第91話 知恵袋龍
ピリルルと話して、僕が知っているこの世界の物語の元となる実話を聞いたり実に楽しい時間だった。
そんな中一つ聞いた事がある訳ではないが、おそらく過去にあったのであろう話を質問した。
神ラルフィード様についてはあとで本を読ませて貰えるので置いておいて、エアリスが戦闘開始前に言っていたことだ。
「龍に勝って、龍と婚姻した人?
いるね。」
やっぱりいるんだ。
ソロ討伐を果たした訳だ。
エアリスが認識していたソロ討伐で龍と成るっていうのは、多分間違いだと思う。
ソロ討伐したその人が、龍との婚姻を望んで、結果龍と成ったのだ。
赤い光が現れた時、一番初めに聞かれたことが願いだったのだ。
どのように龍を倒したかは関係ないんじゃないかと、その時そう思った。
ノータイムだったもの。
願いはなんだって。
「そうだと思う。
その時1人で倒した、あの…男が1人だったからそう伝わっただけだと思うよ。
だから、その…男が願ったのは正確には婚姻じゃなくって、龍にしてくれだと思う。
1人1つだからね、願いは。
婚姻が目的っていうか…。
まぁ本人に聞いてみてよ。
僕からはなんか聞きにくいんだ。
パパだからさ。
親の馴れ初めとか、詳しくは知りたくないでしょ。」
あ、竜王様!
そうか、あの人元々人間だから子を成すのか。
生殖方法が生物由来なんだ。
エアリスの逆パターンって訳だ。
世継ぎが出来ることと、龍は寿命が近くなると暴走することが噛み合うから、裁定役として竜王になったんだな。
ふわっと聞いた龍神さんの話が腑に落ちたよ。
人が龍に成った後の子供の実例がピリルル達なのか。
だからこの家族とお付きのスピラヴェラさんだけ人の言葉がわかるんだ。
意外とハジけて結婚相手決めた訳じゃないんだな、あの龍神さん。
じゃあ次代の王はピリルルがなるの?
「いや、ラルフでしょ?
ねーちゃんと結婚するんだから。」
え?
そもそも僕は結婚を受け入れてここに来た訳じゃないよ。
僕の願いはエアリスという龍を人の姿にする事で、別の共闘した人が最高の伴侶を見つけてあげてって願ったら、龍神さんが提案して来たっていう段階で。
「え?そうなの?
…それ、パパに言わないほうがいいよ。
願いだから受け入れてるんだから。
今は自分が通った道だから、ギリギリ許せてるだけだから。
娘が袖にされたなんて知ったら寿命が来てないのに狂っちゃうよ。
娘大好きで有名過ぎる龍なんだから。」
うちのお父さんも多分そうなるね。
わかるよ。
袖にしてる訳じゃなくって、僕が関わってない願いな上に、僕には婚約者が居るんだけど…どうしたら良いんだろう。
「婚約者がいたらなんかマズイの?
2人とも娶ればいいじゃん。」
うっ。
僕がペリンに問題ないって言った言葉がこんなに早く自分に返って来るなんて。
あの時は正直それしか方法なんてないと思ったし、本当に申し訳ないけど疲れて面倒になってたし、人ごとだから言えた事で、自分がそうなりたいなんて少しも考えてなかったよ。
ただでさえ僕は前世の記憶があって重婚に抵抗あるのに。
あれは勇者が何も考えてないから上手くいきそうなだけで、僕がそんな事したら胃に穴が空くを通り越して胃がなくなっちゃうよ。
龍の願いってキャンセル効かないの?
僕からしたら取り立てと変わらないんだけど。
「そんな話は聞いた事ないけど…。
出来るとしたら一つだけあるね。」
さすが知恵袋!
知恵袋龍ピリルル!
「やめて、それ。
そんな恥ずかしい二つ名になったら、僕が狂うからね。
簡単だよ。
龍の願いを消すなら、龍の願いを使うしかないよ。
また別の龍を倒して願いを叶えるしかないね。
殺さなくても心から屈服させれば良いから、2度目なら簡単でしょ。」
馬鹿いうなよ。
あれは偶然と長年の積み重ねと、愛があったから起きた奇跡だ。
勝てる訳ないでしょ。
ピリルル負けてくれる?
「ダメでしょ。
心から屈服は出来ないよ、流石に。
あと、やっぱり僕も龍だから戦いには誇りがあるよ。」
そりゃそうだよね。
「なんにしろねーちゃんと会ってからでも良いんじゃない?
ウマが合うかも知れないし、合っても合わなくてもどうせ戦うんだし。」
は?
なんで?
誰と?
「ねーちゃんと戦うでしょ。
龍の婚姻なんだから。」
あ…。
たしかに。
それしか前例がないもの。
そりゃそうなるに決まってるよね。
僕が龍になるか、相手が人になるかも、龍の願い次第だもんね。
「そうだよ。
その準備で皆忙しいんだから。」
全然違う式を想像してたよ。
助けてゼクシィ。
龍との決闘に勝つには!?って見出し見た事ある気がするんだけど!
…ぅ嘘です!
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