第126話 腐れ竜

人間だって?


そんなバカな…。


「少なくとも竜じゃないよ。

竜なら龍の僕を前にあんな態度は取れない。


躾済みだからね。」


…ちょっと詳しくは聞きたくないけどわかった。


でもあわあわしてるよ?

普通の状態では無いんじゃない?


「あの感情は僕には分からないけど…。

なんか不快な気はするね。」


そう言ってピリルルは竜?を睨む。


相手が何だとしてもやはり龍は怖いのか、プルプルし始めた。


ピリルルは上裸の僕にシャツを掛けて、庇う様に引き寄せた。


「お前がどう言う魂胆かはしらないけど、僕の友達に何かしたなら許さない。」


かっこいいよピリルル!

今まで姉がずっと居たからそう思った事がなかったけど、男らしい所もあるじゃない。


竜はこっちを見たままプルプルを超えてガクガクしている。


怖いのか!

怖いなら目的を言ってくれ!

何で僕を拐ったのかを!


竜の動きがピタッと止まった。


なんだ!

バレたからには実力行使か?

今度は僕がピリルルを庇う。


僕は死ぬのが怖くないからね。

最悪盾になるよ。


「やめてよ!

ラルフ。

僕は龍で頑丈なんだ!」


いいから。

任せて。


僕らの気迫に負けたのか竜は動かない。

もう石みたいに固まっている。


もう一度ぐいっとピリルルの盾になろうとした瞬間、竜が大きく息を吐き出した。


来るか!

と思ったが来なかった。

竜は血を吹き出して倒れてしまったのだ。


えぇ…。


竜の変化が解けると、女の人に変化した。

竜の身体ではどこから血が出ていたか分からなかったが、人に戻った事でありありとわかる。


鼻だ。

鼻血でした。


「人間のことがよく分からないから教えて欲しいんだけど、これは…元々病気になっていたとかそんな感じなの?」


…おそらく病気だ。


しかしピリルルの想像する身体の不調の病気じゃなくて、なんというかもっと業の深いタイプの病気だ。


クソ!

なんでこの世界の女の人は何処か少しおかしいんだ!


そりゃあ普通の人のアンヌが聖女扱いされるよ。



よく考えたら推理する材料はあった。


巣にあったカードのボックスは第二弾のみ。


ボックス買いするほどのヘビーユーザーなのに、第一弾はなかった。

ちなみに第一弾のタイトルは、神の子と聖女だ。


おそらく、認めたくはないが解釈違いというやつだ。


そしてボックス買いした第二弾、神の子と叡智の幼龍。


僕らだ。


ボックスのイラストを見て驚いたが、僕とピリルルの人間形態、龍形態の2人と1体分描かれており、中のカードを取り出すには箱の上蓋を破る様に開ける形式となっていたのだが、イラストを避けてわざわざ別の所から開けられていた程の念の入りようだった。


これだけでもなかなかキッツイ証拠として採用したい所だが、もう一つ。


ティシー商会の商店に出している本人非公認公式グッズのメインは僕、アンヌとある。

そして数はそれより少ないが、懐古主義向けにサシュマジュク、シャルル、ペリン、リナリーンをモチーフとした物が販売されている。

それらがティナとシーのお小遣いとなっているのだが、巣にあった物は僕のグッズばっかりだったし、おそらくキラキラしていて何かよく分からなかったやつは、知らない間に新発売されたピリルルのグッズだ。


異世界でエグいアイドル商法をしている姉達は、どうせどうしようもないので置いておいて、そんな偏った買い方をする人はこの世界では意外と少なかったりする。


子供のおもちゃだったり、殆どは僕らと爺さん達のグッズは絵本の話や、新聞に載ってた話の影響で、お土産で買って行ったりされるの事が殆どだ。


一部例外は僕とアンヌの信者だが、まぁそれは殆ど宗教的な売れ方だ。

納得いってないけど。


ピリルルのグッズもカードの新弾に合わせて話題作りを兼ねて作られた物だろう。


しかし超例外的にアンヌと僕の違う意味の信者が出て来たのも聞いていた。


一人のみのグッズを買いまくる宗教的信者ではない人達。

結局会うことはなかったが、存在しているらしい。


しかしここで出会ってしまった。

スーパー特殊例。

しかも…僕とピリルル二人でいる時が最高と感じるという、特殊なアレだ。


「つまり…?」


つまりあの竜の正体は、僕ら二人がくっついているのを見て意識を失った哀れな病人って事だ。


「えぇ…。

よく分からないかも。


人の趣味嗜好をとやかく言う気はないけど、自分を対象にされるとちょっと…。」


ほら、よく見て。

仰向けに倒れた女の人の眼球だけが、じっとこっちを見ている。


「ひぃ。」


怯えたピリルルが僕のシャツの裾を掴む。

ダメだよ!ピリルル。

それは栄養だ。


やつを強くするぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る