龍と初めての友達と

第85話 拉致パート2

2度目ともなると、空の旅は案外快適だ。

違うな、同乗者によって快適さが違うと言うべきだ。

前回のがさつな魔女と違い、お父さんは風除けの魔法を使ってくれているらしい。

出来る男である。


そういえばこの鳥は見たことがある。

スーパームキムキ巨人の時に僕に爆発する火を落として来たやつだ。


まぁ今となってはあれは僕にも落ち度が多大にあったので恨んではいないがちょっと複雑である。


「ラルフ、この先に町があってな。

今日はそこで一日休んでから旅立とうと思う。


鳥は夜、飛べないのだ。」


そんなの任せるよ。

ありがとね。


「実はちょっと寄り道していくルートでな。

ふふ。

そこは海の町で食べ物が美味しいんだよ。

ラルフは王国でなかなか出掛けられなかったろう?

色々旅行の案とか考えてあったのだが、忙しくてな。


今回は怪我の巧妙で時間をいくらでも使えるからな。」


海の幸か!

やったー!


楽しみだね。


『我にもくれ!』


…え?


僕の中からふわっと赤い光が出て来て小さな龍になった。


「我も食べたい。」


なんでついて来てるのさ!

察するにあんた龍の偉い人でしょ?


「我は龍神だ。

我も魚が食べたい。」


それは良いよ。

分けてあげるよ。


そうじゃなくて、なんでついて来てるのかって聞いてるんだよ。


「願いがまだ終わっておらん。

離れたら脆弱な人間なんで違いがわからんのだ。

目印としてわけ身を与えておかないとどれがどれかわからん。


ザギギアという魚が食べたい!」


願いがまだ終わってない…?

なんだ…?

僕は叶えた。


エアリスを人間にして貰ったやつだ。

あの2人はそれぞれ若返ったはずだ…。


…もしかして若返った力って一つか?

もう一つ願いが叶う前ってことか?


…絶対リナリーンだ。

僕へ願いを使ったんだ。


ねぇ龍神さん。

僕へ掛かってる願いってなに?


「ザギギアが食べたい!」


えぇ…。


お父さん、ザギギアって魚知ってる?


「ん?あぁ、よくある魚だ。

なんだ?ザギギアが好きなのか?


…なんだその龍は。」


龍神のわけ身だってさ、ザギギアが食べたいんだって。


「なんと…!


ははは、ラルフといたら神話の様な話が当たり前になるな!


ま、良いだろ。

ザギギアも出してもらえるように頼むか。」


ザギギア食べられるって、よかったね。


「やった!


…あやつは誰だ?

良いやつだな。


…ほう、父君か!

ならばちょうど良いな。


明日の夕方迎えに行くから準備をしておけ。

2人を龍の国へ連れに迎えを寄越すから。」


いやいや、僕らは魚食べた後家に帰るんだから、行かないよ。

龍の国なんて。


「もう迎えは途中まで行っている。


ザギギアを食べるため少しゆっくり飛んでくる様に伝えたが、中止とはいかん。


楽しみだな!

ザギギア!」


お父さん…

あの、龍神さんがとんでもないことを言い出したんだけど…。


「龍の国か!

実在したんだな。

招待してくれるのか?

行ってみたかったんだ。

私がお前くらいの頃に読んだ本に出てくる国でな。」


そっか…。

吝かではないのね。

僕は躊躇しかないんだけどな。


「お、見えて来たな。

あそこが海の町、ルー…。」


さぁ本日のお宿へ、と言うところで上から大きな龍が鳥ごと僕らを掴んで来た。


「お前!

スピラヴェラ!

ゆっくり来いって言っただろ!」


スピラヴェラと呼ばれた龍はボフンと息を吐いた。

デカ過ぎてピンとこないが、ため息だろう。


「龍神様が付いてるって聞いてゆっくりしてられるわけないでしょ。 

しかも何百年ぶりかのトカゲ殺しじゃなくて、マジもんのドラゴンスレイヤーと一緒だ。

早く回収しないと何しでかすかわからんでしょ。」


全然信用ないじゃない、龍神さん。


「スピラ!

我を敬え!

じゃないとこやつらが誤解するだろう!


このままだと、とんだトラブルメーカーだと思われるだろ!」


トラブルメーカーなのね、龍神さん。


「驚かせて悪いね、坊ちゃん、ご主人。

でも考えてみてよ、美味しい魚を食べてテンションが上がった龍が町にいる様子を。


ダメでしょ?


この人こんな事ばっかりするから、逆によくわからない神話とかいっぱい作られててさ、龍の中でも警戒されちゃってんの。

そのまま龍の国に連れて行くからね。」


変な騒ぎになるくらいならその方がいいよね。

お父さんも頷いているから同じ気持ちなのだろう。


「嫌だ!

ザギギアを食べるんだ!」


ほらほら

わがまま言わないの。


「分け身じゃなーんにも出来ないでしょ。

さ、飛ばしますよ。

鳥は戻しといた方がいいんじゃない?」


そういわれてお父さんが鳥をもどすと、龍はより高く上がり、すごいスピードで飛び始めた。


ほう、この龍も出来るやつだ。

全然風が来ない。


「ザギギア!

せめて買ってから!

な?

分けてやるから!」


そんなに言われたら僕も食べてみたくなって来たな。


「なんか私もザギギアの口になって来たな。」


僕たちは帰りにでも食べようか。

トラブルメーカーのいない所でさ。

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