第92話 悲しい推理

「どうだ、我が娘は。

美しいだろう!

リリーディアという。」


龍王が大きな声でそう言うけどさ、わからないんだよね。

人には龍の美醜なんてわからないんだよ!


いや、この人龍に惚れて龍に成ったんだっけ。


…いや、確かに綺麗な龍だと思うよ。

赤を基調とした父と、青を基調とした両親から生まれた、薄いパールパープル色、殆ど白に見える鱗は綺麗に見える。


ただそれに、かわいい!

好きになっちゃった!

とかはならないよ。


まずいくつか確認しないとな…。


僕には人間の婚約者がいることは、本当に問題ないのかな。


「お?そうなのか。

俺もいたなぁ、人間の婚約者。

俺は元々人間でな。

妻のフィリアリースに一目惚れして挑み龍と成ったが、いつでも人に戻ることが出来るのよ。


なので冬にフィリアリースと、夏は人の姿となって地上で暮らしていた。

懐かしいなぁ。


その辺は娘と話し合え。

龍の寿命からしたらたった50年程度の話だしな。


他にはあるか。」


こっちの方が問題になる可能性がある。


婚姻で継続する特殊な龍だ。

リリーディアに、そう言う相手がいなかったのかだ。

それを捻じ曲げてしまって居ないかが心配だったのだ。


「リリー。

いるのか。」


「おりません。」


うわっ。

直接聞いたよ。

デリカシーとかないのか、この龍。


フィアリースさんをチラッと見るが表情は読めない。

龍の表情なんて読めるか!

よってリリーディアの感情もわかりません。


でもこの中に読める龍がいるんだな。

仲良くなったからさ!

さぁ、ピリルル!

僕に情報をおくれ!


…無。

無じゃん。


無…?

あのピリルルが?


このパターンで無になることある?

答えはある。

あるのだ。


弟は姉の奴隷だ。


これは古今東西、異世界だろうと同じなはずだ。

逆らうという意思を幼少のころから剥奪された悲しき奴隷、それこそ弟だ。


姉が大人になり、今更優しくなろうが無くならない鎖なのだ。


これはピリルルからのメッセージと受け取ったね。


デリカシーのない父親に対して無になったパターン。

それはない

この場合、ピリルルは顔に出る。


先ほどの僕の心の声、うわっデリカシーなし男かよ!

あとでどうなっても知らんぞ。

洗濯物別にされるぞ!


と同じ感情が顔に出るはずだ。


これは問題ない。

何故なら父もまた奴隷だからだ。

同僚だ。

なんなら鎖の長さは父親の方が短いくらいだ。


無になる時、それは姉の言動にうわっ!っとなった場合だ。

弟が気配を消すことを選ぶのは。


おりません。


これにはヒかない。

事実かどうかではない。


弟がヒクのは、姉がよそ行きの顔を見せた時だけだ。


嘘だろ?

昨日はパン1で家のなか彷徨いて居たのに…。


そう思うその時だ。


それは姉が同級生を連れて来た時、彼氏を連れて来た時、お年玉を多めにくれる親戚と会った時など限られた瞬間だけだが、その時弟が表す態度、それが無である。


無のまま、あ、どうも、弟のピリルルです。


それしか出来ないのだ。


ありがとうピリルル。

君もしっかり弟だったんだ。


なるほどな。

あの姉は、リナリーン属性の女だ。


試練を勝手に課してくる女と見たね!


よく見たらソワソワしてるのも分かる。


前置きはいいから早よバトろうや!

のソワソワか…。


お姫様が婚約もしてないなんて逆におかしいんだよ。

蹴散らして来ただろ!

龍の婚姻がバトルの果てというならそれしかない。

まだ見ぬペリンみたいなやつらの怨霊が見えるぞ!


…ならば僕の道は一つだ。


ピリルルを僕に下さい!


これだけだ。

道は。


僕は嫁を増やさず、気の合う友と家へ帰るぞ!

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