第93話 藤崎ルート

ピーンだ。


この顔合わせの空気を文字にするなら。


「お、う。

お前は、男しか、とか、そう言うアレなのか?」


狼狽えるな龍王。

娘ラブなお前には僕らの考えはわからん。


姉という生物に怯える弟という生き物のな。


「いや…龍王よ。

我が息子ラルフの婚約者は女の子だし、そのようなことはない…。」


そうですよ。

あんまり声を大きくして言う事ではないが、女の子が好きだ!

好きなのだ!


はい。


あのね、龍王さん。

僕が頂くのは伴侶であるのは分かった。

でもそれは結婚相手って括りとは限らないんじゃないかな。


昨夜ピリルルと話して思ったんだ。

気が合うと。


「おぅ…?

ぉお?


いや、でもそれは娘と婚姻した後にでも…。」


はっ!

男の勝負を付属品にするなよ龍王!


僕は!

ピリルルと友になりたいと言ったのだ!

龍と人が!


姉の婚姻のおまけにするな!


「ん?

…そうか。

そうだな!


ならばよし!

よしとする!」


龍王がよくわからないままそう言うと、赤い光が飛んできた。

いつのまにか居なくなってた、龍神だ。


「ラルフよ。

龍の願いは、素敵な結婚相手、だ。


ピリルルは結婚相手ではないだろう。」


次は貴様か龍神!


良いかよく聞け!


お前は、親友と妻を比べるような神なのか?

親しいもの全てを愛してこその神だろう!


比べられないのなら違いなどない!


「いや…違うだろう…。」


叶える側がいいと言っているのだ!


何度も何度も無益な戦いをしてたまるか!

僕は今回こそは口先で乗り切ってやる!


友と!妻を比べるような男では!ない!


「いや、まぁ確かにラルフがそういうのなら認めてやる。」


よし!

次!


ピリルル!

外の世界を共に見に行かないか!

本に書いてある所へいこう!


「いや、子供だけで遠出は許可出来ないぞ、ラルフ…。」


お父さん!

かわいい子には旅をさせろと言うだろう!


可愛くないのか!僕が!


「いや、うん…。」


なら黙ってろ!

続行!


ピリルル、どうだ!

黒い街のその後とか、普通の人間には行けない所も僕と龍である君の2人なら行ける!


「いや…1人でもいけるし…。」


1人?

1人の知見で得た情報に価値なぞない!

ディスカッションをしよう!


そうしたことを話し合う友達が欲しかったんだ!

そしてなにより、僕はこの世界に友達が居ない!

目を逸らしてたけど、1人もいない!

頷いてくれ!

悲しくなって来た!


「いや、すごく魅力的だとは思うよ。

僕も大きくなったらそうしようと、そういう旅に出ようと思っていたから、同じ趣味の友達と回れるならそれは嬉しいと思う。」


よし!解決!

ピリルルと戦うなら手が浮かんでいる!

今のうちにリリーディアさんを目に焼き付けよう。

ご主人様のビジョンは攻撃できまい!

なぜなら後でどうなるか想像するからだ。


ははは!

乗り切った!


「あの…。」


あ、なんでしょうか、リリーディアさん。


「あなた達の友情はわかりました。

私は身を引くべきなのでしょう。」


サンキューリリーディア!

なんだいなんだい。

いい女に見えて来たぞ!


「しかし!

私の懸念はそこでした。

かわいいかわいいかわいいピリルルと仲良く出来る殿方。

それが結婚の第一条件でした。


龍は強さこそ格として扱われる種族。

ピリルルのようなかわいい、龍は舐められてきたのです。


それをちぎっては投げ、ちぎっては投げしてきましたが、貴方ならば話が違います。


貴方なら、かわいいピリルルと、共に楽しく暮らしていけるでしょう。


私は、貴方との婚姻を受け入れます。」


え?


…え?


ピリルル、どういうこと?


「ねーちゃんは…僕に…甘いんだ。

全てを優先するほどに…。」


裏切ったな!

奴隷仲間だと思ったのに!


おそらく、結婚を申し込む本人より弟に挨拶をする奴が選ばれる唯一の攻略ルートな変態ブラコンドラゴンの正解を引いたのだ。


ムズいて!

分かるか!

あのソワソワは、僕が弟を見ていたからか!


対戦相手は!

数多の龍をちぎっては投げてきた白竜、リリーディアさんです!


なんでだ!

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