第77話 すれ違い

「それで、エアリスはなんと言って居るのだ?

会話をしに来たのだろう?」


…どうしよう。

そのまま伝えるべきか。


…一旦確認してからにしよう。


ペリンさんは、エアリスの友達なの?


「言葉を交わした事はないが俺はそう思っている。

何度も剣を交わしたし、恥ずかしい事だがリナリーンの事も話した。


最近手加減されて怪我もさせられてないのは忸怩たる思いだが、アイツも俺を友だと思って来たのだと考えた。」


そうですか。

…そうですか。


エアリスは、ペリンさんと仲がいいの?


「あら?貴方、龍の言葉が分かるのね。

珍しいわ。


ペリンは何度も私に挑んできてくれたの。

最初は英雄になりたいだけの馬鹿がまた来たと思って居たんだけど、信じられないくらい何度も何度も挑んできたのよ。


ある時から、戦いのあとに彼が何かを語ってくれる様になって…わかったわ。


言葉はわからないけど、わかったの。

愛を語っているって、そう言う目をしていたもの。

それで私は受け入れて、ペリンが私を傷つけられるまで…

それぐらい強くなるまで待っているの。


見て、この石の周り、剣がいっぱいでしょ?

今までペリンが挑んできて、折れた剣、愛の形よ。」


あっちゃー!

めちゃくちゃすれ違ってるよ!


そりゃ愛を語る目をしているのは当たり前だよ!

何年も何年も思い続けるリナリーンのこと語ってたんだから!


どうしよう…。


龍と魔女と勇者の三角関係に挟まれる事になるなんて考えなかった!


話すことができれば、理性的な龍ならなにか解決出来るかもしれないと思ったのに!


例えば、縛られている役目から解放する方法とかあるのかと思うじゃない。


なんかあるじゃない。

あると思うじゃない!


別方向でややこしくなるなんて思わないじゃない!


「どうした?

ボン、エアリスはなんと言っているのだ。

友の声を伝えてはくれぬか。」


…彼氏だと言っています。


「え?」


貴方のこと、そういっています。


「…え?」


「ちょっとあなた、きちんと伝えてね。

彼氏じゃないわよ。

婚約者って。」


わかりました…。

ビリビリするから大きな声出さないで…。


ペリンさん、あの…彼氏じゃないって。

きちんと伝えてって。


「…おお!そうか!

上手く伝わってなかったのか!

では本当はなんと言っていたのだ?」


ワクワクしてんじゃないよ。

親友とかそれ系のワードが聞きたいんだろ?

違うんすよねー。


婚約者ですって。

婚約者。


「…え?」


おめでとうございますー。


「あの、いや、なんでそんなことになっているんだ?」


確かに。


エアリス、なんで婚約者なの?

愛を語られたのはわかったよ。


「あら貴方は知らないのね。

龍を打ち倒すものは龍の伴侶になるのよ。」


はえー!

そうか!

挑み続けたペリンさんはプロポーズし続けて、受け入れられた状態で、あとはエアリスを打ち倒せば晴れて結婚だ。


エアリスはそれを待っているのか。


じゃあペリンさんはどうあれ結婚する道がないじゃない。


ふぅん。

気に入らないな。


もしさ、仲間と龍を倒した場合、それってどうなるのさ。


「…さあ。

全てが叶うと言われているわね。」


そうか。


実は、ペリンさんは婚約していると思っていないんだ。

好きな女の人がいて、多分エアリスも知っている龍を祀る村の女の人なんだ。

その村の役目を守るため、色々結婚に縛りがあってね。


それでエアリスを倒そうと思って挑み続けているんだけど、そのうちに貴方を友と感じる様になったそうなんだ。


だから、僕も貴方を倒すためにペリンさんに手を貸すことにするよ。


「そう。

それはそれで構わないわ。

でも、貴方にも手加減出来るなんて思わないでね。

恋路を邪魔する敵、なんだから。」


そっか。

頑張るよ。

僕は僕で考えていることがあるんだ。


一回は死ぬだろうなぁ。


じゃ、ペリンさん。

僕もペリンさん側で戦えることになったから、やろっか。


「な?

お前はまだ子供だろう。

やめとけ、死ぬぞ。」


はいはい、良いんだよ。

もう決まっちゃったんだから。


…なんでこうなったかなぁ。

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