第140話 猫の手も借りたいなら

無事5連勝をかまし、個室の権利と従者を持つ権利を手に入れたので、レッドを呼び側に付けることにした。


「なんでオレなんだよ。

こないだ隣にいたメガネのやつでいいじゃん。

オレが来たってなんも出来ないぞ?」


いいかレッド。

俺はお前を買っているから、頼みたいことがあるんだ。

従者の間は給料も出すし、頼み事を聞くかどうかはお前が決めていい。


お前ら名前がなく、戸籍もない存在も認められてない子供達をお前がまとめろ。

そのための知識とか戦い方を教えてやるから、それをお前が下に教えるんだ。


俺は正直お前らが気に食わない。

いや、お前らに対する周りの反応が気に食わない。

世界から無視されなくしてやる。


「何でそこまですんのかわからないよ。

オレはもう慣れてるからさ。

でも、下のやつか。

チビたちが普通に働いて、普通に過ごして、普通に結婚とか出来るなら、オレは頑張る。


頑張れると思う。」


そっか。

じゃあまず文字と計算からスタートしような。


「うん。

あれ?

剣奴なんだから剣から教わるもんだと思ってたよ。」


いや、どう生きていくにしても役に立つだろうから俺もそうしようと思ってたんだけどさ。

レッド、髪が灰色系で黒眼のやつ、お前の仲間でいたか?


「あー?

居るよ。

俺よりちょっと下の歳のやつで。


そいつがなんかあったか?」


連れて来れるか?


「聞いてみるよ。

オレはとりあえずあんたを信用する事にしたけど、オレらは知らない奴を信用しないぞ?


なんの用か教えてくれよ。

頼み事をする時は裏も隠し事もなしってのがオレらのルールだ。」


おー。

いいなソレ。

そのルール。

俺とレッドの間でもそうしようぜ。


そいつの親父の可能性のある奴が居るから会わせてやりたいんだよ。

俺もその子を見てないから絶対そうだとは言い切れないんだけどね。


やっぱり本人も子供が出来ている可能性に気がついて無かったんだ。


「そっか…。

わかったけど、来るかは分からない。

オレらは親父って言われも困るんだよな。

そういうの一回も無かったし、周りもおんなじだからさ。


つまり、うーん。

例えば親が見つかってそいつと暮らす事になったとするだろ?

アンタらからしたら普通な事だし、良かったじゃんってなるんだろ?

でもオレらからしたら生まれてからずっと一緒だった仲間を失うことになるんだよね。


オレはアンタを信用して賭ける事にしたけど、やっぱりよく思わない奴もいるしな。

オレらが上手くやっていけるようにって考えてここに来てるけど、アイツだけ上手くやりやがってとか、オレらを捨てやがってって考える奴もいる。


わかるかな?

だから自分で決めるしか無いんだよ。

無理矢理は連れて来ない。

それでいいか?」


あー。

それでいいよ。

じゃあ、会いたくはないけど、ぶっ飛ばしたいなら剣を教えてやるって伝えてくれよ。

だから、その話が終わるまでレッドも剣はお預けな。


「別にいいだろ。

剣くらい今から教えてくれても。」


…いいか?

剣を教えるのなんて、暴力を教えるのと変わらない。

今まで抵抗出来なかった、お前らが全員人を害せるようになるんだ。


レッドを信用してないわけじゃ無い。


でも周りはまだ、お前らを信用してない。

だから1人で始めるな。

師をつけて2人で学べば、歯止めが効かなくなった時どっちかが止めてくれる。

わかるか?

大事なことなんだ。


理不尽には、抵抗していいと思う。

俺はね。

だけど、お前らが強くなった時に逆に理不尽を強いた時、それを止める奴が必要なんだ。


「…わかるけどよ。

ちょっと1人で考えてみるよ。

わかるような気はする。

わかってないような気もするから。


とりあえず、帰ってそいつと話してみるから、来るようなら明日連れてくるよ。


…勉強を教えて欲しいやつは一杯居るかもしれない。

そいつらにも出来れば教えてあげて欲しいんだけど。」


そいつらに教えるのはお前の仕事だ。

言ったろ、頼み事があるって。

それか、お前らの中でそういう人に物を教えるのが上手いやつ、慕われてるやつなんかに話をしてもいい。


とりあえずお前らのことはレッドから聞くことを全部信頼する事にしたから、お前が決めろ。


「あ?

人探しが頼みじゃないのかよ!

…まぁいいよ。

全員で生きて来たんだ。

何となくはわかるよ。


明日多かったら5人で来ると思う。

頼むな。


…ありがとな、ラルフ。

じゃ、また明日。」


さ、もう1人呼ばないとな。

そっちは来るだろうし、武力も指導力も文句なしだ。

村一つ強くした実績があるしね。


問題はもちろんあるけどね。

来るって言いきれる理由が性癖だからなぁ。


でもまぁ、適材適所ってヤツだな。

幼いうちに鍛えて貰えばいいさ。

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