旅 闘技場にて、フォークロアと

第131話 Where's Ralph?

西のへ飛んでいった僕らは、大きい海沿いの街へと辿り着いた。

徒歩で行く予定だった旅程では4つ目に辿り着く予定だった街だ。


王国からここまでは徒歩だと2週間くらい、馬の様な生き物を全力で使えば4日ほどらしい。


この街には是非寄りたいと思っていたので、逃げた先にあって本当に良かったと思う。


金欠過ぎるのだ。


とりあえずポッケに入れた初代リナリーンの鱗が10枚くらいあるので、それを売ろう。

竜なら売れるでしょ。


門のところには兵士がいて、少し人が並んでいる。


僕らは列に並び、順番を待った。

ガキだけで並んでいるなんて、カモだぜ!

有り金全部よこしな!

みたいな事はなく、逆に前に並んでいたお姉さんに飴を貰ったりして平和そのものだった。

しかし、最近年上の女の人にいい思い出がなさ過ぎて、貰った飴を口にいれる気持ちがどうしても沸かず、食べたふりをしてやり過ごした。


ピリルルはやばいお姉さん耐性がつき過ぎているのか、普通に食べていた。

すごい!


順番が来ると、門番の人に身分を証明できる物はあるかと聞かれた。


…初めて聞いたなそんなこと。


とりあえずカバンに入っている、出発前に絶対に持って行けと言われた、いつ貰ったかも分からない紋章類をジャラジャラと出すと、門番の人が固まった。


一人が僕らを詰め所の奥の豪華な部屋へ連れて行き、もう一人が何処かへ走り去って行った。


どれだ?

どの紋章のせいで変なことになったんだ?

10個くらいあるから全然把握してないのだ。


もう一度カバンをゴソゴソすると、紋章を包んでいた紙が剥がれて入っており、よく見るとそれはお父さんからの手紙だった。


「最愛の我が子ラルフへ


恐らく次の町で必要になるであろう紋章だが、緊急時以外提示すると面倒な物を記しておく。


それと別に無難で一番提示しやすい物だが、銀色の白い花の意匠が付いただけのもの。

これは単に聖職者を表す物なので、修行の旅だと言えば面倒にはならない。


さて、お前の紋章だが3つ程とんでもなく面倒になりそうなものがある。


一つ目。

白い花の意匠に、剣と祈る女の人が描かれている物。

これはお前だけの、神の子の紋章だ。

個人をどうしても証明しなくてはいけなくなるまで使わない方がいいだろう。


二つ目。

丸に太陽を模した紋章。

これは王国の紋章で王家からの礼で渡される物だが、権威が凄まじいので絶対に見せるな。

相手が王族の時のみに見せる物だと思っていい。


三つ目。

丸に太陽を模した物に、月が追加されている物。

これは王族が大切に保護している、ほぼ王族として扱われる紋章だ。

何故かは知らないが、王妃様から急に付け届けられた。

これも二つ目と同様だが、それより重い。


もしお前がちょっと悪口を言われた程度でもこの紋章を出すと相手の首と胴が離れる。


そういう物だと思って欲しい。


他の6つは俺やシャルルやペリンからの個人的な保護者印みたいなものだ。

お前が問題を起こしてしまった時はこれを出せばなんとかしてやれる。


文化が違うと善良に過ごしていても巻き込まれることもあるかもしれないからな。

その時は遠慮せず使え。

必ずお父さんが何とかしてやる。


お前の旅の安全と幸せを祈っている。


父より。」


いやもっと早く言ってよ!

出掛けとかに手紙を書いたから読む様にとか言ってさ!

わかりにくく手紙をわざわざ包み紙にして…。


恥ずかしかったんでしょ!

うわぁ…。

全部出しちゃったよ。


そりゃ誰か上の人呼びに行くって…。


遠くから怒号が聞こえる。

大慌てなのだろう。


「なんかいつも通りだね。

ラルフが王国内を出掛けると、どこもこんな感じだったから。」


…え?

知らないよ?

普通の一市民の子供として過ごしてたと思うんだけど。


「いやいや、ははは。

白い服を着た人とか、それ、その花の紋章の盾を腰から下げた人とかが周りにいっつも居たよ?」


…嘘でしょ?


「ほんとほんと。

言ったじゃない。

街の人がどこにいるか話してるから見つけられたって。」


言ってた…!

王国で会った時言ってた!

その後自分モチーフのトレーディングカードっていう呪物を見せられたからスルーしてた!


「来る時だって流石に森には犬が探してるだけで人は居なかったけど、王国から森までの道にもいっぱい居たしね。


あ、あとへんさんいんって呼ばれてる人もいた。」


へーサーウィン?

知らない人だよ。


有名な人?


「編纂員だよ。

本の編集をする人。」


ふーん。


「ラルフの本が作られ始めているよ。

偉い編纂員を入れたマジなやつ。」


ふーん。

やめよう。

もう、この話は。


神様が凄く嫌がってたのがわかるよ。

良かった!

森で撒けて!


「でも紋章出しちゃったなら来るでしょ。

大急ぎで。


いま下手したら世界中で探されてるよ、ラルフ。」


口に出して言わないでよ。

赤白ボーダーでも着てメガネでもかけてやろうか、もう。

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