第113話 治療その2…?

治療の方針は決まった。


まず毒薬で強制的に魔力を排出させ、魔力で包む。

検証の際はピリルルが風魔法で包んでくれていたが、似た様な魔道具があるらしい。

本来は暑いところや寒いところでキャンプをする際に気温を安定させるものだとか。

広さも1畳ほどで、空気を安定させる魔法が発動する道具だ。

適度に酸素も循環するし、そこまで高価なものでは無いのでこれを利用する。


ある程度排出させてしまえば、その後しばらくの間は問題ないようだった。


要は自分の魔力が許容量を超えて体調を悪くしているだけだからだ。


体調が整えば、あとは成長を待つかある程度魔力を操る技術を修めたら問題なく治るものだ。


実はこの病気で死ぬ子供はまま居たらしい。

そして、原因がわかったことでもう一つわかった事がある。


この病に罹るということは元々の魔力が多いということだ。

魔法使いの才能があるということだ。


よって、治療に国からの援助を期待できるとの事だった。

成長した後に、国のために働ける可能性が高いからということだった。


これで上手くいくかはわからない。

細かい検証はこれからだし、国とのやりとりもこれからだ。

だけど、ミリには合った感じがする。

経過を見る価値がありそうだ。


子供にもどったミリはここに入って来た時より大分体調も良さそうだ。


大丈夫か、ミリ。


「はい。

ありがとうございます。

お祈りしてたんです。

毎日、お父さんが私の心配をしなくても良くなる様に。」


そっか。

これまでよく頑張ったな。

きっとこのタイミングで僕が来られたのはミリが頑張ったからだ。


これからもお父さんの言うことを聞いて身体を大事にしてね。


よし!

次だ!


いきなり時間食ったけど助けられたからよし!


そうして次々と診察していく。

お父さんも医師なので相談しながら進めていく。

初めからお父さんが指揮を取れって話だが、僕の立場を使うのも必要なのだ。


医者を多く抱える教会に縛られていないが利用出来る特殊な立場なので、出世がどうとかの邪魔もない。

しかし、今後成果を出すとそうもいかなくなっていく。

今しかこんな無茶苦茶は出来ないだろう。


ミリと同症状の子も何人かおり、対応可能な大人に指示を出し治療をお願いする。

不意の事態が起きた時のために、お父さんは本部詰めになった。


時間が許す限り、僕はピリルルと不安がなくなり何故か目がよりバキバキとなった御者さんとともに多くの診察を行った。


単純に栄養失調気味であったり、重めの風邪であったり、怪我が悪化してたり。

放ってはおけないけどその場で治せるものも多かった。

この世界はやはり小児治療が発達しておらず、大人と同じ対応をして悪化する事が多かったようだ。

それを僕の知識で調整したのが主な仕事となった。


そして、一つ薬を開発した。


最初は抗生物質を作りたかったが、この世界での治療魔法は、厳密に言えば傷を治すのと同時に不要な菌や微生物も排除しているらしく代用が可能だった。

そりゃそうか。

じゃないと怪我が治ってもヤバい菌が閉じ込められて死んでしまう可能性が高いからだ。


途中まで青カビから濾した薬を作っていたのに、必要ない事がわかった。


そして安易に始めた青カビ培養からの薬剤だが、この世界の青カビが前世と同様に働くなんてわからないのだ。


わからないものが出来てしまった。


前に納豆を作ろうとした時の様に、謎の変化をし、別の薬になっている可能性がある。


さ、ネズミの様な生き物さん。

飲んでみておくれ。


次の日見事に発揮した薬は、ネズミをかつてない程にフッサフサのモッフモフにしていた。


何がどう作用したか分からないが、助かる人が居るだろう。


そのほとんどが子供ではないだろうが。


そうしてこの薬は僕の地盤を固めていく事に役立つこととなる。


何故なら権力者は、ある程度高齢の男性ばかりだからだ。


この日から世界はワントーン暗くなったが、表情は明るくなったのだった。

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