第135話 消えた神子
「神子様が消えた?」
見張り達はある瞬間それに気がついた。
出入り口は昼夜問わず見張り続けていたし、全員からの異常はなかった。
同行しているらしい彼の友人の姿は先に無くなっていたが、昨日は規則正しい生活を送っていたらしい。
しかし、今朝になって完全に姿を消した。
二人ともだ。
…
……
………
いやぁ、いい事をした後は気分がいいが、イタズラした後も気分がいいね。
あの後ピリルルに無魔法をかけて小さい俺に見えるようにして、少しの間過ごしてもらった。
今頃は預けたものを持って一度龍の国へ行っているだろう。
助っ人を連れて来てもらわないとね。
俺らが苦手な金勘定のできる、我が姉を。
俺?
俺はもちろん闘技場にいるよ。
「アンタみたいな不便してなさそうな奴が剣闘士になりたいとか頭おかしいのか?」
受付で言われたセリフだ。
「とりあえずレッドにする事にした。
しっかしなんで、こんなことするかね。
頭おかしいんじゃないの?」
これはレッドと名乗る事にした、少年から頂いた言葉だ。
「いや、見なかった事にはするけどさ、アンタ頭がおかしいんじゃないっすか?」
これは兵士のあんちゃん。
「ラルフらしくていいと思うよ。
色々考えるけどどっかでヤケになって結局ブン殴りに行く節あるもんね。
じゃあ僕はラルフのカモフラージュを半日してから、金策の為にティナ姉を連れて来るかな。
せいぜいそれまでに大金を賭けられる存在になっておいてよ。
あ、一応ソレも預かっていい?
ばら撒いておくから。
頑張ってね。」
さすが友達。
話が早い。
ばら撒きもお願いね。
と言う訳で剣闘士になった。
剣闘士には2種類ある。
戦士と剣奴だ。
前者は腕試しと名誉の為に大会に出る人たちだ。
普通は大体こっち。
普段は兵士だったり騎士だったりする人達。
俺の周りの人達では、ブランドさんやルーベンスさん、ララさんと妖怪シャルルがこの括りだ。
後者はなんかやらかして罰として戦う、戦闘奴隷だったり、戦争捕虜の末路だったりそんな感じで、日常的に行われる賭けの為のコマだ。
ランキング制で上に行けばある程度人気が出たりするらしいし、好んでこちらで登録する物好きもいるらしい。
当然今回俺は後者で登録した。
理由が3つとメリットが2つある。
まずピリルルの金策を手っ取り早くする為だ。
上位ランカーの試合は大金が動く。
そんでレッドの親父達と会って話がしたい。
なーんも知らないが、知れば気にする可能性もある。
そして、今から1ヶ月半後にデカいチャンピオンを決める大会が開かれる。
剣奴からも上位8人が出られるのだ。
戦士で登録したら、まず推薦が必要だし、何処かの大会で優勝の経歴がいる。
推薦はペリンでもシャルルさんでもどっちでもくれそうだし通るであろう名前だが、優勝が無理だった。
デカい大会の間に他で大会が開かれていないのだ。
一方で剣奴登録は400人程度で、現役バリバリは180人ほど。
人気と戦績でランキングが決まるっぽいが、今季は始まったばかりで勝てば上がれるし、期待のニューフェイスがランキングを駆け上がるのは珍しくない。
そして、神にもらったビジュアルはこの世界のウケがいい。
大人の姿は尚更らしい。
賭け金が集まる奴は例外的にランキングが優遇されたりもするらしいのだ。
要は見た目が良くて派手な試合で勝てばチャンピオン大会に出られる条件に間に合うのだ。
この国に慣れている奴らからすると、好んで剣奴は頭のおかしい奴って事だね。
時間を掛ければ戦士の方が待遇がいいままチャンピオン大会に出られるのだから。
チャンピオンにはこの国王への直訴権がある。
普通は褒美を願うそうだが、俺は色々準備しておこう。
なにせ今の俺の能力は工作だからな。
裏作業や根回し、嘘や真実のばら撒きも工作と言うのだから。
そうして誕生した剣奴は、薬で伸ばした綺麗な長い金髪に、整いすぎた容姿、見たことのない素材を使った剣を持ち、鎧も最小限の右手首と左腕のみの攻撃偏重ストロングスタイルで、見事開幕3戦を圧勝し人気を博していった。
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