第99話 アンヌとお茶

「じゃあ龍にならなくて済んだのね。」


そうなんだよ。

危なかったよ本当に。


「ふぅん。

それにしても龍の国に行ったっておじいちゃん羨ましがりそうね。


戦ってみたいって何回も言ってるもの。

今度龍の国に行く時は連れて行ってあげてね。」


龍も戦うのが好きだし、挑んでくる人が好きみたいだから気が合うかもね。

ピリルルが来た時に話してみるよ。


アンヌはどこに行っていたの?


「私は教会の本山がある国ね。

ほら、良く分からないけどいつのまにか聖女とか変なあだ名つけられていたでしょう?


それについての質問と説明があるからって呼ばれちゃったのよ。


お父さんとお母さんと行ったんだけど、そもそもおじいちゃんが聖騎士団長だからあんまり問題視されてなかったみたいで、本当にただの説明だったわ。


多分そのうちラルフも貰えると思うんだけど、これ、なんか教会の印だって。

これを持っていてくださいって言ってた。」


あ、白い花の意匠だ。

もしかしたらあのシグネチャーモデルの木剣も教会の指示だったのかもなぁ。

来るのが異様に早かったから、どっかからの圧力があるのかもしれないとは思ったんだけど。


木剣自体はリリーディアとの戦いで粉々になっちゃったし、龍の腕輪が二本あるから本当はそうしなくていいんだけど、なんか貰った経緯ですごく印象に残っているのか、腕輪を剣にした時にその意匠が出ちゃうんだよね。


神様のいたずらの可能性も拭いきれないけど。


「じゃあ、お揃いね。

一緒にいる時に見えるところにつけるのはちょっと恥ずかしいけど、つけなきゃいけないんだって。


なんか色んな決まりを言われたわ。

何年かに一回本山に行かなきゃ行けないとか、結婚式は本山でやらなきゃいけないとか、すぐには影響ないけど、後々面倒に感じそうなこと。


私と結婚する事になるなら、ラルフにも迷惑かけるね。」


いいよ、それは。

アンヌのせいじゃないし。


5%くらいは僕のせいでもあるし。


「ところで…。

あそこの陰から覗いてる…ピンクの影のキラキラした人はいいの?


すっごい気になっちゃう。


あ、良くみたらあの影、お嬢様の形になってるのね。

カルさん、男らしい兄貴分って感じなのに…。

ふふっ。


あれで悪い人追いかけるの?

なんか、倍怖いでしょうね。」


良いんだよ。

僕が5%ならあの人は35%くらい責任があるから。

残りはシャルルさんだ。

そのうちあのジジイにもヘンテコエフェクト付けてやろう。


アンヌはどんなやつがいいと思う?


「えー?


元は変わらないけど見た目だけ変わるんでしょ?

おじいちゃんお髭大事にしてて、毎日櫛を通してサラサラにしてるから、お髭の色変えちゃう?


黄緑にしちゃおっか。

緑強めの。」


アンヌも結構怒ってる?


んふふ。

今からやりに行こっか。


子供達の訓練中でしょ?

遠くからそうっと変えてしまおう。


子供が見てるから、すぐに噂が広がるぞー!


そうしてすぐに行動した僕らはシャルルさんの髭を黄緑色にして、剣を振ると「シュッ」と言う文字が出るようにした。


たまに僕に不幸が降り掛からなくてもいいんじゃないかと思ったが、とんでもない嗅覚で探し出され、孫とその婚約者自慢を子供達に散々され、10倍マシの武勇伝を語られた。


子供が見てるから、すぐに噂が広がっちゃうぞ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る