第97話 龍の国を後にする

「願いを言え。」


はいはい。

2度目なので、経験者なので。


でも今回はややこしい。


まず、この願いとリリーディアとの結婚は関係ないのだ。

リリーディアを討ち倒すのが結婚の条件で、前回の推定容疑者リナリーンの願いですでに、勝手に婚約状態になっているような感じだった。


そんなもんで、願いは決まってる。


リリーディアとの結婚を無かったことにしてください。


「おい!

許されるはずないだろう!

龍との婚姻を賭けた戦いで勝っておいて!」


落ち着いてよ龍王さん。

これからも娘と暮らせるんだよ?

嬉しくないの?


「…嬉しい。」


それと僕は人間で、結婚の仕組みが違う。

ここからが良いところだから、黙ってて。


「ほう!

ロマンチストか、ラルフ!

なら見守るとしよう!」


という訳でリリーディアさん、あなたとは結婚しません。

振り回してごめんね。


「…おい!

願いとか関係なく告白するところだろうが!

見守るのやめだ!

許さんぞ!」


それでだ。


ピリルル。

僕と友達になってよ。

普通に遊びに来て、普通に旅行へ行こう。


僕らはまあまあ強いからどこにでも行けるさ。


「うん。

それは、構わないよ。

もう仲良くなっているしね。


僕も遊びに行くよ。

来たい時は呼んでくれたら迎えにいくし、人化も覚えておくよ。


血筋的に多分苦もなく出来ると思うから。」


うん。

楽しみだね。


「きゃー!

パパ!聞いた?


かわいいピリルルに初めて友達が出来たのよ!

私も遊びに行くわね。

ピリルルを見守るのに必要なら明日にでも覚えておくわ!


きゃー!

よろしくねラルフ。

ピリルルと仲良くしてね!


良かったわね、ピリルル。

あなた遺跡とか、伝承の場所を調べたいって言ってたものね。


あ、でも、おねーちゃんを置いていっちゃ嫌よ!

あ、でも、久々に再会して凛々しくなったピリルルちゃんを見るのもいいかも…。


迷う!

迷うわね!


こんな事があったんだって教えてもらいたい!

でもでもでも、寂しくて死んじゃうかも!


やっぱりついて行こうかしら。


きゃー!

どっちが良いと思います?

ラルフ。」


知らないよ…。

こんな龍と結婚してたまるか!


あの、手紙とか書いて貰えば良いんじゃないかな。

ほら、口で言いにくい事でも伝わったりするし、絵葉書とかで、ピリルルが今どこでどんな事してるか想像したりも楽しいんじゃないかな。


「手紙!

…素晴らしい考えよラルフ。

恐ろしい発想ね。


今でもピリルルちゃんが読んだ本を枕の下にして残り香を感じながら寝ているのだけど、手紙なんて枕の下にいれたら…!


いくらでも眠れちゃう!

ね!

直筆だもの!


私もお返事を書く準備をしておかないといけないわね。

ラルフ!

やっぱり一度は遊びに行くわ!


流行りの封筒とか自分で見て決めたいもの!

あなたもお姉さんがいるのでしょう?

相談して買いに行きましょう。


パパ?

ピリルルが行っていいなら私も構いませんね?」


「いや、しかし…。」


頑張れ!

超頑張れ龍王!


「嫌なパパ。

もうお茶とか淹れてあげない。」


「もちろんいいに決まっているじゃないか。

心配しただけだ。

そんなパパの愛もわかって欲しいなぁって!

それだけだとも。」


おい!

…仕方ないんだ。

男親なんてこんなもんだ。

期待してなかったよ。


ティナとシーさんとリリーディア…!

やめよう。

考えても仕方ない。

膝は震えるけど、まだ何もされていないのだ。


「やったー!

ありがとうパパ。

人化、はママの方が可愛くできるからママに教わろうっと。


それではごめん遊ばせ。


ママー!

ママー!

人化教えて〜!」



…。

解決…したのか?


「龍の願いは叶えられたな。

神は偉くて忙しいから帰るぞ。

今度ザギギア食べに寄るからな。


では。」


…。

この数日はなんだったんだ。

1人友達が増えたけど、なんか、腑に落ちない。


「帰るか…。

ラルフよ。

なんか、伝説と対峙なんてするもんじゃないな。


想像しているままでいたかった…。」


そうだね。

やっぱ親子だよ。

僕もそう思うもん。


「帰るのね。

そうだね。

ラルフ、次は僕が遊びに行くよ。

出来れば1人で。


上手くいかなければ姉と。


いつか一緒に遺跡とか行こうね。

僕も勉強しておくから。」


そうしようね。

なるべく撒いてきてね。


「ふむ。

なんか、娘がすまないな。


…スピラに送らせよう。」


龍王さんも…頑張ってね。




少し待つとスピラヴェラさんが飛んできて来た時のように僕らを抱えて飛び立った。


ピリルルが手を振っているので手を振り返した、それだけで友達だなって感じがする。


「マジですげーなラルフ。

お姫様が負けたの初めて見たわ。

今度俺ともやろうぜ。」


やらないよ…。

龍三連戦はラストダンジョン以外で許されないんだ。

二連戦もだけどさ。


「あ、妃様から伝言預かってるぜ。


えーっと、娘との結婚は無かった事になったけど、前回の願いの婚約はなかった事にはなっていないので、娘がこのまま誰とも結婚せずにピリルル、ピリルル言ってて、誰とも結婚しなかった時は、私が負けてあげるからリリーディアと結婚して跡を継いでね。

責任があるから。


だって。

良かったじゃねぇか!

次期王として扱った方がいいですか?」


は?

妃さん、ひょっとして怒っていらっしゃる?


やっぱ一番怖いのあの人か…。

神様の能力で相殺できるものはないのだろうか。

ないんだろうなぁ。


「気に入られたんですね。

良かったっすね、次期王!」


龍三連戦も辞さないぞ、スピラ!

敬語とその呼び名はやめろ!


普通に帰って、普通に暮らすのだ!

僕は!


「帰っても、神の子なのは変わらんがな。」


そうだった!

なんでだ!


…何か忘れている気がする。


今回の勝利景品って、リリーディアとの婚姻、次期王の座、竜の願いでしょ。


それで取り消した願いで龍の願いが消えて、リリーディアとの婚姻にくっついて次期王の座も消えた。


「どうしたん?

なんか心残りでもあった?」


いや、次期王って人間でもなれたのかなって。


「なれるわけないじゃん。

あ、龍の成り方?

胸のコアに魔力を込めたらなれると思うよ。」


よし、その辺の広いところへ降りろ。

お前を討伐してこの呪いを消す願いを頼むから。


そのために龍の力解放しても構わないから。

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