第141話 アメ
今日は6戦目だった。
相手もルーキーで4勝1敗で、期待の新星同士の戦いとして注目を集めたらしい。
正直実力としてはキャオの方が明らかに強かったが、少し気になるところがある。
明らかに俺をメタる戦術をとって来たのだ。
いや、観戦して対策をするのは当然だと思うが、言ってもまだ5戦しかやってないし、剣がちょっとだけ伸びたり縮んだりするのも、バレる程の実力があったのはキャオくらいだったし。
様子見で下段斬りから入る癖もしっかりバレてた。
極め付けは魔法を解除する剣を使っていて一撃も貰うわけにはいかない状況になった事だ。
…まだ疑いの状況だったが、完全に毒殺したりする暗殺者が居るのもわかった。
俺が神子だと分かって、闘技場に出られるのが不都合な人間が居るってこと。
いや、バレバレなのは気が付いていたよ。
名前も変えてないしね。
ま、でもこんな程度の相手をぶつけて来てもダメダメ。
龍でも連れてこいっつーの。
チラッとピリルルを見ると、指を6にしていた。
勝ったから1200万円か?
えげつないねー。
さて、今日はこの後が本番だ。
「だから他の棟の奴を気軽に呼び出すな。
いや、俺も用があったから良かったか。
ほら、剣だ。
ちゃんと二振りな。
本来こんな早く仕上がる事はないんだが、親方がノリに乗っててな。
見てくれ、俺の刀もきちんと仕上がってきた。
美しいだろ?
この刃紋!
銘は雨とした。
良いだろう?
好きなのだ、雨の日が。
空は曇っていても、この剣の凛々しさは陰らない。
そう願ってな。」
お、おう。
良かったじゃ無いか。
2枚で一振りにしたのか?
「ああ、鞘も竜にしたのだ。
居合だがな、こいつを走らせる鞘はそこらの素材じゃ無理だった。
そういえば、昨日竜が目撃されたらしいな。
この刀の試し斬りをと思って討伐隊に話を聞いたが見失ったそうだ。」
あー、あぁもう来てたのか。
早いな。
っていうか、自由に竜に変身できるようになったのかあの変態。
厄介さが上がってやがるぜ。
「あ、所で何のようだ?
わざわざ誰もいない所へ呼び出して。」
お前、子供がいるぞ。
「は?
どういう事だ。
心当たりがないわけでは無い。
剣闘士になって女を貰った事があるからな。
でも、乱暴な事はしてないし、物として扱ったわけじゃない。
もしそうなら連絡くらいくるだろう。
恨まれてるわけではないし、責任は取れるのだから。」
いや、まぁやることやりゃあ出来るんだから可能性はあるよな。
この国ではな、剣闘士の子供はなかった事にされるんだ。
生まれてからすぐ放置される。
別の子供が保護して集まって過ごしているが、居ないものとされているんだ。
「なんだと?
…俺にもいるのか?
子供が。」
おそらく、としか言いようがない。
その子供達の中に、お前によく似た奴が居る。
それが確実にそうとは言い切れないが、気になったんだ。
で、どうする?
「どうする…か。
俺も孤児で天涯孤独だからな。
引き取る気はあるよ。
でも…まぁ子供次第だろうなぁ。
孤児だったから、わかるんだよ。
親が急に出て来てもいいことばっかりじゃないってな。」
うん。
アイツらもそう言ってたよ。
だからさ、会いたいなら会わせてやるし、無責任な父親をぶっ飛ばしたいなら鍛えてやるって言っといたから、その時はぶっ飛ばされるからな。
「はっ。
それがいいな。
楽しみだ。
とにかく俺は、保護する気はある。
それだけはお前が分かってくれたら今はいい。
もし会いに来たらいつでも呼び出して構わない。
何よりも優先する。」
あぁ。
ありがとな。
「あぁ、こちらこそ。
ではな。」
とりあえず1人話を聞けたのがキャオで良かったな。
良いやつだから。
馬鹿な事言い出したら俺がぶっ飛ばしてたよ。
…聞いてたか?
どうする?
「…わたし、女だけどぶっ飛ばせるようになる?」
なる。
「じゃあ頑張る。
あなたも…レッドも手伝ってね。」
「おー。
頑張ってぶつけような。
ラルフ、こいつには名前やらないのか?」
親父が一番大切なものにつけた名前がある。
ちょうど良いだろ?
「わたし、アメって名前にしたら良いの?」
とりあえずな。
気に入らなかったらぶっ飛ばしてもっとかっこいいのにして貰おうぜ。
「うん。
頑張る。」
うし。
レッド、アメを俺の部屋に案内してくれ。
ピリルルと会ってくるから。
とりあえず今覚えている分の勉強を教えてやれ。
お前の最初の仕事だ。
頑張れよ。
「おう。
行こうぜ。」
さ、俺も友達に会いに行くかな。
…怒ってるかなぁ…。
ショタコンドラゴン呼び出すのに名前出しちゃったからなぁ。
怒ってるよなぁ…。
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