第136話 旧交を深める

本当に勝てて良かった。

実際のところ3戦目にいきなりランカーを当てられてしまったのだ。


今期のランカー発表はされていないが、前回7位の強豪だ。


別の大会で優勝してから乗り込んできた戦士で、もう普通に強かった。

しかし、剣闘士と言えどやはり魔法を使って戦うので、それ込みだと圧勝と言っていい内容だった。

シャルル、ペリンの剣特化型との試合は今となれば相性がいい。

何故なら、妖怪ジジイを想定してトレーニングを長い事してきたので、単純になれている。


あの爺さんは未だに戦った人間の中では飛び抜けて強い。

人間形態とはいえピリルルから取ってしまうんだから、ヤバすぎる。

技術で龍のパワーを超えているのだ。


また強くなっているんだろうなー今頃。


と言う訳で楽観的に乗り込んだ大会だ。


4戦目はうちのパパンタイプ。


魔法をメインに戦う相手だった。


これまでそのタイプと戦った経験はリナリーンしかおらず、土特化型だったので今回の色々な属性を使うタイプに戸惑った。


しかし、装備の差がえげつない。

左手の腕から手のひらにかけて覆った鎧は龍のもので、右手の剣は獣神のものだ。


人間が放り出す魔力に負けるわけもなく、腕や剣に当てるだけで守れてしまう。

濃密な魔力が打ち消してしまうのだ。


剣の腕前は大した事なかったので、魔法の嵐の中を無理矢理突破して勝利した。


何戦かやったし観戦もしたが、俺がおかしいだけで、この世界の人間はバフデバフを軽視しているのか、使われた様子がない。


無魔法も死魔法も、愛魔法も失われかけているらしいが、他に代替する魔法が存在しているのだと思っていた。


しかし使ってくるのは風魔法で素早さを上げる程度なのだ。


不思議な発展してん

だなーと思うが、戦いなんて一対一で始まる事なんてこういう興行でなければそうそうなく、デカい火をぶち込んだりする方が、実用的なのだろう。


俺は何故かタイマンばっかりだったから、それ専用のスキルセットになっちゃってる。


各々の技術で負けていても、タイマンなら何とか何処かで勝る。

そんなオールマイティな成長をしているみたいだ。


現在地を知れたことはデカい。


俺はタイマンに強く、大きな大多数は大したことなく、搦手は分からないが、暗殺にはすこぶる強い。

死なないんだもん。


暗殺なんていつされたのかって?

今だ。

今されている途中だ。


というか、今夜の飯の中に毒が入ってる。

いま口に入ってる奴だ。


診察で見てみると、なんか2種類の毒物の混合の様だ。

正直聖魔法で治せるんだけど、大人の姿で神様にはしばらく会ってなかったからこのままでもいいな。

とりあえず寝床にだけ入っておこうかな。


工作もし終えてるし、能力が変わっても問題はないしな。


びっくりさせよう。


「びっくりさせようじゃないですよ。


大人の姿で死んじゃって、どうするんですか戻る時に。」


え?


「子供の姿で生き返るか、その大きさで固定されるかどっちかになりますよ。」


あ、そっか。

俺の生き返るって特性を活かして子供の大きさで帰るか、お父さんが若返ったのと逆のパターンしかないのか。


「もー。

深くかんがえなかったでしょ。」


いや、念のため寝床で死んだって。

ごめんな、神様。

やりたかったんだよ、神様とキャッチボール。


「んふふ。

そうですね。

やりましょうか。」


前世で死んでこの世界に来てすぐ、結構長い事迷っていた時間に神様と戯れに始めたキャッチボールなんだけど、なんかいい思い出になってたんだよね。


そういえばさ、変化球覚えた?


「すっごい練習して一球種だけ覚えました。


一番簡単そうなやつを選んだんですけどエラい難しかったですね。」


何だろう。

俺は獣神の腕輪をバットの形にして構えた。


投げてみてよ。

打ち返してやるからさ。


「いいですよ。

本来はこうやって遊ぶ物でしたね。


いきますよー。」


何だよ。

手投げじゃねーか。


遅い…けど、うわっ!


打てないかも。


無回転だった。

ナックルを一番初めに練習すんなよー。

変な奴だなー。


初めて無回転見たけど、これ揺れるとか落ちるとかどうより距離感が分からないのね。


「あら?

あらあら?


野球好きなんでしょ?


キャッチボール経験しかない私に負けるんですか?」


うがー

絶対打ってやる!


来いよ!

格の違いを見せてやるぜ!

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