第79話 蓄積した質量は心を写すもの

今まで以上に勢いよくガインガイン剣を振るペリン。

もう呼び捨てだから、年下だから。


「あっはっは!

若いっていうのはいいなぁ、ボン!」


さんをつけろさんを。

良いけどさ、別に。


さ、もう一つ嫌がらせしちゃおっかな。


ペリンは良いやつだ、だから急所は狙わない。

エアリスで言うと、顔は狙わない。


その剣誰が生成したと思ってんのよ。


俺はペリンの剣をグッと伸ばしてみた。

眼なんて小さいところには当たらないだろうけど、顔には触れられたくないところがいくらでもあるでしょ。


ピッ


おぉ!


初めてだ。

初めてみたよ、エアリスのダメージを。

ヒゲみたいなヤツで血も出てないけど、切れた。


「あんた、やるじゃない。

切れるほど弱いところに攻撃なんて初めてよ。


いいわ。

貴方も認めてあげる。

そう言えば聞いてなかったかしらね。

お名前は?」


ラルフだよ。


名乗ると同時に俺は火魔法を手の中に集めて、投げた。

あんまり練習してなくて得意じゃないんだけど、威力はどうでもいいから良いんだ。


光れば眩しいはずなんだから。


「うおっ、俺も何も見えんぞ!」


ばっか、お前、口に出すなよ。


近づく足音が俺だってバレちゃうじゃねーか。


たくさん落ちてる剣の内、赤いイミテーションガラスがハマっているものを掴みながら、もう一個光る弾を投げたが、今度は上空に飛んで行った。


そろそろだろ?


まだ目が見えてないことを祈りエアリスの上へと土の柱で飛ぶ。


やっべ。

バッチリ目があったな。

姿も子供にもどっちゃったよ。

僕に使った死魔法の魔力が切れちゃった。

魔力切れが近かったからなぁ、ペリンに多く魔力をさいたのだ。

まぁ良いさ、ペリンが若いままならチャンスが残る。

くらえ。

これは希少金属なんかじゃないからね。

ありふれた鉱石だ。

レアアースと呼ばれているものの中ではありふれていて、土中にもあるヤツだ。


ネオジム。


知ってるか?異世界人共め。

これと、鉄と、ホウ素を混ぜると何が起こるか。

便利なもんだ、土魔法ってのは。


エアリス、あんたの言う愛の結晶と挟まれな!


ラルフが作成した大きなネオジム磁石は、地面にある数多の鉄剣を吸い寄せ、エアリスを蛇の様に襲う。


ラルフは磁石を放すと、その磁石もエアリスの方へと吸い寄せられていく。


1000か、2000か。

これまでペリンが挑み続けて折られて来た安価な鉄剣。

ペリンの努力と挑戦の証が、この世界の人智を超えた磁力の力で加速しエアリスへと突き刺さる。


何本か、何十本か刺さり傷はつけたが、膨大な数の殆どは当たらずエアリスの風で弾かれ、流された。


ペリンは持っていた剣でそれらを砕き、避けてやり過ごしたが、ラルフは素手だった。

磁石の材料に剣をつかってしまったので、避けきれずに何本もの剣がラルフを貫いた。


傷の具合?

もちろん致命傷だが、僕は健在をアピールするために空へ向かって火魔法の光を放った。


健在を?

誰に?


剣と共に地面へと落ちた僕は目の前に落ちてくる大量の剣と、もう一つ。


災厄の魔女の姿を捉えた。


遅いんだよ。

爆弾やら閃光弾やら、合図を出しまくった甲斐があったよ。


真っ暗な剣の瓦礫の中で僕は笑った。


お互い感動の再会だ。


あんたたち2人の。


僕は、神様との。


「死んじゃいましたね。」


そうなんですよ。

今回は急ぎでお願いします。

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