第70話 思い出したぜ土魔法のことを


オラついていたと言うか、押忍ついていた村の空気がキャピキャピしてきた。


満足した僕は本来の目的をやっと思い出した。


リナリーンさん、いやリナリーンに土属性魔法を教わりに来たのだ。


「え?

あぁそうでしたわね、師匠。

そうでした。

土魔法と言っても広くて、どこから教わりたいのかしら。」


まずは花を咲かせる魔法は覚えたいな。

石碑の周りの花を元気にしたいから。


「流石師匠。

花なんていいじゃない。

かわいらしいわぁ。」


ね。

リナリーンも今ならよく似合うと思うよ。


「あら、嬉しいわ。

それではね、まずは魔力で花の様子を見てくださいな。

師匠は聖属性が得意なら、診察の魔法と似た感じよ。

花の魔力を感じ取れると思うわ。

それの一つ一つに魔力を込めると成長を始めるの。

さ、やってみて。」


魔力をゆっくり広げていくと、点々と植物の魔力を感じる。

それぞれに魔力を込めると、花だけでなく草や何かの細い木なんかも生えて来た。


「あらあら。

これでは全ての植物を活性化させてしまっているわね。

花だけに絞って下さい。

絞らないと、土の栄養が足りなくなって枯れてしまうの。

可哀想でしょ?

それにしてもすごい精度ね。

きっと才能があるわ。


土の栄養も土属性で足せますからね。

そっちも覚えてしまいましょうね。」


神さまの能力付きの土魔法の成長はやはり早く、花を咲かせる魔法はあっさり覚えてしまった。


リナリーン曰く、土魔法の特性としては花を咲かせるものはおまけの様なものらしく、造形魔法と言えるくらいに形を模ることが得意らしい。


魔法で固めた土は硬く、地面から槍の様なものを生やしたり、空に巻き上げた土を固めて尖らせ降らせたりがメイン戦術らしかった。


そして僕に合う魔法もあり、土で剣を作ることが出来る。

その剣は途中で長さも変えられるし、自分の魔力で形成しているので込め直しやすい。


そして神の能力でドーピングされた土魔法は、土中から希少金属を集め剣を作り出すことも出来た。


「おお!

すごいじゃないか!


…こほん

失礼。

すごいのよ、それ。

その辺の剣なんかポキポキ折っちゃうんですから。

なつかしいわぁ。

ペリンの剣をポキポキと折っていったらぺリンの心もポキポキと折れてしまったのよねぇ。」


ペリンさん?

どなた?


「あぁ…

サシュマジュクとシャルルの同期の剣士よ。

強いって聞いていたから期待してたんだけど、そこまでじゃなくってねぇ。

がっかりしちゃった。」


そうなんだぁ。

リナリーンは強い人が好きなんだね。


「私が結構強いからね。

役目もあるから自分より弱い人を伴侶にする訳にはいかないのよ。」


そうなのか。

大変そうだなぁ。

いい人が強いって訳じゃないから探すだけでも大変そうだ。


「師匠も訓練に戦ってみる?

結構勉強になるわよ?

魔法使いとの戦い少ないんでしょ?」


ぜひ戦ってみたいな。

シャルルさんとの戦いは楽しかったしね。


今の土魔法ドーピング状態なら多少戦えるんじゃないだろうか。


やってみよっかな。


「いいねいいね。

ルー!ラー!


決闘場を開けてちょうだい。

指導戦だよ。


聖属性魔法はラーが使いなさい。


早速やりましょっか。

師匠。」


そう言えばペリンさんってどのくらいの強さだったの?


「んー

当時のサシュマジュクとシャルルよりは断然強かったけど、私よりは弱かったなぁ。


サシュマジュクとシャルルが10だとしたら15くらいで私が20くらいかな。」


え?

でもまぁ…。

訓練だから。


「ラルフ先生、気をつけてね。

村長、夢中になると…。

頑張ってね。」


やめてよルーさん!


「前に来た人ってどうなったんだっけ。

…ラルフ先生、気をつけてね」


やめてってばラーさん!


めっちゃ集まって来た村人、生徒達が1人残らず心配そうだ…。

訓練だからね!

訓練…ですよね?


振り向くとリナリーンはお姫様とは思えない笑顔で歯を剥いていた。

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