屋敷にて、医師の意識

第98話 認識した問題

屋敷を10日程開けていたけど、そんなに変化はなかった。

10日で龍と2回も戦ってるのか…。

いや、実質3日で2回か…?

やってられないって。


そして今僕は龍に成れてしまう身体になってしまった。

呪われてるのか?


検証しなきゃなぁ…。

リリーディアくらいの大きさならまだ良い。

良くはないけど、ギリギリ許せる。


龍王サイズだったらすっごい困る。

キリンと象を合わせたくらいでかかったもの。


龍はサイズがまちまちだから、龍王よりデカい可能性もあるだろう。

検証をするにしても、ハズレの教会ですらだめだ。

デカいとチラッと王国から見えちゃう。


…神様のところでやるしかないか。

どちらにしろハズレの教会へ行こう。



屋敷の前には、未だに良くわからない人がいることが多い。

帰りは真上からスピラヴェラに落とされて、お父さんの魔法で着地したから会っていないが、上から実際に見てしまうと、余計に怖く感じる。


でも僕は手に入れたのだ。

無魔法を!


イミテーション魔法として映像を見せるだけの魔法で、能力としての無魔法を失った今はあの時ほど自由自在とはいかないけど、絵の壁くらいは出せる。


屋敷の塀の色の壁を出して壁際を歩けば、凝視されなければ大丈夫でしょ。


未だ謎の人だかりを問題なく抜け、門の所まで来ると、カルさんとサンドラさんがいた。


真面目に門を背にして立っているので、まだこちらには気がついていないようだ。


…カルさんにはイタズラしてもいいと思うんだよね。


後ろからそっと近づき、無魔法で影の形をツインテールのお嬢様に、色をショッキングピンクにしてあげた。

意味はないけど目立つぞー!

カルさんがシャルルさんを呼んでこなければ、こんな面倒な外出方法にならなくて済んだんだ。


龍の力を得た今、精密さは変わらないけど、魔力量はすっごい増えてる。


3日くらいはこのまま過ごしてもらえそうだ。


さ、挨拶していこうかな。


こんにちは。


「おー!

ラルフじゃねぇか。

また丘のところの教会に行くのか?

気をつけて行けよ!」


うん、ありがと。


僕は目線でサンドラさんにカルさんの影を見るように誘導すると、サンドラさんは顔を伏せてしまった。


「ん?なんだ?サンドラ。

俺、なんか変か?」


このままここにいたらバレちゃう。


おまけにカルさんにキラキラエフェクトもつけていこうっと。


じゃあね。


急ぐから。

帰りはここを通らないからね!



祭壇の前につくと、僕は祈り始めた。


やっぱりここで祈るのが一番しっくりくるよ。


神様、もしくはタナさん、召しちゃって構わないので話を聞いてください。

大変なことになっちゃったんです。


すると、祭壇の方から赤い光がやって来て僕の頭の上に乗った。


「どうした、我が眷属ラルフよ。

熱心な祈りだな。

来てやったぞ。

竜神さまがな!


なんか食べ物あるか?」


余計な神様に届いちゃったよ。

食べ物?あるよ。

ドライフルーツだけど食べる?

あ、食べるのね。

食べるなら頭の上から降りてほしい。

綺麗に食べるキャラじゃないじゃん。


あ、ほら、ポロポロ落ちて来てるって。


降り…。


「おや、龍神もくっついて来ちゃいましたね。」


こんにちは神様。


あ、ここってくっついてると一緒に来ちゃうの?


「いいえ、神気を持っている者だけですね。

ほら、ポカーンとしてないで降りなさい。

神気を剥奪しますよ。


今更貴方がヒラの龍で生きていける訳ないのだから、言う事を聞きなさい。」


龍神はピャッと言いながら僕の頭から降りると、僕に小さい声で話しかけて来た。


「ここはどこだ?

なぜラルフィード様がいる。」


ここは…どこななんだろう。

知らない。


「ここは私の神域ですよ。

普段はラルフを召す事なんでないんですが、今回は非常事態でした。」


なんか…神様機嫌悪くない?

龍神さんなんかやった?


「知らんぞ…。

なんか…やったのか…?」


「別に私は困りませんがね。

ラルフは困るし、貴方はもっと困りますよ。」


なんでだ?


「ラルフは神の一柱なんですから、もし龍変化してたら、龍神は押し出されて消滅してました。」


えっ。

僕神じゃないでしょ。


…え?


「ラルフはヘンテコな神なんですよ。

神とは現象が意思を持ち、名付けられたものです。

ラルフは死ぬとここに来て身体を持って蘇るという意思を持った現象で、私が名前をつけてしまったので、神化したんです。

ラルフにもし私が人間の能力を与えずに放っておくと死の概念がバグるか、ラルフは永遠に死んで生き返りを繰り返すだけになる所でした。」


なにそれ…。

いやでもその説明を聞く限りバグらせた原因はラルフィード様じゃない?


「いや、まぁ、それはそうですけど。

なんですか、転生神ラルフよ。

神としてやって行きますか?

貴方は選んだ生物を転生させられますよ。


おそらくですけどね。」


それは死の概念がバグるね…。

なんでそんな事に…。


「いや、ラルフィード様のせいだろ。

運命神が運命変えたから固定されちゃったんだろ?」


あら、ラルフィード様ったら運命神だったのね。

通りで僕が変な目に会いまくる訳だ。


「全くその通りですが、初めての事態だったので仕方ないじゃないですか。


ここまでは良いんですよ。

ラルフが人間のまま老衰したらチャラになるんですから。


でも龍変化は絶対ダメです。


人の運命が消えて、神が龍になって龍神の強制代替わりがおきますし、死人を生き返らせる厄介な能力になりますよ。


自分でセーブ出来るかも分からないですし。」


怖…!

不死の軍団と龍たちを従える神龍って…ラスボスじゃん。

だめだめ。


善良とかそういう心根の話じゃないよ。

存在が悪じゃない。


「そうなんですよ。

それで急ぎで召したんです。

危なかったですね、魔龍王ラルフ。」


いや、物騒なこと言わないでよ。

召されたら大丈夫なの?


「えぇ。

貴方は死んだらここに来て、人間の身体で蘇るという現象なので。

足りないのは人間としての役目というか運命だけなので、それは私の分野ですから。


さ、今回も能力を決めてください。」


めちゃくちゃギリギリだったじゃない。

スピラヴェラをしばく為に龍変化してたらどうしてたのさ。


「神の力でラルフを滅ぼしてましたね。

扱いこなし始めたら無敵になるので。

なんせ死なないし、周りも死なないのでね。


ただ、神が地上へ何かをすると、神の力の膨大さに巻き込まれて被害が甚大なので避けられて良かったです。」


いや、本当に。

じゃあこれからも人間をやめられないってことね。

逆に良かったよ。


「龍王の跡継ぎ候補っていうのは消えてないから、未来に変な事にならんといいな!」


…神達のせいじゃない?

やっぱり。


やるせないよ。

もしなんかで魔龍王になっちゃったらこの2人に攻撃しよう。

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