第72話 決着



「なんだいなんだい。

急におっきくなって…!

…かっこいいじゃないか。」


そいつはどうも。

ラルフィード様謹製なんだよ。


あんた好きだろ?

ラルフィード様。

城の庭に像があるもんな。

日課の祈りで使わせてもらっていたよ。


「死魔法だね?

レアな魔法を使うじゃないか。

…格好良くなって終わりじゃないよね?」


バカ言え。

大人の悪辣さ見せてやるぜ。


俺は足元にポコポコとデフォルメされたクマを生み出す。

かわいいだろ?

クマちゃんだぜ?


「はっは!

今更かわいいからって躊躇すると思ったかい?

…後で別に作ってね。」


バキバキ壊しながらそんなこと言うなよ。


ま、そのクマちゃんは練習だ。

デフォルメした方が簡単だろ?


でもびっくりさせておこう。

クマのいくつかをシャルル戦で使った爆弾に変えて、もう一種類びっくりクマを作っておき、足元に生成を始めた。


さて、本命は精密に作っておきたいな。

土魔法は造形。

そう教わったんだから見せておきたいし、精密な方が勝つ可能性があがる。


「見え見えなんだよ!

何体かのクマちゃんだけ魔力の流れが違うんだ!

近寄らせないよ!」


あららバレバレか。

でもいいんだ。

練習と煙幕が目的だからさ。


何体かのクマが爆発し、何体かのクマは破壊と同時に真っ白な煙を吐き出した。


「ははっ

子供騙しだね。」


そんなあんたにプレゼントだ。

子供は平気だけど大人は苦手なものってなーんだ。


「ぃやー!

気持ち悪い!

虫!

虫!」


なんで大人になるとダメになるんだろうね。

そのまま錯乱しといてくれよ。

本命は時間かかるんだよねぇ。


なんせ今回は色合いまで指定があるんだから。


俺は足元に馬を生成した。

白馬ゴーレムだ。

それから軽鎧とマントを作り馬に跨る。


クマで練習したゴーレムの動かし方を活かしてなるべく馬らしく動かす。


さ、覚悟を決めろよ。

吹っ飛ばされてもカッコよくしていたのを活かせ。


俺は馬を駆り、リナリーンへ向かって真っ直ぐ突っ込んでいく。

兜は着けていない。

今回の作戦の肝は、言いたかないがこの顔だ。


彼女はラルフィード様の像を置いている。

好きなんだろうな。

しかし、祈っている姿なんて見たことはない。

そう、好きなのだ。

見た目が、どストライクなのだろう。


それを知っていたので、今回の作戦をとったと言ってもいい。

俺の見た目はラルフィード様に近い。

つまり俺もストライクゾーンだ。


虫を散らしこちらに気がついたリナリーンから攻撃は飛んでこない。

彼女の目には、想像していた王子様が写っていた。

白馬に跨り、ラルフィードのような高潔そうな見た目で、強くなりすぎた自分の攻撃を問題なくいなす存在だ。


ラルフは馬から身を乗り出しリナリーンの腰に手を回し、リナリーンを馬の上へと抱き寄せそのままゆっくり馬を走らせた。


リナリーンに向かい俺は言葉をかける。

顔と顔が触れ合いそうな距離だ。

頑張れよ、俺!


「リナリーン。

お前に勝てば好きに出来るんだろう?」


その言葉はリナリーンにクリーンヒットした。

理想的な姿、状況。

その上でかけられた男らしく力強い言葉。


「はい…。」


と言い残し、彼女は気絶した。

ラルフの完全勝利である。


後に残る影響を考えなければ、の話ではあるが。

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