第138話 身バレ

うわ、やっぱり子供の姿で戻っちゃったよ。

寝るところくらい個室にして欲しいね。

誰にも見られて…は…

あ、目が合った。


とりあえず魔法は掛けておこう。

なんか言ってきたら誤魔化す、そうしよう。


「…神子様?」


…。

知らない人ですね。


「まさか!

貴方は!」


しーっ!

大きい声出すなよ!

話は聞くからよ。


「何故こんな下賤な所に…。

いや、私如きが詮索してはいけませんね。


しかし光栄です。」


いや、いいよ別に普通で、そんな気にしないでよ。

知ってるかな?

ここって褒美に女の人を一晩貰ったりするでしょ?

それで、ここの外にはその女の人達が産んだ子供達がいる。


「なんと!

私も何度か優勝しておりましたが、自分を買い戻す為に金銭にしておりましたので存じませんでした。」


マジかよ。

アンタ、何でそんな借金してんだ?

真面目そうなのに。


「子供の治療費です。

貴方が最近開発なされた、小児性魔力過多症の治療に金が必要だったので。

おかげで子供は助かりました。

本当に感謝しております。」


…は?

おい、それいくらかかったんだ?


「金貨10枚です。

最新の治療だからと。

いや、しかし子供の命に比べれば安い物でした。」


…ふざけんなよ。

薬と魔法の維持代を取るのは否定しない。

人が動くし、薬もタダじゃ無いからな。


でもな、薬なんて元々捨て値で売られている毒だし、割と簡単に作れる物だ。


概算はティナと出していた。

初期投資たけで銀貨1枚くらい。

これは空調の魔道具の金額だ。


魔力排出薬は、元々毒なのでタダで配る事にした。

ただし教会に紐づけて、必要な所へ処方する形にしたのだ。


あぶねーから。


その手数料は取っていい。

そんなに頻出する病気じゃ無いが、保管や維持の手数料で一件銀貨1、2枚は取っていい。

人が必要だからな。

それは当然だ。


だから想定としては初月3万円ほど。

継続が必要な場合に月1、2万くらいだとしていたのだ。


そう言って治療法と薬の製法を世界中に配った。

ティナシー商会と教会の力でな。


…それが1万倍の値段だと?

ふざけやがって。


「なんと…。

いや、しかし納得していたし、実際に子供は妻の元で元気にやっているので、良いのです。

送金も出来ていますしね。」


良い訳あるか。

子供は自分の手で育てられるならそうしろ馬鹿が。


…クソ。

この国に来てから嫌な事ばっかりだ。


…違うんだろうな。

王国で俺は守られてきただけだ。

家族に。


汚いものを見ないように。


うっし。

アンタ、名前は?

協力してくれ、とりあえずメチャクチャにしてやるから。

あと、普通に喋ってくれよ。

本当は13歳なんだからさ。

あれ、どうだっけ。

今何歳だ?


「ははっ。

神子様はもっと威厳たっぷりで偉そうだと思ってたよ。

わかりました。

仰せのままに。


俺はランド。

しがない元兵士さ。」


前も言われたな、それ。

兵士か。

戦う素養があったんだね、ランドには。


「それで、剣闘士には知らない子供がいる話でしたね。」


そう。

多分本人らは知らないんじゃないかと思ったんだけど、どうかな?


「知らないでしょうね。

剣奴の報酬は金か女か自由かですが、まぁ大体金ですよね。

金がないから落ちて来たんだから。


一部のもの好きが居座ったりしてますけどね。


なので、金を返し終わった記念か、借金なんてないのに剣奴になった頭のイかれた奴かのどちらかだと思いますよ。

その子らの親は。


なのでもう自由になってその後を知らないか、ここから出てないか、しかないのでは。」


なるほどね。


「ちなみに何人くらい居るんでしょうか。」


孤児も含めたら30から40人くらいかな。

思ったよりシステム化されてたから、歴史も長そうだ。


レッドだって12、3歳くらいにはなってるだろう。

同い年くらいだ。

だから最低でもそのくらいの年月続けられている事なんだ。


じゃあ連中に話を聞いて回ってもあんまり意味なさそうだな。


ランド、一つお願いしていいか?


「もちろん。

なんなりと。」


そのイかれたバトルジャンキーの中でもまともな奴とか、噂が好きなおしゃべりにさっきのやつ流してくれない?


「承りましょう。

なんか、ワクワクして来ますね。

悪巧みな感じで。」


わかる?

そうなんだよね。


んじゃ、そろそろ試合だから行ってくるわ。

次勝てば5連勝だから個室ゲット出来るかもな。


応援はいらないから、戻って来た時のハイタッチの相手にくらいはなってよ。


「はっ。

頑張れよ」


おー。

とりあえず勝ち続けなきゃ始まらないからな。


オッサンとのハイタッチをデザートにする為にメインを頑張ってくるよ。

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