第125話 竜のねぐら
これは目が合ってるね。
でもこんな小さい獲物を追いかけるとは限らないから、襲って来ないかもしれないし、とっとと離れようかな。
…そんな見ないでよ。
明日なら戦ってあげるから。
今戦いたくない理由は3つ。
ヤイシャの石が丈夫な物かどうか分からないから、庇わなきゃいけないこと。
単純にヤイシャとの戦いで消耗が酷いこと。
特に魔力関係が終わってるし、神様が生き返してくれても別に体力全快って訳じゃない。
いや、もしかしたら全快してるのかもしれないけど、メンタル的に戦闘後って認識が消えてないから、体が重い。
そして、さっきの狩で出て来なかったこいつと今戦うのはムカつく。
だったらさっき狩られていろって話だ。
受け入れられません。
あぁ…。
もう鼻息が当たるくらい近い。
これはやらなきゃいけないかな。
左手は石を掴んで後ろ側にして半身で構えて石を庇おう。
魔力と体力はもう根性だ。
仕方ない、来い!
しかし竜に敵対感情を感じない。
なんだ?
すんすん匂いを嗅がれているが全然齧ろうとしている感じがない。
…触ってみようかな、と思って手を伸ばすと、服の後ろ側を咥えられ、竜は飛び立った。
え?
なんでなんで?
やばい。
あっという間に森の上空で、逃げるに逃げられなくなった。
今の魔力でも降りられるとは思うけど、下は森で安全な着地が出来るか分からない。
なので石を守り切れるかも分からないので、無理やり飛び降りる訳にもいかない。
結果されるがまま運ばれていく訳。
…リナリーンといいスピラヴェラといいコイツといい飛べるやつはなんで人のこと拐って行っちゃうのかな。
困るよ、本当に。
竜は僕を咥えたまま、ビュンビュン風を切って森の端の岩場の方までやって来た。
そこの岩場の上の方には隙間があり、おそらく巣のようで、そこに僕を置くとまた飛び立って行ってしまった。
…なんで?
まぁ、今のうちに手紙を出しておこう。
ピリルルを彷徨わせたら申し訳ないし。
暗い巣の中を見る為に魔法で灯りを灯すと、周りには鎧の一部やらなんやらキラキラした物が散らばっていた。
カラスみたいな習性があるのか収集癖がある様で、おそらく基準は光り物だろうか。
んー。
そう言う訳じゃないのか?
別に光ってない物もあるな。
あ?
これ知ってる。
僕の木剣だ。
正確に言えば僕のシグネチャーモデルの木剣だ。
これは光り物じゃないね。
なんせ木だし。
竜の持ち物だしあんまり触らない方がいいかとも思う。
なんか悪いしね。
連れて来られた理由もわからないし。
…!
これは…!
知ってる!
これも知ってる!
なんでこんなところにあるの!
って言うかもう発売してたんだ!
第二弾カードパック
神の子と叡智の幼龍ピリルルだ。
しかもボックスで。
…ええ?
唖然としていると竜が戻って来た。
手頃な獲物を取ってきたらしく、口には牛の様な生き物が咥えられている。
そんなに大きくない身体なのに自分より大きいくらいの牛を持って飛べるなんて凄いな。
感心して見ていると、牛をを僕の前に落とすと鼻で押してきた。
どうやらくれるらしい。
ありがとうございます…。
推定500kgの肉塊は食べられないので、腕輪の剣でモモの部分を切り分けてあとは返した。
モモだけでも50キロくらいありそうなので、更に少しだけ切り取り焼いていると、興味深々に覗き込んで来たので焼けた肉をピャッと投げると空中で上手く口に入れ、モグモグしていた。
うまい?
味も何にもない焼いた肉だから身体には悪くないと思うよ。
竜はクルクルと鳴き、なんかウキウキしている感じがするので、土魔法で焼き場を作りデカい塊も焼いておこう。
自分の分は流石に塩が欲しいな。
この辺の岩に含まれているなら回収できる。
これも土魔法で。
コップと竜でも飲みやすい器を作って水も入れておこう。
爬虫類って食事の水分だけで十分なんだっけ。
ま、欲しければ飲むし、要らなければ飲まないでしょ。
…里のワンコたちは心配しているだろうな。
もしかしたらピリルルも着いている頃かもしれない。
どうしたもんかね。
結構食べて満腹感を感じると、とんでもなく眠たくなってきた。
そりゃそっか。
狩をして全力で戦闘をしたあとなんだから。
ウトウトしていると、また服を摘まれてノシノシと移動を始めた。
少し奥には草の塊にギランギランの服が絡まった、おそらくベッドがあり、そこに僕を置くと竜は丸くなって眠り始めた。
せっかくなのでお邪魔しよう。
僕は首と前足の間に入りそこで眠ることにした。
竜は意外とひんやりしていて、凄く眠りやすかった。
朝起きると既に果物が置いてあり、竜が早朝に採ってきてくれたのだろう。
それを食べるとまた首の後ろを掴まれ、今度は泉へ連れて来られた。
昨日のアレでドロドロだったし汗も流したかったから凄く嬉しい。
まず自分で出した水で身体を洗い、上の服を全部脱ぎ泉へと入った。
傷はなくても筋肉系の疲労は残っているので、冷たい水が気持ちいい。
…え、なに?
竜がこっちをジーッと見ている。
入っちゃダメだった?
ダメそうなら上がろうかなとすると竜がこっちを見るのをやめた。
良いのかな?
なんだったんだろう。
不思議に思ったまま水に浮いてボーッとしていると、何処かから声を掛けられた。
何処からだ?
「ラルフ!
良かった無事で
こんなところにいたんだね。
犬たちは心配していたけど、手紙に書いてあった事情は話たから、今は落ち着いているよ。」
ピリルル!
良かった!
会いたかったよ。
なんか知らない竜に連れて来られたけど、別に危ない目にはあってないよ。
「竜?
竜なんて何処にいるの?」
え?
怖いこと言わないでよ。
そこに居るデカいやつだよ。
「ラルフ、どうしたのさ。
竜なんていないよ。」
居るって、ホラ!
指の先を見てよ!
「…ラルフ。
あれは…人間だ。
動物に変身した女の人だ。」
えー!
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