第84話 父と帰る

じゃあ、そろそろ僕らは帰るよ。


「あぁ。

世話になったな。

また来いよ。」


城の主人みたいに言うじゃない、ペリン。

まぁもうそうか。


結局村の役目は完全には無くならないとのことだった。

龍が棲んでいるところというのは元々魔力暴走が起こりやすい溜まりのようになっているところで、たまに払う必要があるらしい。

龍が死ぬと龍が同じところに生まれてそれを食べて消費していたものが、龍自体が居なくなったため、結局は誰かがやらなきゃいけないのだ。


ただもう龍が暴れるとか、それを心配する必要はなくなった。


「ま、私らがやっていくしかないね。

いいさ、たーんと子供を作れば1人くらい継いでくれる物好きも出来るだろ。」


あの後大変なことに気がついた。


赤い光がまだ付いて来ていたのだ。


ペリンとリナリーンの分だ。

そりゃそうだ。

ドラゴンスレイヤーは3人いるんだから。


寝る頃になって、早く願いを言えと言われたらしい。

気が長い光の何かでも流石に痺れを切らしたのだろう。


2人はそれぞれ若返った。

子供が欲しいのと、エアリスと年齢を合わせないと、未来に1人置いていくことになるのは忍びないとのことだった。


本来若返るのって龍討伐の報酬レベルなんだなぁと思ったが、お父さんはお父さんで色々やって来ているらしいからなぁ。


これで3人若返っちゃったよ。

こうなるとシャルルさんが可哀想に思えてくるね。

同級生達が若返ったのに自分だけそのままなんだから。


それを言うと3人は大笑いし、日頃の行いだ、と言った。


「じゃあね。

師匠。

娘が出来たら将来嫁がせに行かせるからよろしくね。」


勘弁してよ。

来年出来たとしても12、3歳違うんだから可哀想だよ。


「あはは

冗談だよ。

なんかあったら助けになるからね、相談しにおいで。」


うん、ありがとね。


「ラルフ、これあげる。

私のツノと爪と、羽の一部。

本来は身体丸ごと戦利品何だけど、ラルフの剣の塊で切り飛ばされたところ以外は残ってなかったから、これだけだけど。」


おー。

じゃあこれは龍の一部ってことか。

凄いね。


「それ軽く見せて貰ったけど、とんでもない魔力が含まれてるよ。

ツノと爪は土魔法で形を簡単に変えられるみたいだから、ネックレスとか腕輪にでもして身につけといて、いざという時に武器にでもしたらいいさ。

これより硬い素材なんてしらないから、凄いものになるよ。

羽の一部は、私にはどういうものかわからなかったね。」


おぉ!

本当だ。

簡単に形が変わるね。


とりあえず腕に巻いておこう。

大きさもある程度変わるのね。

凄いなこれ。


「喜んでくれるならよかった。

またね、ラルフ。

今度会う時までにはもう少し人間らしく慣れてるように頑張るから。」


うん。

エアリスも元気でね。

力とか、どうなっているのか龍のままだもんね。

矛盾した肉体だ。

浮気とか絶対できないよ、ペリン。


本当にそろそろ行くよ、じゃあね。


僕はお父さんの召喚した鳥に乗った。


「もう良いのか?

ならば行くか。

じゃあな、ペリン、リナリーン。

次はラルフを拐うような迷惑かけずに遊びに来いよ。

エアリスさん、またな。

3人とも幸せにな。」


そう言うと、お父さんは鳥に合図を送った。

鳥の体が少し沈んだかと思うと、空へ飛び立ち、ぐんぐん村が離れていった。


「大変だったなぁ、ラルフ。

本当に無事でなによりだ。

まさかリナリーンに勝って、ドラゴンをも倒してしまうとは信じられないな。


実績だけで言うなら、神の子で、魔女狩りで、ドラゴンスレイヤーか。


あっはっは。


…次は邪神でも滅ぼすの、か?」


やめてよ縁起でもない。

しかし今回は閉じられた村の中でよかったよ。


これが王国でやっちゃってたらとんでもないことになってた。

それこそ逆に国で生きていけないところだった。


なんでお墓の周りに花を咲かせたかっただけなのにこんなことに…。


でも楽しかったな。

村の人たちとも仲良くなれたし。


帰ったら少しゆっくりしよう。


……

………


「なぁリナリーン。

お前、願いは何にしたんだ。

俺は2人を若返らせてくれって頼んだんだ。

もしかしたら1人ずつしかダメで同じ願いなのかもしれないと思ったが…

お前は別の願いを叶えたんだろう?」


「あら、気がついてた?

私は最初から若返る気なんてなかったんだよ。

エアリスなら子供作れるだろうから、その子を育てていければ良いかなって。


師匠、あの子自分の願いなんて忘れてたろ?

一番頑張ったのにさ。

それはあんまりだからね。


だからさ、ししし。


師匠にも素敵な結婚相手をって願っておいたんだよ。」


「俺とお前みたいにか?」


「私も!」


「おう!

そうだな。

3人みたいにな。」


「どうやって叶えるか知らないけど、師匠、びっくりするだろうな。

その子と結婚の報告に来た時に言ってびっくりさせてやるんだ!」


「ラルフ、婚約者いるよ。

言ってたよ。

帰ったら会うのが楽しみって。」


「え?」


「大丈夫なのか…?

あの赤い光は無茶はしないよな…。」


「龍神様は無茶するよ。

存在が無茶苦茶なんだから。」


「…結婚の報告来ても言わないことにするよ。」


「バレないといいな!

アイツ賢いから!」


「バレちゃうよ、ラルフ賢いから。」


「バレるかな…。

ま、いっか!

そうしたら私らみたいに3人で暮らせば良いだけだ!

あはは。」


3人は大笑いした。

結婚して笑顔が増えた。


それは良いことだ。


もちろんラルフも喜んでくれるだろう。


彼が今、帰り道に見知らぬ龍に回収され、運ばれている途中で無ければ。

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