第107話 初めて前世の知識を活かす



昼食を食べている時に、一つ浮かんだ疑問があった。

僕らは見えなくしたと思っていた姉達が飛んでいた時も丸見えだったのかと。


「僕らが見えていたんだから、そうなるよね。」


ね。

まあ、ティナとリリーディアは街の方まで行ってないし、遠目で見たならどうせ僕のせいになるから関係ないけど。


「あら失礼ね。

私はちゃんとラルフの魔法を理解して維持出来るようにしていたわよ。」


え?

出来るの?


「出来るわよ。

モヤっと来たのをギュッーってならないようにしただけよ。」


…全然わからない。

ピリルルも出来る?


「出来ない。

ラルフは他の人の魔力と自分の魔力がはっきり別に感じる?

そんなことが出来るなら出来るかも。」


それは感じるよ。

誰の魔力かわかる。


え?ピリルル分からないの?

龍だから大雑把なんだ!


「私も分かんないわよ。

ラルフとリリーが変なんじゃない?」


えー。

ティナがガサツなだけ…な訳ないから、人によるのかもね!

そうかもね!


危ねぇ。

フレクサトーンが鳴り響いていたよ。


「パパ!

パパは分かる?

自分と他の人の魔力をの違い。」


娘と息子が友達と話しているだけで胸が一杯とのことで、お茶だけ飲んでいたお父さん。


お父さんは魔法の大家と呼ばれているほどだ。

わかるに違いない。


「わかると言えばわかるが…。

経験上というか、扱い方の癖みたいなもので分かるがな、ラルフとリリーディアが言うようにはっきり個人が分かる訳ではないな。


ラルフは龍並の天才なんだろう!

すごいな!

息子がすごい!」


「シーちゃんは?」


「私も先生とおんなじ感じ。

そもそも目で見えないものをはっきり区別出来ない。」


いや、目ではみえないけどなんかわかるよ。

みんなわかんないの?

うっそー!


「ふぅむ。

長いこと魔法使いをやっているし、たくさん魔法使いを教えて来たが、魔力を判別できるという話は聞いたことがないな。


発動前に見えているんじゃないかという避けられ方をした事はあるから、そういう者が居るのかもしれんが、敢えて話題に出した事もなかったな。

もちろん火になったり水になれば見えるが、魔力そのものはな。」


あー。

こっちでは幽霊が見えると言い張るやつみたいな扱いなのかもしれないなぁ。


あ、今後ろでティナが魔法を発動した。

試しているんだな?


小さい風魔法だ。

顔の前に浮かべている感じかな?


水入れちゃお。


「わ!

本当に分かるのね。

…ビッチャビチャになったじゃない。」


あはは。

ごめんね。


「じゃあラルフがピリルルの魔力に混ざらないようにしたらいんじゃないの?」


いやいや、無理だよ。

龍の魔力なんですっごいんだから。


「でももう隠す必要無くなったんじゃないか?

国中に見せてまわったようなものだろう?」


う…。

そうだね。

でもほら、他国に行く時とかさ。


「いや…すぐ出回るだろ。

新聞になってるんだから。


そういえばティナとラルフが言っていたカードとはなんだ?

シーも関わっているのか?」


う!


「これよ。

紙にラルフの姿絵とかアンヌの姿絵を描いて売ってるの。

55種類あって、当たりがでたらラルフのサイン入り木剣とか色々当たるのよ。


すっごい売れてるんだから。

という訳でラルフ、あとでサイン書いてね。

カード50枚に、木剣5本。」


多い!

でも良かったよ。

バトルカードじゃなくって。

大会とか開かれたらもっととんでもない目にあってた可能性あるから。

言わないけど。

言うわけないけど。


「そういえば、ラルフが昨日言ってたバトルカードってなに?」


貴様!ピリルル!失言が多いぞ!


「なぁに?それ。」


いや、言ってないよ。

言う訳ないじゃん。


「リリー、本当?

ラルフ嘘ついてない?」


え?


「嘘ついてる。

魔力が乱れてるから。」


う!

使いこなしてる!

見えないはずの姉が使いこなしてる!


「言わないと第二弾カードの絵、肌色が増えるよ。」


…おもちゃです…。

カードで遊ぶおもちゃです…。


「詳しく教えて。」


はい…!


……

………


「なるほどね。

かわりばんこにやるのね。

ラルフが主人公のカードなら剣と魔法をバランスよく使えて、アンヌから剣をメインに、しーちゃんが主人公なら魔法メインのカードを多く使える訳ね。」


そうです…。

魔法使いと剣士とハイブリッドで別れて各々違うカードが攻撃用に対応しているんです…。


「商機ね。」


やめて!

いやだ!

異世界に来て初めて作るおもちゃはオセロと相場は決まっているんだ。


「ティナよ…。

発案者が嫌がっているぞ…。」


そうだ!

お父さんだけだ、味方は。


「カードならラルフと対等に遊べるわよ?

怪我させる心配もないし。」


「うむ。

そうか!

そうだな。

楽しみだ。

そうだ、そういえばさっきのラルフのカードはどこで買えるのだ。」


…味方が寝返った。


恥ずかしい!

初めての異世界知識を活かすのがトレーディングカードゲームは恥ずかしい!


もし後世に地球の人が僕みたいに来た時に、

「うわぁ、こいつ異世界に来て初めてやる事がコレかよ。」

ってなるのが耐えられない!

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