第100話 異世界での初料理
マヨネーズとは生卵を使うのが怖いし、カスタードも加熱し過ぎてパサパサになったら美味しくない。
そもそも卵は鶏卵か疑惑がある。
タンパク質だろうから加熱で固まるだろうけど、味に責任が持てない。
小麦を使う焼き菓子は当たり前だが存在する。
パンがあるのにない訳ないのだ。
前世の知識を使っての料理が難しすぎる。
ラーメン…はかんすいがなぁ…。
最悪木の灰でもいいらしいけど、完全に安全な木を探すところから始めないと行けないし。
スープは作れるだろうけど、中華系の骨から出すダシに向いた生き物から探すのが大変だ。
そもそもの調味料が…。
豆はあるけど大豆とは性質が違う可能性があるのと、莫大な時間と手間をかけて醤油と味噌を作るかと言われるとなぁ。
料理ってのはどれもこれも研究の成果だっていうのが分かる。
知らない土地でパッと作れて目を惹く物なんて…。
豆はあるか。
当然藁もある。
稲の茎では無さそうだから確実にいるとは限らないが、干し草の時点で可能性がある。
はぁ、異世界にきて初めて作る食べ物がこれか。
受け入れられないんだろうなぁ。
僕はぺぺさんに小粒な豆を茹でてもらい、自室に運び、良く洗って乾かした枯草で包んだ。
そう、納豆だ。
枯草の内部に納豆菌があればあとは置いておくだけで出来るが、この世界に納豆菌があるか分からない。
ただ腐って終わりの可能性もあるし、素人が作ったうえに、醤油もないいまま食べたって少し旨みのあるヌルヌルくさくさちょい苦い豆だ。
いやぁ。
もう後には戻れないけどなぁ…。
数日後箱の中の藁入り豆を開けると、微生物が違うのか納豆は出来ていなかった。
豆は白くカサカサで、触ったらボロボロに砕け細かい粉になってしまう。
いやぁ、納豆菌は激烈に強い菌だから異世界に紛れ込んでないかと思ったけどダメだったか。
…粉は…舐めてみようかな。
この世界で一番死んでいい人間なのだ、僕は。
いや、ネガティブな意味じゃなくね、
…んー?
ばっ!
まず!…くはない。
甘くも苦くも酸っぱくもない。
ほんの少ししょっぱい。
なんかよだれが止まらない感じ。
あ、これあれだ。
旨味調味料だ。
ちょっと多めに水で流し込んで体調の様子を見て大丈夫そうならぺぺさんに相談しよう。
朝試して夕方、体調になんの問題もないので、ぺぺさんに粉を持参して相談してみた。
「なんだ?ラルフが作ったのか?
舐めてみてもいいか?
どれどれ。
…ばっ!
…味がほとんどないけど、耳の辺りがきゅっとなるな。
なんだこれ。」
豆の果てだよ。
人が豆を食べて美味しいと感じるところだけ残った物なんだ。
だからこのままだと全然美味しくないけど、普通の料理にちょっと入れると、美味しいと感じるのが増すと思う。
「あ、これ調味料なのね。
おっけー
昼の残りのスープで実験してみるか。
鍋にどのくらい?
こんなちょっとでいいのかよ。
小さいスプーン一回くらいだな?
お、残ってたのも丁度2人分くらいだな。
飲んでみるか。」
飲んでみよう。
…んー。
美味しくなってる気がするなぁ。
いや、劇的に変化がある訳じゃないんだけどさ。
「ああ、美味くなってるな。
作ったのは俺だからちゃんと味はわかっているが、思ったり美味く感じるからな。
これ薄っすらしょっぱいだけだから割と何にでも入れられるんじゃないか?」
塩を少し減らしてこっち少しいれたらバランス取れるんじゃないかな。
どっちにしろ調味料だから色々試してみるといいかもね。
「そうだなぁ。
夕飯にこっそり入れてみるわ。」
結局その日から、夕飯のスープにのみ使われだしたそれは、みんななんか夕飯のスープだけ朝昼より美味しい気がするけど、口に出して言う程の違いはないし、煮込み時間とか具材の感じかもしれないしと、流れされた。
しかし、僕とぺぺさんだけはしっかり認識しているので、いれないと物足りないので作り続けている。
こうして僕の異世界初料理の結果は無として終わった。
チヤホヤとかは、なかった。
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