第78話 龍狩り


ふわっと浮いていくエアリスを目に、僕は魔力を全開にして土魔法を使った。


希少金属を地面から引き抜いて剣の形にする。


「ミスリルじゃない。

人間がよくそんなの操れるわね。」


ありがと。

これミスリルだったんだ。


僕の剣術なんてそんな大したもんじゃない。

一生懸命習ったとは言え、たったの3年。

実戦も2回半。

駆け出しもいいとこだ。


ペリンさん、コレ使って。


「おん?

なんだ?

俺は武器なんて何でもいいんだぞ?」


そんなこと言うから傷も与えられないんだよ。


いいから、これでエアリスを足止めしてよ。

硬い弾を飛ばす準備するから、よろしく!


「任された。

お、魔力通しやすいな、これ。」


当たり前だよ。

いままで使ってた剣がなまくら過ぎる。

エアリスの足元にある剣を見た時正気かと思ったよ。


土魔法の能力は失ったけど、聖属性以外のどれよりも上手く使える。


やっぱり魔法の能力をもらった場合、使う魔力を踏み倒すんだな。


希少金属を精製した時気絶するかと思った。


さ、頼むよペリンさん。

でっかい土魔法爆弾を作るんだから。


ここ最近よく戦ってる気がするよ。

格上ばっかりと。


全然上手くいってないけと、この爆弾は結構驚かせられたと思うんだよな。


エアリスは浮き上がってチリチリと音をさせると、こっちに突っ込んできた。


絶対避けられないや、こんなの。


頼んだよ。

勇者を信じるよ。


僕はそちらをチラリとも見ずに魔法を練り続ける。


嘘だ。

カッコつけた。

無理だよ、すっごい風圧とか来るんだから。


「うっわ。」


でっかい馬みたいな小柄なドラゴンの攻撃をマジで受け止めてるよ。

かっこいいね、こっちは本当に、カッコつけなくてもさ。


僕は補助。


並行して出した魔法で石をペチペチと飛ばしていく。


エアリスはチラッとこっちを見ると、石は空の彼方へ消えていった。


あ、上は山だと思ってたけど違うのね。


自分の魔力が彼方へ離れていくのを感じる。


エアリスがこちらをもう一度チラッと見ると、試す様に笑い、風の弾を飛ばして来た。


それをステップで避けたが、脇腹に穴が空いた。


「あらあらあらあら。

ダメよ、そんな子供騙しも避けられないなんて。」


「すまんな!

守りきれなかった!

次はなんとかしてやるからな!」


くっそ、2人共に侮られてんな。


…補助だからいいんだ。


でもイタズラしちゃお。


ポンポンとエアリスの足元に花を咲かせていく。


あんた花が好きだろ。


踏まれた花なんて一輪もないんだ、この空間に。


花に囲まれていく勇者を置いて空中に逃げるエアリスを追って脇腹に穴を空けられながら必死に練った魔法を放つ。


しかしまたふわっと飛ばされて、空高くで大爆発を起こした。


…触れられもしないのか。


……でも補助だからさ。


エアリスとペリンさんの間に石を設置していく。

意図が伝わったペリンさんはそれを階段にして駆け上がっていく。


「任せろボン!

この剣もいいぞ!

折れない!

お前はやるなぁ。」


「あら、ペリン来ちゃうじゃない。

あなたの魔法なかなか厄介ね。」


やっぱりこの戦いは2人だけの世界があって、僕はお手伝いしてるだけだな。

何年も何年も積み重ねてきたお互いの絆みたいなのを感じるわ。


良いんだけどさ。

補助だからさ。


良いわけあるか!

治したけど、腹に穴空いてんだこっちは!

…いちゃいちゃしやがって!

俺を無視すんなよ。


俺は自分に死魔法をかけて成長させた。

これはいつものやつだ。

動ける様になるし、頭も回る。


そしてペリンさんに聖魔法をかけた。

若返らせたのだ。

あんたもう50過ぎだろ。


絶対二十歳そこそこの方が動けたはずだ。


はっは!

若い頃のあんた、かっこいいじゃないか。


な?

エアリスもそう思うだろ?


「おお…?

ボン!

こんな魔法があるのか。

ははっ!

動けるな!」


ボンと呼ぶなよな、ペリン。

俺の方が歳上だぜ。

ラルフさんと呼びな。


さんをつけろ。

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