第137話 指導者

五打数ノーヒット。

引き分けってところだな。


「よくそんなこと言えますね。

掠りもしなかったじゃないですか。」


いいんだよ。

これから沢山やるんだから、引き分けで。


「ははっ。

神になってから友達が出来た気分ですね。」


そうだよ。

楽しんで見守っててよ。


「また貴方をコテンパンに出来るようにしておきますよ。」


はっ!

剣が上手くなれば打てるようになるね!


「それにしても貴方、芸術系の能力を一つも活かせませんね。

勿体無いです。


次何にします?

歌でも上手くしますか?」


いやー。

元々美声だからさ。

いらないわ。


でも本当にそうだな。

多分元から才能がないんだ、俺には。

本質的なさ。


ならさカッコよく見えるようにしてくれよ。

今の見た目に不満がある訳じゃないのよ?


今回さー、可哀想な子供見ちゃってさ。

国のシステムごとひっくり返そうと思ってるんだけど、少しでも可能性ある方がいいじゃん?


革命の要素の一つだからなぁ。

キャッチーなキャラクターってのも。


「じゃあ更に愛されオーラでも出るようにしましょうか。

きゅるんきゅるんのやつ。」


そうしましょう。


「ちょっと久しぶりにラルフちゃん来たから寄ってみたら、何バカなこと言ってんのよ。」


え?

あ、タナちゃんじゃない。

久しぶり。


「久しぶりじゃないわよ。

二人ともラルフちゃんの状況よくわかってないでしょ?」


不本意にちょろっと名前が知られてる感じでしょ?


「ばっっっかじゃないの?

何でこんな旅しなきゃいけなくなったと思ってるの?


貴方一人で今の教会の人気を超えてしまいそうだから、ラルフィード様の軌跡をなぞってるんでしょ?」


おい聞いた?

ラルフィードの人気越えちゃいそうだって!


「えー現世に降りちゃいましょうかねぇ。

悔しいから。」


「ふざけないで聞いて。」


ごめんなさい。


「もしラルフちゃんが変に愛されて、冗談で言った言動で戦争が起こる可能性もあるのよ。

今だって危ういのに。」


そんなに?

俺は医者として働いた以外はほとんど巻き込まれただけだろ?


「ラルフィード様が悪い訳じゃないけど、長い年月で教会って組織を嫌っている人は沢山いるのよ。」


それは分かるよ。

そういうもんでしょ。

善良にやってても不利益を被る奴はいるもんだ。

そういうのの積み重なりと、利益を取る奴が目に見えたらそうなるもんだよ。


それの規模がでけーのが問題だってね。


まぁ、本気で愛されオーラとか、更にカッコよくとか言ってないよ。

タナちゃん。

戯れてただけだよ。


ね?


「え?」


え?


いやいや、怖いよ。

本当は必要な能力あるからさ。


教育とか、指導とか、そういうのが欲しい。

俺は無理矢理詰め込んで色々突破したタイプだから効率が悪いんだよ。


それも一つの方法と言うか、ダメな訳じゃ無いんだけど、向き不向きが強すぎる。


「わかりました。

では今回の能力は指導です。


頑張ってくださいね、ラルフ。」


おぉ!


まずは個室待遇になって従者を入れられるようにしねーとな!






「…ね、指導も不味くない?」


「何でですか?

あの子は、名前と戸籍がなく、存在を許されていない子供達に教育するつもりなんですよ。」


「いや、それを否定するつもりは無いわよ。

貴方の力で指導って…。

成長を促したので終わればいいけど。


あの子、なんか傾倒されるところあるから。」


「あはは。

たしかに。


…不味いですかね?」


「さあ?

まぁ、1人に教えるくらいなら平気なんじゃ無い?」


「そうですね。

ま、その子がラルフの力になってくれたら何でもいいんですよ。

私は。」

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