第74話 アイ キャン フライ

HELLO!

バイリンガルなんて目じゃないぜ。僕は。


異世界初心者パックであるべき能力をわざわざ選ばなきゃいけないのは忸怩たるだ思いだけども、この世界の全言語を手に入れたぜ!


今回の能力は翻訳だ。


話すと勝手に相互翻訳されるらしい。

いや、これくらいサービスでくれてもいいじゃない。


さ、龍のところへ行きたいけど、場所が分からない。


ゆっくり寝てから誰かに聞いて行くべきだろうが、寝る所がない。

貞操の危機が訪れる可能性があるからだ。


徹夜で龍探しか…。


龍なんて体調万全で挑むもんじゃないの?


もう夜だからあんまり人が出歩いてないなぁ。


あ、犬。

近所の家で飼われて犬。

翻訳って動物もいけるのかな。


こんにちは。


へっへっへっへ。


飼い犬ってあんまり吠えないよね…。

かわいいな。

撫でとこ。

あ、外犬だから臭い!

鼻はやめて…!

鼻は舐めないで…。


かわいかった。

何の情報も得られませんでしたが。



猫はこの世界で見たことないんだよなぁ。

犬も何犬って聞かれたら全然分からない。

犬っぽい何かかもしんないし。


夜だから鳥も飛んでないしな…。


自力か…。


高いところから見てみるか。


僕は足元にコの字の取っ手を作り、土魔法で高い棒を生成した。


揺れる!

高い!怖い!風が強い!

しっかり捕まらないと吹っ飛んでいきそうだ。

着地のことは考えてやったけど怖すぎる。


あ、ダメだ。

暗過ぎるっぴ。

前世のように街灯とかある訳じゃないしなぁ…。


ん?

村の外に淡く光ってる所がある。

暗いから逆によくわかる。

焚き火か?

あそこの人は起きてるってことだよな。

行ってみよう。

知ってるかもしれないし。


いや、想像はつく。

アレは恐らくペリンさんなのだろう。

ここを知っていそうな人物が他に思い浮かばない。


さ、飛んでいくかな。

土魔法で羽を作り、滑空していこう。

落ちても風魔法で何とかなるでしょ。


超怖いけどふわっと飛び立った僕は、真っ直ぐ光の元へ向かって行く。


おぉ!

いけるもんだな!


思えば異世界にきてしばらく経ったもんだ。

こういう前世だと考えられなかった無茶ももうお手のもんよ!


あはは!


がっ!


真っ暗で見えなくなっていた樹にぶち当たったみたいだ。

慣れてなんていなかったみたいだ…。


慣性のままバキバキと枝を突き抜け、地面に転がった。


良かった、死ななくて。

龍と話す前に能力を失う所だった。


いたた。

聖魔法覚えてて良かった…。

こんな自爆着地する予定じゃなかったのになぁ。



「どこから落ちて来たのだ。

ボン。」


あ、こんばんは。

ラルフと言います。

はじめまして。


「…変な奴だな。

もっと言うことがあるだろう。」


確かに。

変な所が異世界慣れして来てるみたい。

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