第94話 龍のフルハウス

話し合いは稀に見る大失敗にて可決された。


そんなことある?


明日私刑決行が決まり、僕は部屋に戻って来た。


ねぇ、ピリルル。

もし僕が負けたらどうなるの?


「願いが決まってるっていう、特殊な決闘だからラルフが勝つまで続くんじゃない?」


…マジで?

僕はおそらく自殺でもしない限り死なない体質だ。

なら、永遠に勝てなかったら永遠に続くじゃないか。


あのリリーディアさんはどのくらい強いのだろう。

ピリルルは兄弟喧嘩とかした事ないの?


「…あるよ。

あまりに過保護な姉に僕が怒って一度だけ。


2秒で頭だけにされて、喋る部屋のオブジェされたよ。


龍はそう簡単に死なないから、これで独り占めできるって言って、核の部分を傷一つつけずに。


身体は治ったけど…もう2度と喧嘩は出来ない。

心が治ってない。


あの抱えられながらひたすら話かけられた日々が…。」


ひぃ。

マッドなサイエンティストでもそんな偏愛は見せないよ。


ごめんな、裏切り者なんて言って。

やっぱり君は仲間だったよ。

もういいよ、辛い思い出だったな。


僕も前世でな…いや、やめておこう。

悲しい傷の舐め合いは。


「その龍の腕輪、エアリスさんだっけ。

その腕輪の魔力を考えたら、その人が5人完璧に連携が取れたら勝機が見えるかも、くらいの強さだと思う。」


最低エアリスの、5倍?

無理じゃん。

僕もオブジェじゃんそんなの。


「とにかくねーちゃんは速いんだ。

多分光を操って攻撃してくるから、避けられない。


そのエアリスさんが5人死ぬ前に触れたら勝てる可能性があるかも、くらいだね。

エアリスさんって風の龍でしょ。


なら速いだろうから、他よりは。」


…光?

光の龍なの?

ならいけるかも。


無魔法でいけるかも。


ピリルルも出来るの?

劣化版でもいいから体感しておきたいんだけど。


「出来ない。

と言うより仕組みがわからない。

ねーちゃんが光ったと思ったら頭だけになってたし。


その前後の記憶がなぜだか曖昧なんだ。」


それはね、自分で自分を守るための機能だよ。

思い出させてごめんね。


ならもう仕方ないか。

最初は強く当たって後は流れで、しかないか。

最悪永遠に戦い続けるだけさ。


は?

ここがヴァルハラだったの?

嫌なんだけど。


そういえばさ、ピリルルは何の龍なの?


「…言いたくない。

そもそも龍は自分の二つ名を呼ばれることを好みはしないんだよ。

恥ずかしいし、自分の二つ名は嫌いだ。

でも最初の龍が名乗りに使ったせいで、戦う前に名乗るのが礼儀みたいになってて…。」


えぇ…。


じゃあ龍王と王妃は?


「パパは元々人間だった時は天才とか、才華とか言われてたらしいよ。

その名残で風が得意らしいけど。」


多分天災と災禍だろうね。


「ママは氷の龍だよ。

なぜだか二つ名がないんだ。

いや、あるとは思うんだけど、パパしか知らない。

氷の王妃だから氷妃とかが今の二つ名になるのかな。」


二つ名が知られてないのが一番恐ろしいことなんじゃないか…?


風と氷か。

出会った龍が風風氷って…。

偏りがひどいな。

え?スピラさんも氷?

風風氷氷か…。

他にいないの?

ベーシックな火とか。


龍って遺伝とかするのかな。

するなら、光は関係ないもんなぁ。


「僕も属性でいうと風だね。

一番多いのが火らしいから変な出会い方してるよ、ラルフ。


…明日死なないでね。

楽しみにしているんだ。

行ってみたい所もたくさんあるんだよ。」


うん。

死なないのだけは約束出来る。


いや、死ぬかもしれないけど。

結果死んでないのは約束出来ちゃう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る