでもやっちゃう!」


リナは叫びながら膝から崩れ落ちた。

…仕方なかったんだ。

ピリルルの婚姻をとりあえず先延ばしにするってミッションまで追加されてしまったんだから。


俺の足元で頭を抱えてるピリルルが


「お礼を言うべきなのかこんなに迷ったのは生まれてから初めてかもしれない。」


と呟いた。


「もう、悪い男ね。

でも私の旦那様になるんだから許しちゃう。

4人で仲良く暮らしましょうね。

ティナも喜んでくれるわ。

アンヌも連れて来ましょうね。」


…この龍まだ言ってるの?

あ、そうか、俺とピリルルが仲良くなればなる程諦めなくなるのか…。


「いろいろ合わせてお礼を言うべきかなって思えて来たよ。」


…とりあえず先延ばしに出来て本当に良かったよ。


「…そうだね。

良いことだけ考えよう。」


そうしよう。

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