第71話 伝説との対峙


「よし、やりましょうか、師匠。」


自然体で立っているリナリーンの背景が歪んでいる。

とんでもない魔力なのだろう。


「戦闘中はお姫様ではなくなっても許してね?」


そう言いながらリナリーンの周りに石の塊が浮いている。


バカ言え、もうお姫様の笑顔じゃないよ。



魔法は発生に一番時間がかかる。

僕がシャルル戦で風の玉を設置したのと同じようだ。

しかし数が違う。

100くらいだろうか。

もっとあるかもしれない。


一つの石をくるくると人差し指の周りを回しながらこちらを指差してきた。


それをみて僕も剣を生成する。

希少金属の方だ。


「いくよ。」


発射された石は真っ直ぐ飛んでくる。

避けながらリナリーンを見ると人差し指を向けたままだ。

あの石が本命だろうか。

あれは当たっちゃ絶対ダメだろうなぁ。


なんてね。

見えてるよ。

右上の方にある石

大量に設置された中に一つだけ小さく鳥の形をした物がある。

あっちが本命だね。


目線で見つけていることをバレないようにしないとね。


僕は自分の前に土壁を作り、リナリーンの足元に石の槍を出した。


「はっ!

こんな単純な魔法いくら撃っても当たりゃしないよ!」


ふわっと避けたリナリーンはそのまま人差し指指の石をラルフの石壁へ放つと、壁は粉々になったがそこにラルフは居なかった。


「おっと、やるね。

まぁ隠れるやつは相場が下か…上だろう?」


リナリーンが腕を振ると上から振ってくるラルフに向けて浮かせた石で弾幕を張る。


うわぁ…バレてたか。

せっかく下に槍を出して視線誘導したのにな。


ま、せっかく石の柱で自分を飛ばしたんだ。

このまま力押して近寄らせて貰うよ。

神の能力のおかげで一つ一つの石は僕の方が硬いようだしね。


操作量とか正確性は比べるまくもなくリナリーンが上だけど。


足元に剣から分けた希少金属の板を出して弾幕を弾きながら、剣を振る。


その瞬間、僕の身体が流れ剣が外れた。


なんだ?


「はっは。

言ったじゃないか。

土魔法は造形ってね。

師匠はどこまで小さい物なら目で見えるのかな?

まぁ、目を凝らせば見えるだろうよ。

小さいと弱い力しか出せないから不意打ちさね。」


腕に砂が絡みついてる。

初めの石と一緒に飛ばしてたのか…!


わかったら大した問題はない。

魔力で弾けるからだ。

小さいものに込められる力なんてたかが知れてる。


問題はこれを付けられたことを認識出来なかったことだ。

魔力を放出し続けるのは現実的じゃない。


手加減されているのはわかる。

わざわざ教えてくれたのだから。


しっかし剣士で魔力が少ない場合これだけで詰みかねないな…。


…そういえば、鳥は?


急いで左に壁を作る。

勘が外れた時の保険と支えだ。


右側は剣があるからなんとかなるだろ。


リナリーンは気が強い。

どうせやられた事をやり返すに決まってる。


上だろ?


俺は死魔法を発動させ大人の姿になる。


恐らく腕力がいるからな。


はっは。

ついさっきまだで小鳥だったじゃねぇか。

ま、俺でもデカくすると思うよ。

くそったれ。




左に生成した壁に鳥が当たり、ゴリゴリと音が鳴る。

やはり俺の方が硬度は上だな。

鳥の羽は折れ、破片が降ってくるが、単純な岩としての落下は止まらない。


これが斬れるなら剣士として名前が残るんだろうが俺には無理だ。


壁に剣を突き立てて思いっきり剣を握ると、剣を土魔法で思いっきり伸ばした。


うぉ!

怖ぇ!

子供の身体だったら握力が耐えられてないな。

殺す気か!


鳥の下敷きになった部分の剣が折れる音がして空中に投げ出された、が想定済みだ。


超怖い。

怖いが!

…これからの作戦に関わる。

格好良く着地して、なんでもないようにしていろ。


頑張れ自分!

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