第124話 物欲センサー

「絵の能力は完全に無駄になってしまいましたね。」


いや?

実はそんなことないよ。

強がってるわけじゃないからね?

ちょっと絵が上手いとか憧れてたけどもう仕方ないし。


景色を立体的に捉える力が無ければ、正確にヤイシャを飛ばせなかったし、空中で身動きなんて取れていない。

絵の才能について来た3次元的な捉え方が最高に役立った。


それで、生きてる?彼は。


「生きてますね。

実は死なないんですよ、神は。

神獣のセーフモードみたいな状態になってますよ。

魔力の全くない場所なので結構ギリギリですので、早く戻って癒してあげなければ危ないかもしれません。」


うぉ。

それなら本当に早く帰らないと。


「それと、私も貴方もとっても勘違いしていたのですけど、ヤイシャはメスですね。

いや、私は直接見ていないので仕方ないですが貴方はすっごい失礼ですよ!


いやー私の3倍失礼ですね。」


マジで?

それは申し訳ないね。


でも等倍だよ、等倍。

失礼さは変わんないって。


さ、バカなやり取りしてないでとっとと戻らないとね。


怪我をしてるなら治してあげないと。


「能力は何にしますか?」


あそこに行っても運べないし、癒せないならそれを運べる様にする能力が欲しいな。

工学系の滑車とかタンカとか作れるようなやつ。


「そうですね。

工作の能力にしましょうか。」


そうしよう。

その方がいいね。


いざとなれば人数で運べばいいから、簡易なものを素早く作れる方がいいもんね。


「ではそうしましょう。

ではいつも祈っていますよ。」


…。


さ、助けにいこう。


風魔法で空白地帯を探し、急いで向かう。

時間は大して経ってないはずだが、無茶をしたのは僕だ。


命を奪う為の戦いじゃないのに。


遺跡にたどり着いたが何処にも見当たらない。


落下地点はある。

何かがぶつかり破片が飛び散っている。


どこだ?

もしかしてそんなに重症ではなく、自力で里に帰ったのか?


いや、神様がセーフモードみたいな状態になっていると言っていた。


里の方向から吹っ飛ばしたからこの辺りの筈なんだけど、見当たらない。

結構な巨体だしすぐ見つかると思ったんだけど。


そもそもセーフモードってなんだ…。


うろうろ探していると何かを蹴った。

石のような感触だったがよく見ると若干赤黒い宝石のようだ。


…僕は知ってるぞ、これを。

知っているというより、僕もこうなったことがあるのだ。

ティナを蘇生する時に死の塊になった時、僕はこんな状態に変化した。

あの時朧げな意識でまだエマだったタナが言うには悍ましいと言う感想だったっけな。

たしかに脈動する赤黒い石は生理的に嫌悪感を覚える。


死の塊、これかセーフモードって。

手の平サイズの宝石を拾って…どうすれば良いんだこれ。


とりあえず里に戻ろうかな。


下手に触って、それやっちゃダメだって!ってなると困るしね。


とりあえず土がついてるから磨いておこう。

それくらいは大丈夫でしょ。

服のポケットに入れて手で握って落とさない様に帰ろう。


こんなにしっかり落とさない様にしてるのは前世でおばあちゃんの保険の切り替えでまとまったお金を移動した時以来だ。


周りにいる者みんな泥棒に見えたっけな。


…だからあの竜には見つからない様に帰りたい。

なんで万全な狩の時に見つけられなかったのにこんな時にいるんだよ。

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