第101話 訪問客が2人



あー。

屋敷の外を子供にキャーキャー言われながら追いかけられてる人がいるよ。


うらやましーなー。

キラキラしてるしなー。


あ、こっち見た。

手を振っておこう。


「ラルフ!

これ!

これ、お前がやったんだろ?

サンドラが吐いたぞ!」


遠くからだから聞こえないなぁ…。

いい天気だ。


「ラルフ!

ラルフ君!

お願い!

戻して!


神の子さま!」


いい風だなぁ。

気分が良くなるね。

魔力のノリが良くて、僕のことを神の子なんて言ってくる奴のピンクシャドウ期間が伸びそうだ。


「マジなんだってラルフ!

俺このままだと貴族に買われちゃうんだって!」


そっかー。

僕は結果的には不満はないけど、変な爺さんに改造修行されるところだったんだから、それも仕方ないねぇ。

日頃の行いだね。

キラキラ増しちゃえ!


「あ!

足すなよ!

消せって!」


「ラルフちゃん。

大人気ないことしてないで、話を聞いてあげたら?

カルさん、本当に貴族に詰め寄られてるんだって。」


はぁ。

僕は弟だから、姉には逆らえない。


なんですか、影姫さま。

今日も麗しい影ですね。


「おっまえ…。

いや、俺も悪かったよ。

ジジイの暴走止められなくてさ。

でもいいだろ。

かわいい結婚相手が出来たんだから。


あ!

ごめんて、縁取りを水色にしないで!


いや、本当に不味いんだよ。

スロウディっていう貴族がいるんだけど、そこの娘さんがな、すっごい男勝りなんだって。


で、結婚相手に困っていたところに、俺がこんなキラキラふわふわピンク色したふざけた影で歩いてたから、あの兵士は逆に女らしい剣士なんじゃないかって、婚姻話が来ててさ。」


そっか!

おめでとうございます。

いいんでしょ?

かわいい結婚相手が出来るなら何しても。


「ぐ…。

ホントすんませんした。


俺には小さい弟と妹がいて、チビたちがもう少し大きくなるまで金のいい門兵を辞めるわけには行かねーんだよ。


好みのタイプもお淑やかなタイプだし、俺は俺で少しも女らしくないだろ?


でも貴族相手だから強く言えないんだよ。」


小さい弟と妹いるなら仕方ないね。

ほら、影変えといたよ。


「お、ありがとな。

…なにこれ。


カルここにありって文字。

うわっ!

ついてくる。

これ影か!」


男らしいでしょ?


「…これはそんなに嫌じゃないかもしれない。

ちょっと文字を勢いある感じにしてくれるか?


お、かっこいいじゃん。

いや違うって。


しかしどうすっかなー。

他のやつを紹介したくても、俺も兵士だろ?


ムキムキなモサモサしか居ねーんだよなぁ周りに」


そうだねぇ。

相棒もモサモサだもんね。


「あら、カルさんの近くに女らしい男の人いるじゃない。」


え?居たっけ。

いや、僕は兵舎も学校も行ってないから詳しくないけど。


「いねぇって。

ティナとかシーに比べたら、か弱いってだけだろ?」


あ。


「ラルフ。

あの文字まーるくして、ピンクに戻してあげて。」


かしこまりました。


「うそうそうそうそ!

でも居ないって。

兵士なんだから。

ムッキムキだってみんな。」


「はぁ、このままでいいわよラルフ。

いるじゃない。

サンドラさん。

お髭なかったら仕草は女の子よ。」


モッサモサだから除外してたけどそうだった。


サンドラさんの髭呪いは解けてる筈なんだけど、まだモサモサだよね。

剃らないのかな。


「なんか長いこと髭があったからないと落ちつかねーんだと。

…剃ってみるか。


面白そうだしな。

行くぞラルフ、手伝え。」


それは…!

楽しそうだなぁ…!


「…はぁ。

男ってバカばっか。


ラルフちゃんもカルさんの年齢になるまでには落ち着いてほしいわね。


…私とシーちゃんで厳しくしないと、いい男になれないかも。

今から話し合っておかないと!


まだラルフいい男計画はノート3冊しかないから、カルさんみたいになっちゃったら困っちゃう!」


「3冊は…少ないわね。

私は弟日記だけでも、年30冊は超えてしまうもの。


はじめまして。

お邪魔させていただくわ。

ラルフさん、いらっしゃる?」


そこには白い髪の美しい女の人がいた。


ティナは思った。

浮気だ!と。


「ラルフさんはいらっしゃらないのね。

実は弟も来ているんだけど、街の中を歩いて見たいと言っていたから、先に来たの。


あ、弟っていうのがね、ピリルルと言うんだけれど、可愛くて、本当は買い物について行きたかったんだけど、あんまりしつこくするのも、ね。

毛の先ほども嫌われたら死んでしまうでしょう?

だから我慢に我慢を重ねて先にラルフさんのところで待たせて頂こうと思いましたの。

ピリルルったら初めて出来た友達だから張り切っちゃってね?

手土産なんか持ってきたの。

でもそれも忘れて街に繰り出してしまったのよ。

そう言うところももちろんかわいいんだけど、姉としては心配だわ。

あ!

もしかして!

初めて街に降りる私のためにプレゼントでも買いに行ったのかしら!

どうしましょう。

心の準備が間に合わなくて死んでしまうかもしれないわね…。


あ、はじめまして、私はピリルルの姉のリリーディアと申します。


龍の国ではお世話になりまして、ようやくピリルルが人化を覚えたので遊びに来ましたの。


ピリルルったら早く行ってみたくて必死に頑張っていたのよ。

毎晩毎晩、私にコツなんて聞きに来て。

かわいいでしょう?

もう、嘘を教えてずーっと覚えられなくてこのまま毎晩訪ねて貰うのもいいかもしれないとも思ったんだけど、あんまり一生懸命だから、きちんと教えてしまったわ。」


ティナは思った。

仲間だ!と。

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