第121話 再会
なるべく堂々とゆっくり里へ帰った。
ボウズで終わったことを少しも恥じて居ませんよ、的確な指示を出したから、自分で調べたい遺跡に行って来たのだよ、と言う顔もした。
恥ずかしい。
でっかい足跡を追って居たのに見つけられなかった。
相当でかいのが想定されるのにに追った先には何も居なかった。
一応足跡をメモしてある。
言い訳する訳ではないが、追っている最中にチラッと見かけた鹿くらいの大きさの動物なら捕まえられたと思う。
大物を狙った結果の空振りは恥じるべきではない!
と言いたいが、生計を立てているワンコ達には言えない。
ロマンでご飯は食べられないのだ。
結果的には指示を出した子犬達が堅実に獲物を捕まえたので、全然狩れて無いとかではなかったから、別に追及されたりもなかった。
あんな虚勢を張ってたのが余計恥ずかしい。
元長に足跡のメモを見せると、竜だろうとのことだった。
ピリルル達の龍とは違う竜という動物で、言ってしまえばでっかい飛びトカゲで、凶暴で牙に毒を持つらしい。
爬虫類なので焼くと人には美味しいらしいのだが、生で食べることを好む犬達には合わない寄生虫がいることがあって狩られないらしいのだった。
ペリンが勇者と称されるきっかけとなった生き物なので見てみたかったが、食べられないのを狩る事がなくて逆に良かったんじゃないかな。
群れとして狩の結果は上々で、普通に生きていくには問題ない量の肉が取れた。
もちろん遺跡についても聞いてみたが、めぼしい情報は貰えなかった。
魔法が使えないというのは、この世界の生き物にとって攻撃手段が減るという単純なものではなく、明確に身体能力が落ちるし、種族によってはそれだけで死んでしまうレベルの場所だ。
もしかしたら呪われた地として避けられていたりするのかもしれないな。
そういえば魔力の塊の龍は立ち入れるのだろうか。
あんなに楽しみにしているのだから問題なく入れるといいんだけど。
食事は僕以外は生のまま、僕だけはしっかり焼いて肉を食べて、野菜不足が気になるのでその辺になってるフルーツを取ってきてみんなで食べた。
居心地がよく、ここで長をしていっても幸せな人生な気がしている。
旅人の才能がなくなったが、犬まみれで寝るのもなんの抵抗もなくよく眠れた。
でもね。
やらなきゃ行けない事があるんだよね。
次の日、遠くから吠え声が聞こえた。
これが連絡用の遠吠えとの事だ。
「やんごとない方がいらした。
という知らせだな。」
ほう。
ピリルルかな。
龍だしな。
…凄い魔力の塊がこっちに向かって来ている。
ピリルルではないが、知っているな。
「久しぶりだなラルフよ。
見違えたぞ。
あの頃も神性を帯びていたが、比にならない。
頑張ったのだな。」
うん。
久しぶりヤイシャ。
ヤイシャも前に会った時から神々しい感じだったけど、今はもっと凄いね。
ラルフィード様が言ってたよ。
神獣になったって。
「おお!
神の言葉を聞けるのか。
そうだ。
汝から喚ばれた後すぐにな。
…少し心残りだったのだがな。
汝は優れた召喚の才能があった様だし、善良な神性を帯びていたので、共に生きていくのも悪くないと思っていたのだが、我も神性を帯びてしまったからな。
使役される存在で無くなったのだ。
いつか会えると良いと思っていたが、今回会えて良かった。」
そうだね。
僕もそう思うよ。
あの時は神の能力でズルして召喚できた。
そのすぐ後に、召喚を自力で鍛えても呼べる可能性がほぼ無いことを知らされてしまってやる気を失ってしまったので、覚えずにいた。
でもヤイシャを喚べる可能性があるならちゃんと練習したよ。
そう言えば僕に加護をくれているんだって?
「そうか。
嬉しいな。
再開できて本当に良かった。
そうだ。
加護を与えている。
おかげでこやつらと話せる様になっているだろう?
そっちはおまけみたいなものだがな。」
うん。
本当にありがとう。
危ない時に少し自分の動きが速くなるらしいね。
これは実はかなり助かっている。
これがなかったらシャルル戦以降一回も勝ってない可能性がある。
ずっと相手のターンで攻撃を途切れさせることができなかった。
一生懸命頑張ってはいるのだけど、まだ技術が拙いのは分かっている。
流石に自分の実力のみで剣聖や魔女と戦えてはいない。
神様能力バフがあって成長が早いにしてもだ。
「それでは、やるか。
長よ!
どれが長だ?
挑戦を受けよう。」
え?
どういうこと?
「長が別の長を呼ぶのは決闘の時のみだ。
獣の礼儀だな。」
カカシャ?
どういうこと?
「呼んではいないぞ!
加護持ちが来たことを伝えただけだ!」
「いや、我の元に届いた時は加護持ちを預かっているって誘拐の声明みたいな伝言が来たぞ。」
伝言って…。
あ、本当に伝言ゲームみたいになって省略されたりちょっとだけ間違えてそんな感じになったんだ!
ワオンワオン伝えていってるだけだから!
「それで我はカカシャの長からの挑戦を受けた。
さあ、誰が長か!
名乗りでよ。」
…僕です…。
「え?」
僕なんですぅ。
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